第二十八話、vs盗賊団にゃ

「にゃ、お前等の相手あいては僕にゃ!かかってるにゃ!」

 そう言って、僕は盗賊達を相手に挑発ちょうはつする。その挑発に、盗賊達は各々口元に歪んだ笑みを浮かべておそい掛かる。どうやら、僕を其処そこらのか弱い猫獣人だと舐めてかかっているようだ。

 舐めてかかるならそれでかまわない。その慢心まんしんを突かせて貰う。

 僕は猫獣人特有の瞬発力と嗅覚、そして聴覚のするどさを最大限に利用して盗賊達の攻撃を捌き切り次々とかえり討ちにしていく。だが、やはり妙だ。盗賊の中にどうしても獣人特有の嗅覚と聴覚に引っ掛からない者が居る。

 やはり、どういう訳かはらないけど獣人族の嗅覚と聴覚をごまかす何かをしているのは確かだろう。何らかの技術的な物か、或いは異能スキルや魔術的な超常か。

 ともかく、僕の嗅覚や聴覚はあてにならないらしい。

 だが、もちろんそれに対する対策たいさくは既に用意している。僕は目の前の脅威に対して何の対策も取らない程に愚鈍ぐどんではない。

 僕の背後から、盗賊の一人が手斧ておので切り掛かる。もちろん、僕の嗅覚にも聴覚にも何の反応もしていない。完全に知覚外ちかくがいからの攻撃だった。

 だけど、その全く近く出来ない筈の攻撃を僕は完璧にさばいてみせた。

「何だと⁉」

「にゃ!僕をめるにゃ!」

 次から次へとり出される盗賊達の知覚出来ない攻撃。だが、それを僕は次々と完璧なタイミングで反応して捌いて見せる。

 獣人族の鼻でも耳でもとらえる事の出来ない敵。だが、どうやら姿を完全に消すようなステルス性は無いらしい。なら、方法はあるだろう。

 僕はケットシー族だ。その種族特有の能力は他種族と会話かいわを成し心を通じ合わせる事が出来ること。今回は、その能力を全面的に利用りようさせて貰う。

「くそっ、何故なぜだ!何故奴は俺達の居場所いばしょが分かるんだ!」

「教える訳が無いにゃ!お前達は此処でたおすにゃ!」

「くっ!」

 たねを明かすと、僕達の周囲の至る所に野生の獣にかくれて貰っている。事前に野生の獣達と交渉してひそんで貰ったのだ。

 そして、獣達からこっそり僕の知覚外からの攻撃を教えて貰う事により僕はその攻撃にいち早く反応出来ているという訳だ。

 そこまで分かれば、後は猫獣人の瞬発力で十分に対応出来るだろう。

 そうして、盗賊達は僕が知覚外からの攻撃に反応出来る仕組みを何一つ理解出来ないまま次々と猫獣人特有の瞬発力で翻弄ほんろうされていき。やがて最後の一人も木製の棍棒により殴られ意識をり取られた。

 どうやら、カルロの方もそろそろわりそうだ。この様子ようすでは僕が手を貸す必要はないだろう。そう思い、僕は今回の戦いで手伝てつだってくれた猪や鹿、そして小鳥達に礼を言う事にした。

 彼等の手助けが無ければ、今回の勝利しょうりはありえなかっただろう。

 ……まあ、報酬としてえさをたかられるだろうけど。思わず僕は苦笑した。

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