第七章 世界樹 VS 黒の世界樹

第41話 クトーニアンの魔王

 クトーニアン穏健派の大使、ハィラさんが来て、一週間がたった。


「おまたせしました、コーキさん。父であるクトーニアンの魔王が、あなたに会いたがっているそうです」


 ハィラさんが、自分たちの領地まで案内してくれるそうだ。

 どうやら、領主である父親と話し合って、ボクたちの意見をうかがおうということに。


「ワタシは、同席したほうがいいのでしょうか?」


 天使族のドムさんが、ハィラさんに尋ねた。


「難しいです。我々の方から、そちらにお邪魔するという形を取らせていただきます」


 ドムさんたち天使族は、クトーニアン族とは対立関係にある。いくら穏健派のハィラさんがOKを出しても、国民感情的に天使が領地に来られるとトラブルになりかねない。ここはひとまず、ボクたちだけで行くことにした。


「わかりました。父にも、そう伝えておきますので」


 そう言い残して、ドムさんは天空城へ帰っていく。父親であるセラフ王に、意見を聞きに行ったのだろう。


 できるだけ、早く話し合ってこようかな。


 海にある領域には、ダリエンツォの港を介して向かうとか。


「船は用意するぞ」


 ダリエンツォのヴェリシモ王女が、船団を手配しようとした。


「結構です。このまま、進めますので」


 海岸まで、ハィラさんは歩いていった。海に、ヒザまで浸かる。


「離れていてくださいね」


 ハィラさんは、海の向こうへ手をかざした。


 海に、橋がかかる。その向こうに、サンゴでできた宮殿ができあがった。


 生き物のように、サンゴがうごめいている。薄紫色のイソギンチャクが、木々をマネるかのようにウネウネ動いていたのだ。


「幻想的な世界だね」


「我々からすると、見慣れた景色なのですが」


「行こうか」


「はい。こちらです」


 動く歩道のように、ボクたちは自動的に橋を渡っていく。


「海水で滑っているようじゃな」


「すごいね。ハイテクだよ、コーキ」


 クコとパロンが、珍しがっていた。


「お待ちしておりました、コーキ殿」


 半魚人の番兵二名が、通せんぼしていたモリを解く。

 ボクたちが宮殿に到着すると、扉がひとりでに閉じた。宮殿が海底に、ズズズっと潜っていく。

 なるほど。ボクらを中へ入れるために、一時的に浮き上がっていたのか。


「魔王の間はもうすぐですよ」


 だんだんと、通路がものものしくなってきた。


「よくぞ参った。我がクトーニアンの魔王である」


 オコゼに手と足が生えたような姿の男性が、眼の前に。この人物が、クトーニアンの穏健派リーダーらしい。


「ウッドゴーレムのコーキといいます。素材は世界樹です」


「聞き及んでおる。こたびの働き、見事だった。ほうびは、我が娘ハィラでよろしいか?」


 ちょっとまって! そんな話をしにきたの!?

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