After of The Dragon

木造二階建

 かつて厄災があった。神々は自分達が作った世界を試すために、あるいはいたずらのために、パンドラの箱を開け、ドラゴンを呼び覚ました。

ドラゴンは村を襲い、街を襲い、人間を襲った。人間だけでなくエルフやドワーフといった様々な種族の厄災となった。

 人間は神に祈り勇者を見出し、この厄災を止められるものを探した。

 勇者はエルフやドワーフなどの異種族を含めた仲間を引き連れドラゴン退治の旅に出て、行く先々で多くの人々を救い、ついにはドラゴンを倒し、その力を封印した。しかし封印は完璧ではなく、およそ百年ごとに封印が解かれ、ドラゴンは復活してしまう。

人々はそのたびに勇者を見出し、厄災と対峙してきた。一度厄災が封印されると、人々は厄災を忘れないように言い伝え、記録に残した。

 時は流れ、数百年後の厄災で一人の若者が勇者として見出され、旅の末にドラゴンを封印した。

 人々はこれを忘れまいと、教会は勇者を見出すお告げを得る能力に長けた神官を育成して、その能力が失われないよう後世に伝える仕組みを作った。

 神官の見習い達は、一人前となる最後の試練として、ドラゴンが封印された聖地まで旅をして帰ってくるという試練が課されるようになった。

 国の中心都市の教会が認めた屈強な冒険者や腕の立つ魔法使いがギルドから派遣され、彼ら彼女らの護衛として旅に出た。

 今回の試練にも数人の司祭見習いが身を投じることとなった。その中で一人、護衛の決まらぬ少女がいた。彼女は護衛など必要ない、自分の力で試練を越えなければ意味がない、といって頑なだった。


 教会の司祭である年老いた司祭が、一人の初老の男の元を訪ねた。男は残り短いであろう余生を緩やかに過ごしていた。

 司祭は男の家のドアをノックし、ドアを開けた。男は机に向かって書き物をしていた。机の脇には多くの書物が積まれていた。

 司祭は厳かな口調で、そして尊敬を込めた声で言った。

「お久しぶりです」

 男は司祭の声を聞き、我に帰ったかのように顔をあげ、椅子から立ち上がり、振り向いた。

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