創造の魔女 Ⅲ

 瞳は風の魔法で綺麗に牛を解体してみせた。


「大の男がこれ位の相手で手こずるなんてね」


食べれそうな部位だけをアイテムボックへしまうと、残りは風魔法で散らした。


「きっと誰かが食べてくれるでしょう、王様特別に私の部屋へ招待いたしますわ」


そう言うと地下へ一瞬で移動を行う。


 3人は部屋の中を不思議そうに見て回っている。


瞳は3人を放置してアイテムボックスから牛の素材を取り出すと、それを手際よく・・・時間短縮に魔法を使いながらであるがだが。

もも肉はレアステーキと牛のたたき。

胸肉は薄くスライスして野菜とシャブシャブに塊はローストビーフ、尾は出汁を取りながら野菜スープを作り上げた。


「食事の用意が出来ましたよ」


「おおおおおお、これは凄いのう」


3人とも席に着き食事を口に運ぶと、数泊の間は有ったものの喋るのを忘れひたすら食べ続けたのだった。


「ふぃ・・・こんな旨いものは初めて食ったわ」


「気に入って頂いて良かったです」


「そう言えばそなたの名前を聞いて無かったな」


 名前か・・・


「創造の魔女です、このダンジョンではレベル999ですが外に出ると50位に成ってしまいます」


「レベル999って凄いな」


「後、このダンジョンで悪意を働いた者には天罰を与える役も担ってます」


 これなら反対もされないだろう。


「魔女殿はこのダンジョンを無料で開放するのかの?」


「?」


「実は我が国に後1つ何か名産が有ればと考えていたんじゃが、ここなら人も集まるし周囲は繁栄すると思うぞ」


 完全にテーマパークだな・・・神も祭祀を取ってるんだし少し位なら構わないかな。


「1人銀貨5枚ですかね、私は2枚頂ければ構いませんよ」


「それで良いのか魔女殿は優しいのう」


「そうだ! 何人が挑戦に入ったかは数える魔法が働いてますからね」


「担当する兵に厳しく言っとこう」


「では最後に素晴らしい物をお見せしましょう」


瞳は4階の半ばにある岩に転移した。


「ここは?」


「4階です、ちょっと待って下さいね」


岩の小さな隙間から縦長の宝箱を取り出した。


「ダンジョンの中には金貨やこんな武器なども拾えるんですよ」


そう言いながら蓋を開けると光輝かしい中を騎士団長とギルド長が興味有りげに覗き込んでいた。


「これは一体何なんだ?」


「これはですね、オリハルコンをベースに刃の部分にミスリルを使った剣です」


「凄いぞ、こんなのいくら金貨を積んでも買える物では無い」


「他にも6属性使える杖とか、気配を消せる盗賊のナイフとか色々あるんですよ」


3人は開いた口が塞がらず何も発する事が出来なかった。


「王様、協力する代わりに条件があります」


「条件とは?」


「1つの武器が持ち出されても私は同じ物をお置きします、しかし1パーティーの人数を4人までとして下さい」


「分かった」


「盗賊みたいな集団が入って来ると忙しく成っちゃうからね」


「それなら入場できるのは冒険者証持ちにし、このダンジョンから半径1キロは建築物を建てるの禁止にしようでは無いか」


「王様は話が分かるわね、国の事で困った事が有った時は呼びに来て、可能な事なら手伝うからさ」


「それは有り難い申し出じゃ」


瞳は入り口まで転移すると脇に置いてある小さな箱を指さした。


「そこに銀貨を入れてくれれば良いわ」


「うむ」


顎に手を当て何かを考えていた騎士団長が瞳の方へ体を向けた。


「ここの生物はダンジョンの外へは出て来ないのかな?」


「出る事は有りませんし、モンスターが入って来る事も有りません」


「そんな事が可能なのか・・・?」


「私は創造神ですよ、信託を下した神はこの場所以外を見てるけど、私は手伝いでここを管理してるんです」


 瞳が人差し指を立て話終えると、目の前の3人は土下座をしていた。


「数々の無礼失礼しました」


「待って待って、私は神だからと言って祭られたりするのが嫌なのよ、先程までの様に魔女で良いわ、これは命令よ!」


『承知致しました、他言も一切致しません』


王様達が帰って行くとその場にヘナヘナと座り込んでしまう瞳であった。



 地下へ降りチャムを探すと寝そべってテレビを見ていた。


「チャムただいま」


「おかえり、話は上手く行ったかニャ」


「明日始まって見ないと分からないかな、私としては余り人が来ないと良いんだけどね」


 瞳は先程残ったスープを温め、数種類の野菜でサラダを作った。


「食事出来たわよ」


チャムは自分用に用意された台の上に置かれた食事を食べ始めた。


「貴方モニターでずっと見てたのね・・・どうせなら来てくれれば良いのに」


「危なそうなら行くけど、あれごときの人間なら喋る猫が出て行く方がややこしく成るニャ」



 帰りの馬車では先程体験した事について話合われていた。


「創造の魔女を受け入れ友好的に付き合って行く、これには意義無いな?」


騎士団長とギルド長が頷く。


「団長はダンジョンから1キロ以上離れた所に兵の詰め所を作るんだ」


「かしこまりました」


「それと周辺が栄えた時は貴族の優先を禁じる、その土地で懸命に生活してる物を応援する様に頼むな」


近いうちに何か良い事が無いと言う気がしてならない王様は合わせた両手に手汗をかき震えていたのだった。


「騎士団長はあの魔女をどう思う?」


「勝てませんね全軍でも無理かもしれません、仲良くした方が守護者に成ってくれるかもしれません」

 

「私から1つ宜しいでしょうか?」


「言ってみよギルド長」


「今日話した感じでは余り人混みが好きでは無い様子なので、入場レベルを30位からに設定しようかと思います」


「それが良いな、大体何人位に成りそうだ?」


「お恥ずかしい事に20人もいませんけど、噂が広がれば他国からも訪れて来るでしょう」


馬車は舗装されて無い道から街門を潜り城下へ向かって行ったのであった。



 日の出と同時に入り口の幻影が消えた。

瞳とチャムはやっと起き出して朝食を取っている。


「数日は暇でしょうね、チャムもゆっくりしてると良いわ」


「分かってますニャ」


後に彼女は大陸で創造の魔女と言われ、崇める人恐れる様々な存在に成るのだった。

この話は大陸に勇者が存在する前の話でした。


次話からはアートの夏季休暇編のスタートと成ります。

これからもご愛読して頂けたら幸いです。

よろしくお願いします。                      マナピナ




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