唯一の男が女人国家を男女共存国家へと変えて行く物語

マナピナ

国内唯一の男 Ⅰ

 ある世界に周りを海で囲まれた国、ゾネス皇国が存在していた。

面積は84.000キロ平方メートル、人口55万人と大国では無いが自給自足が出来る、人類だけの海洋国家である。

 ただ変わっているのは国民の全てが女だけと言う所である。

そんな国で、現女王陛下であるセリア・ユーエンから全国民に対して重大な発表がされる所だったのだ。


「敬愛成る国民達よ、セリア・ユーエン4世である、突然の告示だが今この時を持って女人国家の廃止を命ず。

これからは女児限定にする秘薬を使わずに子を身籠る事許す、なお男が国で生活を許すのは我がゾネス皇国で生まれた子のみに限る。」


 そう言い終えた所でセリアの横に、1人の少年が歩み寄り並び立った。


「国民の皆には驚かせる事に成るだろうが、ここに立つ子アート・ユーエンは男子である」


 アートは緊張した仕草で礼をするとセリアの言葉は続くのであった。


「世は11年悩んだ・・・この子を産んだもの表に出すか出さないか、しかし決意して産んだ子である。

彼を皇太子と指名し、アカデミーに入学から卒業後この国初めての結婚式を行う事とする。

この国が出来た原因を再び生み出さない為、一夫多妻制の永遠婚も国の法に組み込まれると成るだろう。」


 セリアは演説を終えるとアートと共に建物の中へと消えて行った。


 この話は国中に良い意味、悪い意味と様々な捉え方で広がったのである。



 セリアとアートが執務室への扉を潜ると直ぐに茶の用意がされた。


「母上の願い叶うと良いですね」


「それは貴方次第ですよ」


「心得ましたが男一人は寂しいし怖い気がしますね」


「この国の成り立ちは話した事がありますよね、今では当時を生きた人は居ないですし時代は変わってます。

ゾネス皇国も変わる時が来たのでしょう」


アートは何も言わず頷くのであった。



 時は100年あまり戻る。


 ゾネス皇国建国者のミラク・ユーエンはサラスタ帝国の皇族に嫁いでいたのだが、4人の子供に恵まれながらも全て女子と言う事から呪われた妃と言われ、婚姻関係を解消されたのだ。

一夫一妻制の帝国では離婚した女性の再姻が難しくミラク・ユーエンも同じであった

それを悔やんだ彼女は新しい国家を作るため国内外から女性を集め、その国が平和で有るよう女性だけの国を大陸東方にある島で建国した経緯が有るのだった。

 そこまでの決意をさせたのは、嘆き苦しんだ彼女に女神の使いである天使が身の寄り所にしたからだと言い伝えられてもいるのだった。


「今まで敢えてお聞きしませんでしたが、父上はどの様な方だったのでしょうか?」


「そうね・・・話しても良い頃合いかも知れませんね。

その前にアート、アカデミーに入学するまでの一年間で口調や仕草を男らしく変える必要があるようですね」



 セリアは茶を一口含み微笑むと、空を見つめ思い出す様に語りだした。


「母様お呼びでしょうか?」


「セリア、良く来てくれました」


「母様の命であれば何時いかなる時も参上します、それでどの様なご用件でしょうか?」


「セリアは今年アカデミーを卒業したばかりですが、子を儲ける為に出国しなさい」


「お言葉ではございますが早すぎはしませんでしょうか?」


「今まで黙ってましたが、貴方には本当の事を伝えましょう」


「・・・?」


「私の命は長くて5年と診断されてます、貴方が早くアカデミーを卒業する事待ち望んでました」


「そんな・・・母様はまだ40を超えたばかりではありませんか?」


「この病は仕方が無いのですよ、元々体が持たないのは覚悟していた事です」


セリアの母ミラクは、天使を体に受け入れた事で様々な知識を与えられる代わりに、自身の寿命を大きく損なう事と成っていたのである。


「かしこまりました、命のままに従います」


 

