第97話 ゴブリンのスキル
食事を終えて帰還する。
転移の魔法陣が使用出来ないため自分の足で戻らなければならない。
とはいえ人の多い階層以外はウルトでの移動なのでそこまで時間がかかる訳では無い。
一気に5階層の安全地帯まで移動して1泊、そこからは冒険者も多いので徒歩で戻ることにした。
1時間半ほど掛けて採掘や狩りをしている冒険者を眺めながら4階層へ到着、さらに進んでいく。
「ウルト、コボルトはスキル持ってる?」
『いえ、持っていませんね。あちらのホブゴブリンもスキルはありません』
一応目に付いた魔物を【解析鑑定】でスキルの有無を調べながら進んでいく。
ギガンテスの【直感強化】のように予想外の魔物が予想外のスキルを持っていないか調べるためだ。
『マスター、スキルを保持している魔物を発見しました』
「マジか、ケイトが持ってないスキル?」
『はい、持っていないスキルですね』
4階層に出現するのはコボルト、ラッシュボア、オーク、ホブゴブリン、そしてゴブリンだ。
ホブゴブリンとコボルトはスキルを持っていない、オークも無かったはず……ラッシュボアは行きで調べて【疾風】を所持していることはわかっている。
つまり……
「ゴブリン?」
『はい』
ゴブリンってスキル持ってるんだ……ホブゴブリンやゴブリンキングは持ってない……そういえばゴブリンキングのスキルは調べてなかったな。
「ゴブリンがなんのスキル持ってるんだ?」
『その……』
ウルトが言い淀むなんて珍しいな……
「クリードくん変な顔どうしたの?」
「そんな変な顔してた? なんかゴブリンがスキル持ってるらしいんだけどなんのスキルか教えてくれないんだよね」
今は歩いてるからウルトとの会話はイヤホン越しの会話だ。
なのでみんなに会話の内容は聞こえていない。
「まぁスキル持ってるなら行ってくるよ!」
ケイトは颯爽と駆け出して行きゴブリンを瞬殺、その後硬直した。
なに? なんのスキルを得たの!?
ウルトも何も言わないのでとりあえず放置してケイトのところまで進んでいく。
「ケイト、どうしたんだ?」
「クリードくん……なんでもないよ!」
顔が赤い……そんな変なスキルを獲得してしまったのだろうか?
「ウルト」
『……黙秘します』
こいつトラックのくせに黙秘権持ってるの?
ケイトもあんなだし聞かない方がいいスキルなのかね……
そこからケイトが会話に入ってくることはなく足早に迷宮から脱出した。
ちなみにウルフや角ウサギはスキルを持っていなかった。
街に戻って夕食を摂り解散、この頃にはようやくケイトもいつも通りになっていたので一安心だ。
ただスキルの話はしないので触れない方が良さそうではある。
「クリードさん!」
軽く宿の裏庭で汗を流して風呂でさっぱりしようと思い公衆浴場に向けて歩いているとディムたちと出会った。
「お疲れさん、迷宮の帰りか?」
「あぁ、クリードさんに売ってもらった魔剣はやっぱり凄いな、かなり狩りが捗ったよ、ありがとう」
新しい武器を手に入れたので5階層に挑戦してきたらしいのだが、どうやらハイオークやオーガも簡単に倒せたらしい。
とりあえず今日はロディの収納魔法に入るだけオークとハイオークの死体を詰め込んで戻ってきたそうだ。
「これでクリードさんから借りていた金も返せるよ」
「昨日の今日だし急がなくてもいいぞ?」
「いや、返せる時に返さないと」
まぁ断るのもアレなので受け取っておく。
「今から飯? 俺は公衆浴場行くんだけど暇なら一緒にどう?」
「そうだな、飯の前にさっぱりするのもいいな」
1人でのんびり浸かるのもいいが友達と喋りながら入るのもまたいい。
ディムたちと楽しくおしゃべりしながら風呂に浸かってさっぱりした。
ついでなのでディムたちの服や装備も俺の浄化魔法で綺麗にしてやる。
一応ロディも使えるらしいが適性属性では無いので消費魔力が多いらしく大変感謝された。
食事に行くというディムたちと別れ宿に戻る。
少し早いけど今日はもう寝ることにしよう……
「一度教国に戻りたい」
翌朝みんなで宿の朝食を食べている時にサーシャからこんな頼み事をされた。
理由としては勇者たちの戦力の報告。
それともし教国でも
「今までも手紙での報告はしていましたが、実際に勇者たちがグレートビートルの討伐を成功させたこともありますし、一度報告に戻りたいのです」
おそらく俺たちがオリハルコンランクに昇格したことも理由だと思う。
教国に戻れば自由に出歩けなくなると言っていたサーシャがこんなことを言い出すのだからオリハルコンランクになるということはそれだけのことなんだろうなと想像出来る。
「わかった。じゃあガレットさんに挨拶して、1回ガーシュにも顔出して行くのでいいか?」
移動するのだから一応ギルドマスターに報告はしておくべきだろう。
それにガーシュでは迷宮攻略の報酬も受け取らないといけない。
別に今は金に困ってないから……と受け取りに行かないのは向こうも困るだろうしね。
「はい、それで構いません」
「よしじゃあ食べ終わったら準備してすぐに出ようか」
食事を終え部屋の前で一度別れる。
俺の準備とかすぐ終わるからな……シャツの上に作業着を羽織ったら準備完了だ。
忘れ物がないかだけしっかり確認して部屋を出る。
女性陣はまだ準備出来てないみたいだな。
数分ほど部屋の前で待っているとみんな出てきたのでギルドへ移動する。
受付に面会を求めるとすぐに通して貰えたので執務室に足を運んで出発を告げる。
いつもすぐに通されるけど暇なのかな?
「もう行くのか……」
「まぁこっちにも色々あるからな、またそのうち戻ってくるさ」
「わかった、気をつけてな」
本当に挨拶だけ済ませて出発、まずはガーシュを目指そうか。
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