第2話
「私、小説を書こうと思うの」と彼女はいった。
「どんな?」と彼はいった。
「何も起こらない小説」
「それじゃあ、小説にならないよ」
「なるよ」
「じゃあ、やってみて」
「昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいませんでした。めでたしめでたし」
「めでたくはない」
「あら、存在することは罪ではなくて?」
「反出生主義のお嬢様だ」
「反出生主義のお嬢様ね」
ここではもう、何かが起こってしまった。
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