レクスオール戦記 凡庸な俺にご先祖様の代わりは務まりません
海翔
第1話 ここはどこ?あなたは誰?
え!? なに? どういうこと!?
「死ねや〜ごらアアア!」
「舐めるなあああ〜」
「グハッ!」
「ぼやぼやするな!! なにやってる! 死にたいのか!! ここは戦場だぞ!!」
「え!? あ……はい?」
「避けろおおおおお!」
なんだ。いったい何が起こったんだ。
突然の事に頭が混乱するが、目の前の人の必死な叫びに、俺の鈍った本能が反応して咄嗟にその場にかがみ込む。
『ビュツ』
その直後、俺の頭があった位置を矢が通過する。
「えっ? あ! 嘘だろ」
訳が分からない。
俺は今さっきまで自分の部屋で寛いでいたはずだ。
それが周囲が眩しく光ったと思った瞬間景色が変わり、俺がおかしくなったのでなければ突然戦場へと投げ出された。
自分でも何が何だかわからないが、ここは戦場だとしか思えない。
周囲に数えきれないほどの武装した人間がぶつかりあい血を流し倒れている。
混乱した頭でもこれだけは理解できる。
これは本物だ。夢や劇じゃない。
周囲の土埃、血の匂い.どれもが本物であることを強烈に訴えてくる。
「若あああああ〜!!!」
次の瞬間、俺の斜め前方の騎士が何本もの矢を受けて馬上からゆっくりと崩れ落ちるのが見えた。
「お前らああああ〜! 若を囲めええええ! 決して奴らを生きて帰すな! 殲滅しろ!!!」
リーダーらしき人が大声で周囲に指示を出すと、周囲の人たちが一斉に押し上げ落ちた騎士の周囲を固めて、圧力を強め前方の敵を蹴散らしていく。
俺は、訳もわからず、混乱の中ただその場で成り行きを見守ることしかできない。
それから。俺は自分の身を守ることに必死でどれだけの時間が経過したのかもわからないが、気がつけば、先ほどまで戦っていた前方の敵は消え去っていた。
正確には前方にいたのが敵かどうかさえわからない。
「どうだ?」
「……残念ながら」
「そうか。とにかく今は隠せ」
リーダーらしき人が周囲を見回すが、なぜか俺のところで視線が止まった。
「おまえ……。名は何という?」
「え!? 俺ですか?」
「ああ、お前だ」
「俺は、レイシア・ガルディナです」
「ガルディナ……レイシアとは知らぬ名だが、その風貌は……。髪が短く少し線が細いが」
「いや、あの……」
「レイシア、とりあえず今は急を要する。若の鎧を身につけてシュテルンにまたがれ」
「あの、えぇと……」
「ユンカー、頼んだぞ」
「はい、お任せください」
なにがなんだかわからないまま、ユンカーと呼ばれた人に手伝われて、先ほどの騎士が身につけていた血のついた鎧を身につけさせられ、馬に乗せられてしまった。
「とりあえず、本陣へと戻るぞ。レイシアもついてこい」
「はい……」
状況は全くわからないが、このままここにいてもどうしようもない。
このまま留まる事がよくないことだけは理解できるのでおとなしくついていくことにする。
馬にはそれなりに覚えがあるが、これだけの装備を身につけて騎乗したことはないので移動するだけでも大変だ。
しかもこの鎧、かなり血がついていて正直かなりイヤだが、とてもじゃないがそんなことを言い出せる雰囲気ではない。
なぜか周りを騎士らしき人たちに囲まれたまま、俺はその場を後にし、目的地らしいテントを張った陣営へと連れて行かれた。
「ここへ入れ」
そう言われて入ったテントには、先程俺を先導したリーダーらしき人の他に4名と、奥にはこの鎧の持ち主だった騎士の遺体が横たわっていた。
あとがき
重厚な戦記物を目指して書き始めましたが……
海翔が書くと、冒頭からうす〜くなってしまいました。
もう開き直りました。
全ての薄味ファンタジー好きの読者に贈る、薄味ファンタジー超大作開幕です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます