創造の魔女 Ⅰ

 アート達一行が新しい旅に出る様だな。

このまま見守っても良いのだが、丁度切りも良い事だし私の話もしてみようと思う。

私には列記とした名前がある、市原瞳(いちはらひとみ)と言う。

 この世界に来た理由は・・・暴走車・青信号を渡る子供・私、これで察しのよい方は分かるだろう。

いわゆる善行で死んでしまったと言う事だ。

ただ問題はここからだった!

 私が目覚めた特に深々と覗き込んでいたのがスーツを着た中年風の男性だったのだ。


「私は助かったのね」


「お目覚めですか、残念ながら死亡されました」


私が起き上がると男性はあ1・2歩下り恐縮そうにしている。


 あら手の詐欺か何かか?


「それで貴方はどちら様?」


「し失礼しました、私は神です」


「貴方が・・・神?」


「2日前に前任者から引き継いだばかりですがね」


「それで私に勇者にでも成れと?」


「いえいえ、私が就任して初めて来られた方ですから希望のものに出来る限りお答えしたいと思ってます」


「ちょっと考えるから待って」


瞳は1時間・・・2時間と考え1つの答えを出した。


「決まったわ、私は自分の世界が欲しい」


「世界ですか? 神に成りたいと?」


「名称に興味ないわ自分の世界を作りたいのよ」


「少々お待ち下さい」


今度はスーツの中年神がマニュアル本を読みだした。


1時間・・・2時間。


「まだですかー」


「ももう少しお待ち下さい」


「貴方って本当に神様なの?」


「失礼な! 明日からは1つの世界を任される身なんですよ」


「それだ!」


「ん?」


「貴方の治める世界を少し下さいよ、見習いとしてなら良いでしょ?」


「そんな話聞いた事無いですよ」


 煮えきらない神だなぁ


「そのマニュアルには駄目とも書いてないんでしょ? それに私は何でも補佐して上げますのでお得ですよ」


「確かにそうですね、上司と交渉してみましょう」


 普通のラノベと一緒じゃつまらないしね、私は神となり好きな世界を作り上げるんだ。


「それでは現場を見に行きましょうか」


「はいはい」


2人は一瞬で山の祠へと飛んで来た。


「ここは?」


「私の力で作ったダンジョンです、これからは貴方にここの管理をお願いします」


「ええーー」


「これでも特例なんですからね、ここの世界が上手く行けばもっと良い場所が与えられますよ」


「無理言ってるし仕方が無いか」


「では注意事項を説明しますね」


 ダンジョンの中は自由に改造して構わないが外見を変えては成らない。

植物や動物などの生物も自由に作成して構わないが人類など知能の高い者は駄目である。

ダンジョン内いの生物は自分の意思で外へ出ては成らない。

毎月支給されるアイテムや金貨を宝箱に仕込み冒険者に渡る様にする事、尚無理に使い切る必要は無い。

営業時間は・・・


「営業時間! 何処かのテーマパークみたいね」


営業時間は日の出から日の入りまでとする。

ダンジョン内で死亡した物は外の建物で復活するが、3日は再挑戦が出来ない。

担当者の生活場所は地下2階とし本人の許した者だけが使える街ちへ続く扉を設置して置く。


「あああもう良いわ、後は自分で読んどくから早く中を見てみましょう」


 瞳はスーツ神から紙を取り上げるとダンジョンの中へと進み始めた。

スーツ神も後に付いて入ると、部屋の真ん中で絶句する瞳が手に持った紙を力一杯握りしめ体を震わせていた。


「これはどう言う事よ」


瞳のこれはと言うのは中には小部屋が1つと地下に降りる階段しか無い事を指している。


「瞳さんの世界ですから余計な手は加えない方が良いかと思いましてですね、通路や階段、部屋などは魔法で生物はスキルで作って下さい・・・と紙に書いてあったのですがね」


「そうなのね」


「因みに創造のスキルはこのダンジョン外では使えませんからね」


「分かったわ、地下へ言ってみましょう」


地下へ降りると瞳は歓喜し大はしゃぎした。


「何よこれ最新の家電とかあるじゃない」


「電気は繋がってませんので、魔法で使う感じですね」


「素敵ね気に入ったわ」


スーツ神は一安心したのか額の汗を手で拭った。


「私はこれからスーツ神と名乗る事にしました、折角瞳さんが付けて来れた名ですからね」


「私はどうしようかな?」


「女神瞳とかでよろしいのでは?」


 駄目だスーツ神はセンスが無い!


1時間・・・2時間・・・スーツ神の入れた茶を飲みながら出した答えが


「決めた! 私は創造の魔女とか魔術師とか、そんな感じのを名乗る」


「え? 神を名乗らないんですか?」


「どうせ見習いみたいな者なんでしょ、それなら今だけは好きな名を名乗る」


「その様に手配しときます、早く立派なダンジョンを作り自分の世界を広げて下さいね」


「任せなさい!」


「私も少しは楽が出来ると言う物です」


 この人も案外やる気ないんだな・・・ガムシャラな熱血者よりは意気も合うと言う物かな。


「そう言えば困った時はどうすれば良いの?」


「直通電話が有るので使って下さい。出来れば朝6時から23時の間でお願いします」


「23には寝てるって随分と健康的なのね」


「寝てても何か問題が起これば警報で起こされますがね」


「マジですか・・・」


「伝え忘れてました、今日から1周間は入り口が幻影で隠されてますが、以降は消えますので冒険者などが来るかも知れませんからね」


 1週間か・・・まずは1階をそれらしくしてから上へ登って行くか。


「そろそろ私は失礼しますね、色々やらなければ成らない事もありますので」


「何するの?」


「まずは環境のチェックや生態系の調査、種族間の関係などなどですね」


「お互い大変だね、でも頑張ろうね」


「はい! それでは」


スーツ神は足元からスーッと消えて行った。


「さて何からやろうかな?」


こうして創造の魔女がこの世界に誕生したのだった。



 瞳は1階へ戻るとため息を付いた。


 ジメジメして気持ち悪いわね・・・


「部屋をひろくしよう」


そう呟くと両手を壁に向けて風魔法を放った。

壁を壊すと土魔法で硬めるを繰り返して行く。


1時間・・・2時間・・・


ひたすら作業に没頭した結果野球場位の部屋が出来上がってしまった。


 やり過ぎた!


瞳は慌てて外見の確認をしに外へ出てホッとした、どうやら中は異空間と成っている様だった。

中へ戻ると創造魔法で草原に林、川などを作り、生き物をどうするか考え込んだ。


「大体何レベルの人達が来るのだろうか、愛着込めて作るのだから簡単に殺されたくは無いわよね」


取り敢えずレベル40のうさぎオスとメスを数匹ずつ創作し野に離した。


 草食だから自ら人を襲う事無いか、沢山繁殖してくれれば良いな。


そこからは肉食系、鳥類、魚類と様々なレベルの生き物を創造して行き、レベルも様々に設定した。

しかし最低レベルが40のうさぎなのは変わる事無かったのである。


「あー疲れた、今日はこの位にして明日はモンスターに挑戦してみようかな・・・しかし景観がな・・・迷う所だ」


 瞳は地下へ降りると冷蔵庫から食品を取り出し調理を始めたのだった。






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