刁雍2  やらせろコラ

拓跋嗣たくばつし奚斤けいきんらによる劉宋りゅうそう攻めのケツをひっぱたくためぎょうまで出てきたとき、刁雍ちょうようは初めて拓跋嗣と面会した。


拓跋嗣が問う。

「そなたの家のもので劉裕りゅうゆうを縛り上げたものがいたそうだな。近親のものであったか?」

刁雍が答える。

「臣の伯父、刁逵ちょうきにございます」

拓跋嗣は大いに笑う。

「劉裕親子がそなたを憚るはずよ!」


続けて拓跋嗣が言う。

「朕は先に叔孫建しゅくそんけんらに青州せいしゅうを攻めさせて追ったのだが、民はことごとく逃げ隠れし、城もいまだ落とせておらぬ。てきはもともとそなたの威徳を憚っており、当地の士民もまたそなたに信服を委ねておる。なのでそなたには青州に赴き、叔孫建らを助けてもらいたく思う。よろしく励まれよ」

こうして刁雍には仮官位として鎮東將軍ちんとうしょうぐん青州刺史せいしゅうしし東光侯とうこうこうが、兵力として五万騎があたえられ、さらに現地で兵力を募るよう命じられた。叔孫建はこのとき東陽とうようを攻めていたが、刁雍が合流し、劉宋軍打倒の兵を募ると五千人が集まった。更に周辺郡縣に慰撫の兵を巡らせると、現地人はことごとくが傘下に入り、軍資や兵士を供出してきた。


東陽攻めにて、北壁の上にある城の周辺三十步ばかりの領域を制圧することが叶った。城壁の上から見れば、このとき守将の竺夔じくきは、城內から地下に道を通し、南方を流れる澠水べんすいのほとりに通じさせる退路を作っていた。

それを知った刁雍が叔孫建に言う。

「この城はもはや落ちたようなもの。ここで一気に攻め入りましょう、それをせねば、敵をみな逃してしまいます」

叔孫建は兵士たちを損耗させることを嫌がり、この提案を渋った。そこで刁雍は言う。

「官兵の損耗がお嫌なのであれば、ここで募った兵のみを率い、刁雍のみでまいりましょう」

叔孫建は却下した。


竺夔が東方に脱出しようとしていたところ、南方からは劉宋屈指の名将である檀道濟だんどうさいらが青州の救援に動き出した、との報が入る。刁雍が叔孫建に言う。

「賊は将軍率いられる騎兵の威力を恐れ、車を鎖でつないだ函陣を築いて進んでおります。やつらはまだ大峴たいげい山の南におり、これから手狭な峠道に差し掛かります。函陣は平地でのみ機能するもの、峠道では用をなしません。ならばこの刁雍に義兵五千を率いさせてください。峠道にて奴らを迎え撃ってご覧に入れましょう」


しかし叔孫建は却下し、言う。

「我軍の兵はこの地の風土や水になじまず、過半数が疫病に倒れたありさまである。このまま兵役を進めてしまえば、放っておいてもほとんどの兵が死んでしまう。これ以上どう戦いを続けようというのか。いまは大軍を損耗させぬよう、万全を期し撤退するのが上策である」

こうして叔孫建は軍を引いた。




八年,太宗南幸鄴,朝於行觀。問:「先聞卿家縛劉裕,於卿親疏?」雍曰:「是臣伯父。」太宗笑曰:「劉裕父子當應憚卿。」又謂之曰:「朕先遣叔孫建等攻青州,民盡藏避,城猶未下。彼既素憚卿威,士民又相信服,今欲遣卿助建等,卿宜勉之。」於是假雍鎮東將軍、青州刺史、東光侯,給五萬騎,使別立義軍。建先攻東陽,雍至,招集義眾,得五千人。遣撫慰郡縣,土人盡下,送租供軍。是時攻東陽,平其北城三十許步。劉義符青州刺史竺夔於城內鑿地道,南下入澠水澗,以為退路。雍謂建曰:「此城已平,宜時入取。不者走盡。」建懼傷兵士,難之。雍曰:「若懼傷官兵者,雍今請將義兵先入。」建不聽。夔欲東走,會義符遣其將檀道濟等救青州。雍謂建曰:「賊畏官軍突騎,以鎖連車為函陣。大峴已南,處處狹隘,不得方軌。雍求將義兵五千,要嶮破之。」建不聽曰:「兵人不宜水土,疫病過半。若相持不休,兵自死盡,何須復戰。今不損大軍,安全而返,計之上也。」建乃引還。


(魏書38-2)




うわあ、これは刁雍さんマジおこ案件ですね……「オメーがこっちの進言シカトしたからこんな有様になってんじゃねーか」くらいは言いたくなっていそうです。ただまぁ叔孫建はこの世代の北魏将としてトップクラスですし、どこまで刁雍の言葉に妥当性があったかも疑って掛かるべきところ。そしていつもの話になりますが、「こんなん自創作の都合に合わせていくらでも解釈してしまえばいい」。全部これ。


いやー、これも繰り返しになりますが、この巻現行の三十倍ほしいです。五十倍でもいいよ。

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