12  コハル婚活〈過去〉

 コハル夫婦は、イマドキお見合いシステムでゴールインした。 

 

 それは簡単な略歴を見て交際を申し込み、相手が承諾した場合、連絡先が書かれた身上書を送ってもらえる。

 コハルが申し込んだので、コハルが彼に電話した。

 そうやって、会う段取りは自分たちですすめる。 


(なるべく家の近くに迎えに来てくれると助かるなー)


 電話で話していると彼は、コハルの住んでいる近くにドライブがてら来たことがあると判明。それで、待ち合わせ場所はコハルの家から、ごく近い場所を目印にした。

 だから、待ち合わせ場所に立っていて、「遅れそうです」と、彼から電話があったときも余裕で、「ゆっくり運転してきてくださいね」と言うことができた。

 彼の住まいは2時間くらい離れたところだ。この地に転勤で来ていて、道路事情にも疎かった。

 「今、○○にいるので、20分くらいかかります」と彼が言ったルートは、倍の時間かかるということをコハルは予測できた。

 それでいったん、うちに戻った。


 玄関のがりかまちに腰を降ろしていると、母が台所から、「どうしたの」と顔を出してきた。今日、お見合い相手に会うことは伝えてある。

 「遅れそうなんだって」と、説明したコハルは、「ふーん今回ダメだね」と、励ましにならない言葉をもらった。


 母は、昔ながらの仲人さんがいるお見合い派だ。

 それでまとまらないから、イマドキお見合いシステムにまで参入しとるんだが。


 相手のばっかり探しとったら結婚できないって、そっちも言うくせに。

 仲人さんだって、60%よかったら結婚しぃ、言うとったわ。

 あと40%がダメっていうの、多すぎる気がするけど。

 多少の遅刻に目くじら立てとったら、結婚できんわ!

 待たされることを想定して、家の近くを待ち合わせ場所にするという、コハルも腹黒い策を立てた。だてに、お見合いをくり返していない。


 そのうち、「着きました」と彼から電話が入った。


 コハルは、とことこと家から歩いて行って、彼の車に乗った。

「すいませんでしたっ。20分で着けると思ってましたっ」

 彼は運転席で平謝りしてきた。


 あとから聞いたことには、このとき彼は40分、コハルが立ち尽くして待っていたと思い込んでおり、激しい罪悪感にさいなまれていた。そして、許してもらうためになら、何でも言うことを聞く心境になっていた。

 助手席に座ったコハルの腹が鳴った。「……」正直に、「今日は喫茶店でお話しして帰ろうと思っていたんですが、おなかが空きました」と、打ち明けた。

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