再開に向けて
第93話 久しぶりの進行協議 1
2023年9月10日未明。日曜日の朝。
老紳士が、かの若者のもとへやって来た。
「米河さん、この2週間お休みされておる間、かなりいろいろされたようですな」
「はい。思うところありまして、ひとつ、仕事を立ち上げようと思いまして」
「それは大いに結構。どんな仕事であるかは問わぬが、準備に余念がないようで」
「ええ。パソコンの機能をかれこれチェックしながら、やっています」
「その2台のパソコンは、貴君にとっては商売道具じゃからな」
「ええ、確かに」
ここで老紳士が、突如、生前よく使っていた言葉を引合いに出してきた。
「ところで、君の今やろうとしていることも、「手に職」ではないかな?」
「てにしょく、ですね。確かに」
「米河清治の表現云々というのは確かに、一身専属にかかる媒体であろうが、それを生み出す技術という部分においては、確かに、手に職の要素が強くあるように思われるが、気のせいであろうか? 確かに、私の生前のことを思えば、その形態は全く以て異なるし、まして貴君の仕事となれば、なおのこと手に職という言葉の正反対のようなところにあるとは思われるが・・・」
「確かに、そうですね。ワープロ機能を使って、さらにさまざまなソフトを用いて電子書籍やPODといった形態での出版物を作り出すということは、手に職をつけて行うべき仕事であるというのは間違いないですね」
少し間をおいて、森川氏が用件を切り出す。
「さて、そろそろ再開せねばならんのう」
一方の米河氏は、そのこと自体には、異論はない。
「その点には異論はありません。しかしながら、ここでひとつ、次の争点を明らかにすべく、多少の時間はかかっても、進行協議をした方がよろしいのではないかと思いますが、おいかがでしょうか?」
「それもそうである。その点につき、数日整理の上争点を明らかに使用ではありませんか。そうじゃな、あなたの誕生日である明後日の翌日、13日の未明にその点について話すというのはどうか」
「差しさわりはありません。その日取りでお願いいたします」
かくして、論争再開に向けての動きが出始めた。
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