第25話 3章・学校入学編_025_装備一新
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3章・学校入学編_025_装備一新
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僕は金や銀などの貴金属は創造できないんだ。宝石もだね。創造できるのは木材と銅や鉄、あとは前世の記憶にある飲食物かな。創造神の加護レベル一ではこれが限界。
前世の食事が創造できるだけでも御の字なんだけどね。
銅や鉄を創造するだけでも結構なお金になるから、この数年は領主様に大量に売りつけ……ゴホンッ、買ってもらった。
銅や鉄は、金や銀と違って産出量が多い。僕が創造した程度の量が増えても値崩れしないのがありがたい。
何が言いたいかというと、僕はそこそこお金持ちってことだね。おそらく商人になってもそれだけで大成できるだろう。
そんな僕がオリビアちゃんとの婚約で、彼女に贈るものが刀と鎧ってどうなの? そんなことを考えながら、リューベニックで購入した素材を色々試しているんだけどね……。
金と銀は金属としては柔らかいもので、武器や防具に使うものではない。コストもかなりのものになるからね。
でも
配合比を色々試して、武器や防具に最適な合金にしたけど、基本は鉄だね。そこにちょっとだけ上記の金属を混ぜるんだ。
・青金:鉄と少量の青金を混ぜて合金にすると、青みがかった鉄になる。鉄よりは丈夫だが、差はあまりない。
・赤金:鉄と少量の赤金を混ぜて合金にすると、赤みがかった鉄になる。鉄よりは丈夫だが、差はあまりない。
・茶銀:鉄と少量の茶銀を混ぜて合金にすると、茶銀色の合金ができる。鉄よりかなり丈夫。
・黄銀:鉄と少量の黄銀を混ぜて合金にすると、黄銀色の合金ができる。茶銀合金よりも丈夫。
このような結果になった。
僕とオリビアちゃんの婚約パーティーが開かれ、僕はあの黄銀合金で創った鎧と刀を彼女に贈った。オリビアちゃんはとても喜んだけど、領主様とママさんはそんな彼女を見て微妙な表情だった。そりゃそうだよね。普通は鎧と刀なんて贈らないし、贈られても喜ばない。
領主様の家族全員、家臣たち、僕の家族、そして周辺の貴族家からの使者が出席した婚約パーティー。
僕は馬子にも衣裳というくらい着飾ったけど、オリビアちゃんの美しさの前では霞んでいたことだろう。
オリビアちゃんは桜色の髪が映えるドレスに、宝石が散りばめられたシルバーのティアラをしていた。首元にもエメラルドがあしらわれたネックレスが光っていたよ。あれいくらくらいなんだろうか?
「綺麗だね。皆がオリビアちゃんの美しさに見取れていたよ」
「当然じゃない」
そこは頬を染めて、ありがとうと言うところだと思うんですが?
「婚約発表したから、もう逃げられないわよ。ランドー」
「怖い言い方しないでよ」
逃げる気なんてないけど、そう言われると逃げたくなるのはなぜだろうか?
「ふふふ。ランドーの成り上がりを見守るのが楽しみだわ。まずは士族ね。おめでとう」
「僕が士族か。なんだか不思議な感じだね」
「何を言っているのよ。ランドーなら貴族にだって、国王にだってなれるわよ」
「話が大きすぎるよ」
「私の旦那さんになるんだから、出世してもらわないとね」
「それなら少しはがんばってみますか」
「少しだけなの?」
「少しだけ。それで国王くらいなってあげるから(笑)」
「じゃあ、たくさんがんばって私に世界をプレゼントしてほしいわ」
「もっと話が大きくなったね!」
入試が終わって婚約の引き出物を創り、婚約パーティーをしてと慌ただしかったけど、僕たちは一月から始まる新生活の準備に取りかかった。
魔法学校の入学金と学費は推薦状を出した貴族が出すのが慣例らしいけど、僕はその分の額を領主様に支払った。そのくらい払える財産はあるから領主様に負担をかけたくないというのが名目なんだけど、本当は負い目を作りたくなかったんだ。
領主様と僕は利用し合う関係でいい。僕は鉄などの金属をメインに、時々火竜剣などを売る。領主様はそういったアイテムに対して対価を払う。お互いに利益のあるウィン・ウィンの関係だ。
そんな十二月のある日、僕とオリビアちゃんは二人で森に入ることになった。オリビアちゃんがどうしてもあの鎧と刀を使ってみたいと言う、ただの我が儘だね。こういう我が儘もまるごとオリビアちゃんだから、僕はそれを受け止めることのできる男になりたいかな。
「いつかのイノシシより大きな魔獣を狩ってくるからねー!」
オリビアちゃんはママさんに手を振りながら、領主屋敷を出ていく。
季節はすっかり冬で、魔獣狙いのハンターが広場などで見られる。彼らは一度森に入ると、数日戻って来ないらしい。
さすがに夜までに戻るという約束を、領主様にさせられたよ。未婚の男女が森の中で一夜を過ごすのかとか、親バカとか、ママさんが心配するなどの理由からだね。
黄銀は金よりも薄い金色をしている金属で、鉄との合金で創った鎧の銘はアマテラス。薄い金色の鎧は神々しいから、このような銘にした。
このアマテラスには魔法攻撃と物理攻撃に対して、自動で防御結界を展開する機能をつけている。
刀も今のオリビアちゃんの背に合わせた長さにしている。こちらも黄銀合金を使っていて、刀身は薄い金色になっている。それからどーしても妖刀がほしいとオリビアちゃんが言うから、魔剣にしておいた。
今回の魔剣は火ではなく、雷を発するものになっている。銘は
このアマテラスと天神雷光は共にかなり強力なものだから、オリビアちゃん以外の人が使っても効果が発動しない仕様にしてある。俗にいう所有者登録だね。
僕のほうはハンターが狩ってきたオオカミの魔獣の皮を素材にした黒い革鎧と、茶銀合金を芯にした百五十センチメートルほどの木の杖を装備している。
オリビアちゃんのアマテラスと天神雷光に比べると地味なのは否めないけど、革鎧には魔法吸収、杖には魔法威力上昇と単純に硬いという効果がある。
オオカミの革鎧にはフェンリル、杖にはニワトコと銘をつけている。こちらも共に所有者登録をしていて、僕以外では効果が発動しない。
僕はともかくオリビアちゃんの鎧はかなり目立つから、二人ともマントで身を包んで村の中を通って森に向かった。
「うーん。自由だわー!」
森に入ったところで、背伸びしたオリビアちゃんが叫んだ。
「村の中ではかなり自由に出歩いていたじゃないか」
「それはそれかな~。村の中と森じゃあ、解放感がちがうのよ」
開放感が違うのには同意するけど、そこまでかな?
僕は別に森に入らなくてもいいと思っているんだけど。
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