第28話 迎え討つ?
「リティア、ありがとう。でもそれはできない。ベリンガムを迎え撃つよ」
「ラティス様、本当にそれでよろしいのですか」
「リティア、心配はいらないよ。俺を誰だと思ってるの? 俺はグリフォンの生まれ変わりラティス.レクスオールだよ?」
「わかりました。もうなにも申し上げることはございません。ご武運を」
「ああ、任せといてよ。だけどリティア、もしもの時は迷わず逃げて」
「……わかりました」
俺でもわかる。ギルバートさんの娘であるリティアは捕らえられればただでは済まない。
もしもの時はリティアさんには逃げて欲しい。
元々俺に選択肢は無い。覚悟なんか決まらないけどやるしか無い。
それからギルバートさん達が戻って来るまで、必死でレクスオール戦記の記述を思い出し頭の中に浮かべる。
ベリンガムの戦いはリクエとの戦いよりも規模が小さかったからか正確な記述は少なかったように思う。
そもそも、戦いが起こったタイミングの記載もはっきりとは無かった。
ただはっきりとレクスオール軍が、森の中でベリンガム五百を相手にして完勝したと記述されていた筈だ。
という事はやはりベリンガム軍を待ち受けるのではなく森で迎え撃つ必要があるという事だ。
「ラティス様お待たせしました。まもなく兵は集まりますが、まずは我ら六人と会議にてラティス様の策を授けていただければ」
「おお、ラティス様の神謀楽しみです」
「ベリンガムもバカな事をしたものだ」
「今から戦が楽しみだ」
「また私がベリンガムの首を落としましょうか」
「ゆっくり酒でも飲んで待ちますか」
この人達は……
どこまで脳筋なんだ。いや脳筋というか脳内がお花畑といった方がいいんだろうか。
こんな人達が史実の英雄。
事実は伝記より奇なりとはよく言ったものだ。
「ユンカーさん」
「ラティス様、ユンカーとお呼びください」
「それじゃあユンカー、ちょっと聞きたいんだけどベリンガムの兵がこちらに向かっているのは間違いない?」
「はい、間違いありません。ベリンガムの街を兵が出立するのを見届けてから馬を飛ばして帰ってきましたので」
「それで数は四百五十で間違いないの」
「はい、おおよそそのくらいかと」
「ここに着くのは四日後くらい?」
「はい、歩兵もかなりの数でしたのでそのくらいかかるかと」
「そう」
やはりギルバートさんの言っていた通りらしい。
「地図はある?」
「はい、ここに」
「え〜っと、ここがレクスオールで、こっちがベリンガムか」
知らない土地だが、地図くらいは俺でも読める。
「ベリンガムがこう進んできたとして、途中にある森はこのあたりか」
「ラティス様、森で撃つおつもりですか?」
「ああ、ベリンガムは森で迎え撃つ」
「森で戦うなら騎兵は不利ですな」
「向こうはこちらが既に気づいているとは考えていないだろうから奇襲をうとう」
「なるほど」
「ここなら馬を使えば一日で着くだろうから、罠を仕掛ける時間は十分にある」
「たしかに」
俺のいた時代には火薬があったがこの時代に火薬はまだなかった筈だ。
なので原始的な罠にはなるが奇襲であれば十分に通じる筈だ。
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