第1部エピローグ 無人島生活11日目
――翌朝。
リフォームしたばかりの家の中に寝かせていたエルフィーネの寝息は、大分穏やかになっていた。
一応、何かあったら困るからと思って、俺も床の上にクッションになりそうなものを敷いて寝ていた。
そんな俺たちの側にはクーンもいる。
彼女はいつの間にか俺の腹の上で寝ていたらしく、目が覚めるなり、人の顔をペロペロ犬みたいに舐めてきた。
「ちょ、止めろよ」
エルフィーネを起こさないように小声で文句を言ったのだが、俺の気遣いは無意味だったようだ。
「ユキ……」
俺と同じように床にクッション材を敷いて寝ていたエルフィーネが、ぱっちりと瞼を開いて俺のことを見つめていた。
「あ……おはよう。具合はどう?」
「はい……大分、気分もよくなってきました」
「そうか。よかった。それならしばらく寝てればよくなりそうかな?」
「はい。お陰様で……ですが、その……本当に申し訳ありませんでした」
「いや、エルが謝ることじゃないよ。こうなったのも全部、俺が無理させたのが悪いんだし」
「……違います。ユキは何も悪くありません。私がもう少し体調管理をしっかりしていれば……」
顔を曇らせ、辛そうに黙り込んでしまうエルフィーネ。
俺は慌てる。
「そんなことないよ。エルはちゃんとよくやってたよ。君は何も悪くない」
「ですが……」
このままでは永遠に押し問答が続いてしまいそうだった。
俺は急いで話題を変えた。
「はい、この話題はここまで――というわけで、エル? 朝ご飯は食べられそう?」
「……はい」
「じゃぁ、今日は俺が準備するよ。以前作った猪の燻製肉も沢山残ってるしね。野菜とかもエルに教えてもらって色々わかってるし、適当に取ってきてさくっと作るよ」
「わかりました……よろしくお願いします」
「うん」
俺はそう返事をして立ち上がろうとしたのだが、突然、エルフィーネが俺の腕を掴んできた。
「どうしたの?」
「は、はい。あの……少しだけでいいんですけど……」
「うん」
「その……ぎゅってしてもらえませんか?」
「へ?」
俺は頬を赤く染めた彼女が何を言っているのかいまいち理解できなかった。
一人困惑する俺をよそに、エルフィーネは恥ずかしそうに続ける。
「昨日……意識が朦朧としていてあまりよく覚えていないのですが、ユキに抱きしめてもらったときに、なんだかとても心が楽になった気がするんです。ですからその……お願いします。まだ身体が重くて、少しだけ息苦しいんです」
「だから、気分を落ち着けたいから、してってこと……?」
「はい……」
「そ、そういうことなら……仕方がないか……」
なんだろう。
俺、今どういう状況に置かれているんだろうか?
どこかぼーっとした眼差しを向けてくるエルフィーネから、目をそらせなくなっていた。
いつもだったら照れくさくなってすぐに視線を外してしまうのに、今日は金縛りにでも遭ったかのように、まるで身体が言うことを聞いてくれなかった。
俺はエルフィーネの要望を叶えるために、普段だったら逃げ出したくなるような状況だったのにもかかわらず、心臓が破裂しそうなほど鼓動を高鳴らせながら、彼女を上から抱きしめた。
彼女もすぐに両腕を俺の背中へと回してくる。
とろんとしたエルフィーネの碧く澄んだ双眸が、俺の瞳を食い入るように見つめてきて、そして、目が閉じられた。
それを受け、俺が生唾を飲み込んだときだった。
「おっはよぉ~~! ……て、あんたたち、朝から何やってんのよっ」
例によって森側の壁に開いた窓から飛び込んできたミューミルが、開口一番絶叫した。
――こうして、いつものように、俺たちの決して緩くない無人島
【第一部あとがき】
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
面白かったよ~と思ってくださった方は、引き続き、この後に続く物語もお楽しみくださればと思います(ぺこり
さて、この後のお話ですが、少し、変則的になります。
まず、第二部が始まる前に、『第一部外伝(全五話)』が入ります。
エピソード数でいうと八話ぐらいのボリュームとなります。
内容は外伝や閑話という立ち位置のため、第一部以上にクラフト(開拓、開発)やラブコメ(恋愛)ネタが中心となりますが、一応は第二部までの補完エピソードとなっています。
ですので、外伝ではありますが、まるっきり本編と切り離した別物のお話というわけではございませんのでご安心ください。
それから、ついでに第二部以降のお話もさせてください。
第二部からは、とある要素が追加となりますので、第一部より少しだけ賑やかになるかもしれません。
更に、探索要素やクラフトネタも増えますので、戦闘シーンが少しだけ本格的な感じになっているかも? しれません。
魔法名とか色々?
ともあれ、そんな感じになって行きますので、引き続き、応援のほどよろしくお願いします(ぺこり
また、★などもいただけると、より一層、多くの方々に読んでもらえるようになり、本作が今まで以上に盛り上がっていけるようになりますので、少しでも面白いと思っていただけましたら、お気軽にポチッとしてやってください(笑
それが私含め、作品を生み出しているすべての作者にとっての、何よりの報酬となりますので(笑
なお、★ボタンを押してみたいけど、やり方がわからないという方のために補足しておきます。
作品トップページの下の方か、もしくはこのページ(最新話)の最後の方にある『+』を何度か押すだけです。
簡単ですので、色んな方々の作品を読んでいて気に入ったものがありましたら、お気軽にポチってして上げてください。
多分皆喜ぶと思います。
ちなみに、三回押すと★★★、四回押すと★に戻ったと思います、多分(笑
以上蛇足でした(ぺこり
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