第5話
俺たちは夜十二時くらいまでテレビを見た。バラエティー番組は本当につまらなかった。大食い、クイズ、整形がばればれのアイドル、いつも同じようなお笑い芸人、グルメ。昔からこんな風だっただろうか。時間がもったいなく感じて仕方がなかった。
その後、ケイと一緒にキッチンで歯磨きをした。
「家でちゃんと歯磨きしてた?」
病院に一度も行ってないなら、何となく歯が虫歯だらけのような気がした。
「うん。してたよ」
「そっか。新しい歯ブラシあるから、使いなよ」俺は電動歯ブラシだが、ケイの分を何本か買っていた。
「うん。歯磨き粉は何?」
「うーん。なんていうんだっけ」
俺が使っているのは歯槽膿漏を予防する辛い歯磨き粉だ。ケイは苦手かもしれない。
「あー。ごめん。子ども用のはないんだ」
「じゃあ、何もつけないで磨くよ」
ネグレクトされていた割には歯磨きだけはしていたのか…風呂も一人で入っていたし、身の回りのことはできていたようだ。助かった。おじさんの面倒なんてみたくない。ケイは普通に歯を磨いていた。子どもみたいに口を開けて磨くのではなく、ちゃんと口を閉じて。その姿が妙に大人びていた。
一応、動画に取ったけど、それは使えそうになかった。イメージと違い過ぎたからだ。
その後は、寝る前に部屋に案内した。シングルベッドが置いてあるだけの殺風景な部屋だ。カーテンはフリマサイトで安く購入したもので、長さが合っていなかった。
「うわー。きれいな部屋」
「そうかなぁ。まだ物がないから…今度、ケイ君好みのインテリアにしような」
「うん!じゃあ、ポケモンがいいな」
「ああ、いいよ」
内心面倒くさいと思いながらも、ポケモンの布団でも買ってやろうと決めた。YouTubeに出演してくれるんだからお礼をしなくてはいけない。
「じゃあ、お休み」
「えー。行っちゃうの?」
俺は苦笑いしながら自室に入った。どんな相手でも慕われると嬉しいもんだ。日帰りで遠方まで行ったから疲れていた。ケイは朝が早いみたいだから、今日は何もせずにそのまま寝ようと思った。
俺が部屋に入ってどのくらい経っただろうか。カチャっとドアを開ける音がした。
「お兄ちゃん。一緒に寝ていい?」
「あ、うん。いいよ」
俺は眠かったし、大人の男だけど、心は子どもだからと受け入れた。
イケメンが隣で寝ていると思うと、ちょっと緊張した。甘えて抱き着いて来たりしたらどうしよう。俺は不安だったが、彼はちょっと離れて寝ているだけだった。まるで弟ができたみたいだ。誰かの世話をするのも悪くない。俺はそう感じていた。
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