越えられない壁で僕らの幸せは・・・(黒凪の話)

綾瑪 東暢

先輩

良いんですか?

 俺がまだ当主ではなかった頃。

 

 僕はつなぎ 時咲とさと言う婚約者がいた。親の決まりでの言わば政略結婚。別に両方好きと言う感情はなかったと思う。僕も好きではなかった。ただのパートナー、親が強制的に付けた・・・ただの相方。

 それに僕は高校に入り、好きな人が出来た。それは委員会の先輩だった。昔から僕だけに良くしてくれていつも「お前は後輩の中で一番優秀だよ。」と言って頭を撫でてくれた。僕は嬉しかった。初めてのことで少しだけ動揺もした。

 僕は親に褒められたことがない。出来て当たり前、出来て当然。

 それが親の言葉。でも先輩は褒めてくれる。よく頑張った。誇りだ。今度は俺の手伝いもしてくれ。そう言って僕に言われ慣れていない言葉を掛けてくれる。僕はもうずっと先輩のことが大好きだった。でも先輩は一つ上、来年にはこの学校を去ってしまう。

 

 だから卒業式の日、僕は恥ずかしがりながら言った。

 「先輩、稚隼ちはや先輩!俺、ずっと憧れていて・・・いや、あの!好きです。俺、ずっと先輩のこと好きで・・・婚約者いるのにダメですよね・・・すみません、これだけ伝えたかっただけなので・・・失礼します。」

 僕はその場を逃げようとした。そしたら先輩が俺の手を掴んだんだ。

 「待って、待ってくれ!俺もお前のことが・・・でもお前には婚約者がいて、俺には到底届かないと思った!でもお前も・・・俺のこと・・・」

 そう言いながら顔を赤く染めて言っている先輩がなんだかすごく・・言葉に表せないぐらい、好きでそれで・・・

 僕は先輩と付き合った。毎日のように連絡して、遊びに行ってとても楽しかったし、一線だって越えた。  




 こんな幸せもう続かないのかもしれないでも、先輩と付き合っている時だけは幸せであって欲しい。それが、たった今の願い。お願い、お願い、もし、この世界に神様も仏様もいるのなら叶えて、叶えて欲しい。お願いだから、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る