第161話 事後処理
「あいたたたた……」
腰を擦りながら起床する。
時刻は朝7時、隣にはリンが幸せそうな顔でスヤスヤと眠っている。
ふと悪戯心が湧いてきて気持ちよさそうに眠っているリンの唇に触れるだけのキスをしてみる。
瞬間、リンの目がカッと見開かれた。
「お、おはよ――」
言い終える前に景色が変わった――
「なっ……!?」
何が起こった? 今の今まで俺はリンの寝顔越しに部屋の扉を見ていたはず……
なのに何故今俺の目には天井が映っているのか?
そして……そして何故リンは俺に跨っているのだろうか?
俺が、【
「おはようレオ。レオがいけないのよ?」
「え? ちょ、え? ちょちょちょ!」
2時間後、少しだけ遅めの朝食と準備を済ませて自宅を出てライノス家へと向かう。
「これはレオ様、リン様、おはようございます」
「おはよう。大丈夫かな?」
「はい。中で皆様お待ちです」
門を開けてもらい玄関へと向かう。
俺たちが辿り着く前に中から開かれてメイドの出迎えを受ける。
「レオ様、リン様、お待ちしておりました。こちらへ」
そのまま案内され応接室へ、中ではよめーずとイリアーナ、それにアンドレイさんとアレクセイが待っていた。
「おはようレオくん、リンさん」
「おはようございます」
朝の挨拶を交わして勧められたソファに腰を下ろす。
「さて……どうして昨日の朝出発したばかりなのにこんな事になったのかな?」
アンドレイさんは一見にこやかな笑みを浮かべているが目の下にははっきりとクマができていた。
「いやぁ……その……」
「流れはサーシャから聞いているよ。せめて行動に移す前に確認して欲しかったよ……」
「すみません……」
かなり疲れてるっぽいな。隣のアレクセイも疲れたような表情をしていることから夜通し対応に当たっていたのだろうと予想出来る。
「まぁ、ノーフェイスの壊滅は喜ばしいことだ。年々奴らによる被害は大きくなっていたからな」
「今まで捕まえられなかったんですか?」
あれだけ大規模な組織だ、討伐隊が組まれてもおかしくないと思うんだけど。
「恥ずかしい話だが、教国貴族でノーフェイスと繋がっている者も居てね……なかなか上手くいかないのさ。それにノーフェイスの団員は強い者が多い。中途半端な戦力では返り討ちにあうことが目に見えていたから中々手が出せなかったんだ」
犯罪組織と国家権力の結び付きね……
「噂だが、ノーフェイスの頭目はレベル50を超える中位職だと言われていた。まぁこれは昨日の尋問で事実だと分かったけどね」
ソフィアやアンナと同じか少し強いくらいか……たしかに簡単に手を出せる相手ではないか。
「先に繋がりのある貴族を捕らえることは出来なかったんですか?」
「疑惑、というよりほぼ間違いないであろうと言うところまでは調べが着いたが明確な証拠がね……これから奴らが口を割ったとして逮捕出来るかどうか……」
証言だけじゃ足りないのか。
そういえば……
「アンドレイさん、まだ確認はしてないですがそれっぽい資料なら押収してますよ」
「なに!?」
アンドレイさんは勢いよく立ち上がる。
「今出すことは出来るかい!?」
「出せますけど……多いですよ?」
それなりに大きな本棚2つ分だからね。
もちろん本棚ごと【無限積載】に積み込んでいるからそのまま出せる。
「それなら城で……いやそうすると息のかかったものが紛れ込むかもしれんな……」
「父上、私の方で確認しておきます」
「ふむ、やはりそれが一番か……よし、お前に任せよう。レオくん、後でアレクセイの執務室で出してもらえるかい?」
「もちろんです。それと……」
「なんだい?」
「資料以外に押収した物はどこに提出すればいいですかね?」
警備隊詰所かな? それとも城に持っていった方がいいのかな?
「ああ、扱いに困るものがあるなら国で引き取るが原則所有権はレオくんにあるから好きにするといいよ」
「え?」
渡さなくていいの?
「盗賊団を壊滅させたなら盗賊団の所有物は壊滅させた者に所有権が移るんだよ。そういう風にしておけば冒険者や賞金稼ぎが盗賊団を潰してくれやすくなるからね」
なるほど……
ただ、貴族である俺には盗賊団に掛かっている懸賞金は貰えないらしい。
俺の場合オリハルコンランク冒険者ですってゴリ押せば多分貰えるらしいけど、それはさすがに……
「そういうことだから貰っておけばいいよ。たださっき言った資料や貴族との繋がりを示す証拠品なんかは譲って欲しいかな」
「それはもちろん」
貰えるものは貰っておこう。使用人の給料なんかも払わないといけないから入用なんだよね。
それから後で一応貴族の家紋とか入ってるものが無いかだけ確認しておこう。
アレクセイの執務室に押収した本棚を置いて後のことはアンドレイさんとアレクセイに任せる。
改めて別れを告げて俺たちは帝国へと再出発することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます