閑話
「父上、あの後フィードはどうなりましたか?」
「2人の時は俺の事を、昔みたいにパパと呼んでいいんだぞ」
「父上」
メルリーンとヴァルターは、執務室で対面していた。
「娘が冷たい。.......なんと、フィードは使用人としてうちで雇ったんだよこれが!」
「えっ!」
薄っすら頬を染め、喜色を滲ませる。その顔を見たヴァルターは企みが成功した事へにニヤニヤする。
「もしかしたらどっかで会うかもなぁ。おや、どうした?嬉しそうだなぁ?」
「んんっ!....恩人に再び会えるかもしれないのです。..喜んだりくらいします」
「ヘェ〜。そうか」
そのうざったらしいその口調は本来なら殴りたくなるのだが、今のメルリーンはルイの事を考えてそれどころでは無かった。
久しぶりに父親らしい事。もとい、娘の恋愛の後押しに携われている自分自身をヴァルターは誇っていた。
俺、今父親やってるわ
「そう思ってたんだよ。..現状況のお前を姿を見るまではなぁ」
「へぇー。....あっ、これ、美味し」
「後で料理人に感謝しておきなさい」
のどかな空の下、開けた庭で女子会ならぬ男子会が行われていた。3人のメンツの内、2人はオッサンの為”男子”会とも呼べない代物ではあった。
「何でお前メイドになってんだよ。ロス、お前も何で容認したんだよ。そういう
「違います」
時間帯はおやつ時。華やかなガーデンに白い机と椅子は、似合わない奴がいる。
「探しても影も形もないって白い目で見られたんだぞ!かと言って今メイドになってるなんて言えねぇだろ!どうしてくれんだよ!!」
「へぇー」
「そうでございましたか」
「.....お前ら興味無さ過ぎだろ。無礼講でいいって始まる前に言っけど、あくまで名目上だからな。完全に失礼なのやめろ」
「「……」」
『いつも無礼だから今更』、2人ともそんな風に思っていた。
「そんな事より、魔王様とロスさん、付き合い長い?」
「そんな事で片付けんな」
露骨にルイは話を逸らす。
「ええ。ヴァルター様が生まれる前、先代よ国王陛下の時から今の職に勤めています」
「おい無視すんな」
ロスもルイに乗っかる。
「ヘェ〜そうなんだ。..スーレアさんは?」
「...」
「彼女は私が執事長以前からハウスキーパーでした。更に前から勤めていましたね」
「...」
「スーレアさん、長いんだ」
「...」
「ええ。ですので、私もヴァルター様も彼女には頭が上がりません。ですよね、ヴァルター様」
「.....そだね」
返事を求められる時以外完全に無視された魔王様は、そっぽ向いて不貞腐れた。
「..........魔王様は、何で皇女様に、僕をあてがうの?」
流石に可哀想と思ったのか、話題を最初に関連した物に戻す。
「そんなもん、、、親心だ」
「ソレまだやるの」
話を引き返してくれた事が嬉しかったのか、急に調子に乗ったヴァルターを見て、
(今からでも、話、変えようかな)
と少し思ったものの、大人気ないと判断してそのまま続ける。
「身分差とか、どうなの?」
「身分差?......ああ。向こうの国の、貴族同士の結婚のしがらみとか何ちゃらか。うちにはそんな問題はねぇよ」
「?」
「うちはな、エイドが代々君主として統治してるんだよ。それ以外は身分差なんぞねぇ。国政に携わる奴も街で働く奴も、なんなら田舎のもんも等しく臣民だ。富豪はいても貴族なんてねぇよ」
「私も、前任の方も試験の通過、信頼の蓄積でこの場に着いております。そこに血筋は有りません」
「そうなんだ」
前から疑問に思っていた事は、根本から乖離していた為だった。
「そういうこった。まぁ一部の役職は後継者を作って引き継ぎするから、全部が全部試験あるわけじゃねぇがな」
「ふぅ〜ん。.....じゃあ、皇族の結婚相手って..」
「そいつが見初めた奴になるなぁ。..どうだ、なるか?」
「ならない」
「娘の何処に不満があるんだ。言ってみろ!」
「品格に欠けていますよ、ヴァルター様」
その後も”お茶会”は人知れず続く。
▪️ ▪️ ▪️
「フィードはここで働いているって聞きましたけど、アルシアは見ましたか?」
「いえ、見たません。姫様」
「…見たません?」
「..............失礼、噛みました。見てません」
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