第21話 親の仇?

食事を終えてからビルドワースさんに案内されて町を回ったが、レクスオールの町は広さこそあるが、人の数はそこまで多くはないようだ。

落ち着いた田舎町という感じで住みやすい気はするが、俺の時代のレクスオールからは想像がつかない。


「どうです? いい町でしょう」

「そうですね。いい町ですね。人も優しそうだし」

「グリムワール様の代からですからね。本当に惜しい方をなくしました」


グリムワールってラティスの親か? 

そういえばラティスの親が事故で亡くなったって言っていたけど、確か少しだけどラティスの親に関する記述があった気がする。

なんだったかな。

その場でレクスオール戦記の内容を思い出してみるが、ラティスを祖とする戦記の為か、親の名前は載ってなかった気がするが、戦いの記述の中に一文だけ触れられていたと思う。

ラティスのセリフ。


「親の仇! 必ず打ち破りその臓腑食い破ってみせる!」


え! 親の仇!? ラティスのセリフには間違いなく。親の仇とあったはずだ。

確かあれが載っていたのは一巻の序盤。リクエの戦いを終えた後。ベリンガムとの戦いだったはず。

その事に気づき血の気が引いてくるのがわかった。


「あの〜ビルドワースさん。つかぬ事をお伺いしますがベリンガムというのは……」

「ベリンガムですか? 隣接する隣領ではありませんか。寄親こそ違いますが、隣接しているので行き来も多いですし、それこそさっきの塩はベリンガムから仕入れてるんじゃないですかね」


ああ‥‥やっぱり隣領だった。

レクスオール戦記によれば、ラティスはベリンガムと戦い勝利している。

そしてラティスのセリフ。

レクスオール戦記が正しければ、ラティスの両親は事故ではなく、ベリンガムによって葬られたという事だろう。

ラティスの両親という事は、俺の遠いご先祖様でもあるわけだが、名前も知らず会ったこともないので、少しモヤッとした思いはあるが、そこまでベリンガムが憎いとは思わない。

だけど、俺はベリンガムとの戦いを思い出してしまった。

正直忘れることができるのなら今すぐ忘れてしまいたい。だけど思い出してしまった以上無視できない。

だって無視して歴史が変わってしまったら、俺はどうなってしまうんだ。

もしかしたらいないことになってしまったりしないか。

そんな命をかけた検証をする度胸は俺にはない。

だけど、また戦うのか……

この時代、乱世だったとはいえラティス、どれだけ戦いが好きだったんだ。

よくよく考えてみるとレクスオール戦記全十五巻は戦記と名がつくだけあって、その大半は戦いについての記述だった。

もしかして、俺がラティスに成り代わってあれを全部再現しないといけないのか?

いや、そんなの普通に無理だろ。

絶対むりだ〜!

突然のリアルが襲ってきて絶望に駆られてしまう。

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