紅に染まる

とりあえず迷惑客のオッサンを殺した俺だがどうするか? あんな声聞こえても何も起こってませんだったら困るな、普通に捕まるし、少し軽率だったか? なんて思っていた時だった。


「五逆君?今、変な声聞こえなかった?」


とハゲ狸が裏のバックヤードへとつながる扉から出てきたのは。


そういえばコイツいたなー。なんて馬鹿みたいな感想が出たが、状況は結構まずい。俺が殺した迷惑客のおっさんの死体はレジの棚で隠れてハゲ狸には見つかっていないようだが、見つかるのは時間の問題だろう。


どうしようか? このオッサン急に倒れました。なんていっても無理があるだろうし、なら気づかれてない今のうちに逃げるとか? うーんそれも、自由に生きると決めた以上嫌だし。何より俺が人殺しと知っている人間はいない方がいい、その方が自由に動きやすいし。


となると…殺すか。


うん殺そう。このハゲ狸も含めたこの店の人間全員。色々悩んだが結局それが一番手っ取り早い。試してみたいこともあったし。


そうと決まれば、全員殺すために行動しよう。まず武器が欲しいが、ハゲ狸がこっちに来ている以上こいつを惹きつけつつ武器を手に入れなければ。


「変な声❓そんなの聞こえましたか?それより店長、さっき新人の佐竹君が何か聞きたがってましたよ。」


「そうかい、やはり私の幻聴かな❓それと佐竹君の事はわかった今聞いてくるよ。」


とハゲ狸はバックヤードに戻っていった。

よしひとまずは成功だな、これから武器を手に入れたいのだが、心当たりはある。店長のゴルフクラブだ。このハゲ狸、仕事終わりに打ちっぱなしに行くらしく。いつもゴルフクラブを職場に持ってきていた。いつもは邪魔くさいと思っていたが、今日だけは感謝しますよ店長。


そんな事を思いながら俺もバックヤードに移動して無事ゴルフクラブを手に入れた。


さて、この店にいる人間を殺す。と言った以上全員殺すんだが、誰から殺そう。現状この店にいるのはあのハゲ狸と新人バイトの佐竹、

そして先輩バイトのAとB(名前覚えてない)だ。

本当に誰から殺そう、出来るだけスマートに殺し切りたいんだがなー、としばらく悩んだがめんどくさくなったので、出会った奴から殺していくことにした。


そう決めて、店内を歩いていると、第一村人発見。先輩バイトのAとBだ。揃ってスマホをいじりながら立ち話をしている。


これは都合がいいスマホに集中しているなら、多少目の前で何が起こっても気づかないものだから。


ということで、俺はさっそく足元に力を溜めてそれを一気に解放すると最短距離で先輩バイトAに近づき、加速しながら大きく振りかぶって勢いと遠心力をゴルフクラブに目一杯乗せたら一気に薙ぐ、ヒュ〜という空気を裂く音とともに、ゴルフクラブはAの後頭部に吸い込まれた。


「ガッ…バタン…」


「鮎川❓何がどうなってんだ、五逆お前何してん……」


Aが即死して倒れた後、その音にBが気づいた瞬間には俺は次の行動に移っていた。振り抜いたクラブの勢いを利用して回転してクラブに再び遠心力で勢いをつけて、Aと向かい合ってる形だったBの前頭部にも思いっきりクラブを打ち込んだ。


Bも即死したようだ。


いや〜それにしてもマジで快感、ゴルフって楽しいわー、AとBには感謝だわ。この快感に気づかせてくれてありがとう。ていうか二人の死体から血がダラダラ出てるわー、本当にこんなに出るんだ。知らなかった、また一つ賢くなれたよ。なんちゃって アハハハハハハHAHAHAHAHAHAHA


さーて次はハゲ狸と佐竹を殺しに行こう。恐らく先程俺が嘘をついたから、二人は一緒にいるだろう。


少し探すと案の定、二人は休憩室で何やら話していた。だから俺は早速休憩室に侵入した。

侵入すると同時に一気に足を踏み出してそれと同時にクラブを大きく両手で上に振り上げて一気に振り下ろして佐竹の頭に振り下ろした。


案の定佐竹も即死したようだ。だが、やはりハゲ狸には気づかれた。当たり前だ奴は佐竹の目の前にいたんだから。だが、これでいい元々こいつは即死なんてさせる気はなかった。


「五逆君??? 何やってるの君?? は??ほんとに意味わかんないんだけど。君こんなことやって許されると思って…ヒッ……グハッ…」


しばらく奴の様子を見ていると、混乱したのち意味分からない戯言を言い出したのでとりあえず奴のところまで加速して地面と平行に振りかぶったクラブで奴の顔をぶん殴ってやったら、奴は吹っ飛んで壁にぶつかった、といってもまだ死んでないはずだ。だから俺は壁際まで行くとクラブで思いっきり奴の体をぶっ叩いた。


「起きろ。」

「ガハッ…五逆…テメェ…犯罪者のテメェを拾ってやった恩を忘れたか?」


と起きたと思ったら奴はこんな事を言ってきた。はぁ?拾ってもらった恩だと? テメェは行き場のない奴らを拾ってきてはそれをいいことに理不尽なサービス残業とかやらせていいように使ってただけだろうが。

その言葉を聞い瞬間、俺の中の何かが切れた、そしてもう止まれなかった。


「グギャッ…グフッ…待ッ…悪ッ…ダメッ…」


俺は、ハゲ狸をクラブで殴った、殴りに殴った、まるで何かに取り憑かれたかのように殴りに殴り続けた。


「ヤ…ホントに……ゴメ……ガハッ…」


殴りに殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る……



いつの間にか目の前のハゲ狸はただの肉片になっていた。休憩室は血で真っ赤だった。


残ったのは、ついにあのハゲ狸を殺してやったという達成感と快感だった。正直気持ち良すぎておかしくなりそうだった。だから俺はその場で意味もなく思いっきり笑いはじめた。


アッハハハハハハハハハイッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒフッフフフフフフフフフフフフ


もしこの光景を誰かが見ていたらその光景に悍ましさと恐怖を感じたに違いない。この血に塗れた部屋で笑う五逆天授というまるで紅に染まった悪魔が笑っているかのような光景に。

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