第26話 王子の暗殺劇 4

「まあ、ヨゼフ君は納得させるための証人に過ぎない。すでにこちらで調べてあなたが黒幕、残念ながら我が妹とフローラ妃も協力者だということは早くに掴んでいました。ルーフェは何も知らず、巻き込まれただけだ。」

「お前など!あの時に死んでいれば!」

「ふふ、私には女神がついていましてね。その女神が兄上とアレクシア妃も助けてくれたのですよ。残念ながらソフィー、お前には女神は微笑んでくれなかったね。」

「お、お兄様!違うの!私知らなかったの・・・騙されてたの!アラン皇子に脅されてたの!」

「なんだと?お前たちがルーフェを王太子にするには二人の王子が邪魔だと言ったんだろう!」

「はいはい、茶番はもういいよ。そんなことは興味がない。この二人を牢に連れて行け、地下の方だぞ」


 わめき暴れる二人を騎士たちが連れて行くと、エリックは崩れ落ちたままのカインのそばに立った。

「家族は無事だぞ」

 何を言われているのかわからないカインはエリックを見上げるだけだった。

「お前の家族は助け出して保護してある。全員無事だ。」

 カインは大声を上げて泣き叫び、エリックに感謝と謝辞を繰り返した。


 そのカインも連れだされるとやっと広間に静けさが戻った。

 事態の重さにもう興味本位に笑っている者は誰もいなかった。

「エリック、これで片付いたか」

「はい、陛下。ありがとうございました。」

「礼を言うのは私の方だ。よくやってくれた。・・・よく生き残ってくれた」

 いつも冷静沈着なエリックもこの時ばかりは胸に来るものがあった。

 父親といえど、物心ついたときから国王として存在していた父には距離があった。しかし今日、親としての愛情を感じる事ばかりで、らしくなく目が潤んだ。


 その後、国王が再びみんなに状況を説明し、詫びた。

 このような舞台を利用したのも、この機を狙ってアランたちが仕掛けてくることが分かったことと、国外の賓客に偽りない事実を知ってもらうためだった。

 内密に処分をすると、隣国からどんな言いがかりや虚偽情報で逆にこちらが陥れられるかわからない。

 王家の醜聞ではあるが、結果的に3人の王子には問題がなく、一番の黒幕は隣国の王子だと広く知らしめられたことは重要な事だった。


 今後、他国と隣国との付き合いが変わっていくだろう。婚姻という確固たる同盟を結ぶふりをしながら、その実は乗っ取りを考えるような信用できない国との取引や交流をやめるだろう。

 そして策に嵌まらず、華麗に敵を退け国を守る優秀な王子がこの国にいることを世界に喧伝できたのは大きな成果だった。

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