李元護他 爾朱栄がいた

李元護りげんご遼東郡りょうとうぐん襄平県じょうへいけんの人だ。八代前の先祖は李胤りいんしん司徒しと廣陸侯こうりくこうである。李胤の子の李順りじゅん李璠りはん、そして孫の李沉りじょう李志りしはいずれも名臣であった。李沉の孫の李根りこん慕容寶ぼようほうのもとで中書監ちゅうしょかんとなった。李根の子の李後智りこうちらは慕容德ぼようとくとともに黄河こうがを渡り青州せいしゅう入りしたが、以降のもので高位についたものもなく、三齊の豪門たちの多くからは軽んじられた。そうした環境から李元護のし上がり、502 年夏に 51 歳で死亡した。


王世弼おうせいひつ京兆郡けいちょうぐん霸城県はじょうけんの人だ。劉裕りゅうゆう姚泓ようおうを滅ぼした時、王世弼の祖父は劉裕に連れられ南遷した。王世弼は 520 年に現役のまま死亡した。


江悅之こうえつし、字は彥和げんわ濟陽郡さいようぐん考城県こうじょうけんの人だ。七代前の先祖は江統こうとうしん散騎常侍さんきじょうじである。劉淵りゅうえん石勒せきろく西晋せいしんを襲ったため長江ちょうこうを渡った。祖父の江興之こうこうし、父の江範之こうはんしはともに劉裕に殺された。江悅之は 505 年夏に 61 歳で死んだ。



爾朱栄じしゅえい、字は天寶てんほう北秀容きたしゅうようの人だ。祖先が尒朱川じしゅせんに住んでいたため、姓とした。爾朱氏は代々部民の酋長であった。高祖父の爾朱羽健じしゅうけん拓跋珪たくばつけい魏王ぎおうを名乗り始めた頃に多くの部民らを糾合、契胡きっこ武士 1700 人を引き連れ拓跋珪の晉陽へいよう中山ちゅうざん攻略に従軍。その功績から散騎常侍さんきじょうじに任じられた。のちに秀容川しゅうようせんに住まい、拓跋珪よりは 120km 四方の土地が与えられた。拓跋珪ははじめ南秀容の川原が肥沃であるからと爾朱羽健に与えようとしたのだが、爾朱羽健は答えている。

「臣の家は代々お国に奉職して参り、近侍をも賜りました。北秀容は既に我が住まい、また平城へいじょうにもやや近く、ならばどうして肥沃であるからと遠隔の地に出向けましょうか」

拓跋珪はその表明を受け入れた。

爾朱羽健らが住まう地には、かつて犬が地面を舐めていた箇所を掘ると甘い水が湧いた、と言う伝説のある泉があり、狗舐泉くしせんと名付けられていた。

爾朱羽健は拓跋燾たくばつとうの時代に死亡。その子孫である爾朱榮は、いろいろあって 530 年、38 歳で死んだ。



祖瑩そえい、字は元珍げんちん范陽郡はんようぐん遒県しゅうけんの人だ。曾祖父は祖敏そびん慕容垂ぼようすいのもとで平原太守へいげんとなった。拓跋珪が中山を平定すると、安固子あんこしに封じられ、拜尚書左丞しょうしょさじょうに任じられた、死亡すると并州刺史へいしゅうししが追贈された。祖父の祖嶷そぎょう、字元達げんたつ平原へいげん討伐に従軍し功を挙げ、侯に進み、馮翊太守ひょうよくたいしゅに任じられた。死亡すると幽州刺史ゆうしゅうししが追贈された。父は祖季真そきしん。知識多く、有言実行の人であった。中書侍郎ちゅうしょじろうとなり、安遠將軍あんおんしょうぐん鉅鹿太守きょろくたいしゅとして死亡した。祖瑩は 535 年頃に死んだ。




李元護,遼東襄平人。八世祖胤,晉司徒、廣陸侯。胤子順、璠及孫沉、志,皆有名宦。沉孫根,慕容寶中書監。根子後智等隨慕容德南渡河,居青州,數世無名位,三齊豪門多輕之。元護景明三年夏卒,年五十一。

王世弼,京兆霸城人也。劉裕滅姚泓,其祖父從裕南遷。世弼正光元年卒官。

江悅之,字彥和,濟陽考城人也。七世祖統,晉散騎常侍。劉淵、石勒之亂,南徙渡江。祖興之,父範之,並為劉裕所誅。悅之正始二年夏卒,年六十一。

(魏書71-1)


尒朱榮,字天寶,北秀容人也。其先居於尒朱川,因為氏焉。常領部落,世為酋帥。高祖羽健,登國初為領民酋長,率契胡武士千七百人從駕平晉陽,定中山。論功拜散騎常侍。以居秀容川,詔割方三百里封之,長為世業。太祖初以南秀容川原沃衍,欲令居之,羽健曰:「臣家世奉國,給侍左右。北秀容既在剗內,差近京師,豈以沃塉更遷遠地。」太祖許之。所居之處,曾有狗舐地,因而穿之,得甘泉焉,至今名狗舐泉。羽健,世祖時卒。榮永安三年死。時年三十八。

(魏書74-1)


祖瑩,字元珍,范陽遒人也。曾祖敏,仕慕容垂為平原太守。太祖定中山,賜爵安固子,拜尚書左丞。卒,贈并州刺史。祖嶷,字元達。以從征平原功,進爵為侯,位馮翊太守,贈幽州刺史。父季真,多識前言往行,位中書侍郎,卒於安遠將軍、鉅鹿太守。瑩天平初薨。

(魏書82-1)




「その他の人物の先祖」の中にしれっと交じる爾朱栄のご先祖、が結構分厚かった。さすがに書き残されるんですねー。他の人物たちの先祖だって残ってたでしょうけど、ならどれだけ史書に保管するに値するか、的なね。いやほんと全員分残していただきたいですが、選択と集中は必要ですよね。悲しいけど。


とは言えうちの領分は北魏黎明期なので、爾朱栄がいくら大物でもここまでなのだ。

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