 翌日には旅支度を終え、共を2人従えて船に乗り帝国領を目指したセリアだった。


「姫様、あては有るのでしょうか?」


「まずは帝国に行き王家へ謁見を求めてみましょう、それよりナタリアお忍びですから姫様呼びは無しですよ、ミーナも良いですね」


「申し訳ありません、セリア様」


「心得てます、セリア様」


 中央大陸には大小様々な7国が隣接しあい国同士の小競り合いは勿論、魔物や魔族と言った者との戦いも行われていた。

 その中でもっとも強大なのがサラスタ帝国、ゾネス皇国では代々帝国の民から子を授かるのが常と成っていたのであった。


「この際です、貴方がたも良い殿方がいたら子を授かると宜しいわ」


 セリアは意味深な顔で2人を見つめる。


「あははは・・・」


「セリア様、突然過ぎます」



 船は2日掛けてキシリア王国の港湾都市に入港した。

目的地までは王国を抜け、帝国領まで馬車で3日帝都まで馬車で5日、計8日とかなりの距離が有るのだった。


 初日の夜、馬車は無事に予定の村へ着いた。


「あー辛い、馬車って何時乗ってもきついわ」


「知ってます」


セリアの苦情を軽く聞き流すナタリア


「ナタリアは良いわよね、騎士団長と言う立場から馬揺れには慣れてるのですからね」


「セリア様、愚痴ばかり言ってても仕方がありません、早く宿屋で食事にしましょう」


「ミーナの言う通りね」


3人は村に有るたった一軒の宿屋に入った。

部屋に荷物を置き下へ降りると、共に馬車で移動して来た人々でテーブルは殆ど埋まっていた。


「そこの方、相席を宜しいでしょうか?」


「どうぞどうぞ、旅の最中で綺麗な方々と食事を共に出来るのは嬉しいですね」


「では失礼しますね」


セリア達3人は、レベルの高そうな冒険者のテーブルへと相席する事と成った。


「目的地は帝都ですか?」


「はい、申し遅れましたがセリア・ユーエンと申します、右に居るのが」


「ナタリア・オウエンと申します」


「私はミーナ・ハリエル、お見知りおきを」


「ご丁寧にありがとうございます、俺はコウジ・ヒイラギ冒険者をしています」


「ヒイラギ様も帝都まで行かれるのですか?」


「その予定ですが・・・馬車が苦手なもので明日からは歩いて向かおうと思ってます」


「それは良いですね、ご迷惑で無ければ私達も同行させては頂けませんでしょうか?」


「なっ」


「姫様!」


ナタリアは慌てて手を塞ぐ。


「姫様?」


「え、えーと、海の向こうに有る小さな国ですから気にしないで下さい」


「はぁ」


冒険者コウジは納得出来ないような顔をしつつも、それ以上の追求は控えたのであった。


 翌日からセリア一行はコウジと一緒に帝都まで向かう事に成るのである。

そしてアート・ユーエンの父親に成る男であり、女人国家廃止を決意させた人物だったのだ。


 この一行が旅した話はまたいずれ語る事としよう。


ともあれ、それぞれ気に入り人の子を宿した3人は、国を出てから3年で戻る事に成ったのである。



「父は冒険者だったのですね」


「とっても強く優しい方でした、所で今日はあの2人と会わないの?」


「この後・・・宰相ジェナ・オキナスの勉学で会うのですが、今から何を言われるか憂鬱です」


「頑張って器量で乗り切りなさい」


 はぁ・・・この先どうなるのだろうか・・・?


 

 俺は時折不思議な夢を見る、それは見た事無い世界だが妙に現実的であり、今の世界観を変えるのに十分な参考に成る世の中を見せてくれるのである。

その中で出てくる男性が様々な知識を与えてくれる・・・目覚めると男性の姿は朧気に成ってしまうのだが、彼が神の様な存在なら色々納得出来る事も多く成るのだ。 



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