第17話 報連相
「す、すごいわねこれ……これが異世界の技術……」
「ですね……ここまでとは……」
後ろでリンとソフィアが驚いているがそれ違うから。
元の世界のトラックはこんなんじゃないから……
「あー……それでどんな話になってるの?」
「そういえば後で説明するってことだったわね……簡単に言うとゴブリンの最上位種が出現した可能性があるから急いで冒険者ギルドに報告しないといけないってことね」
ゴブリンの最上位種……キングって言ってたな。クイーンとかジャックも居るのかな?
「そのゴブリンキングってヤツはどれくらい強いの?」
「単体でもプラチナね。配下の数次第ではミスリルでもおかしくないわ」
プラチナか……上から3番目か。
1番下の俺が考えるのもおこがましいレベルだな!
「ちなみに普通のゴブリンとかホブゴブリンはどうなの?」
「普通のゴブリンはアイアンでも余裕ね。あまり鍛えていない大人なら1対1で負けることはまず無いわね。ホブゴブリンは単体でシルバーに当たるわね」
シルバーか……簡単に倒せちゃったけど俺にはシルバー相当の力があるってことかな?
いや、あまり調子に乗らないようにしないと。
「ちなみにあの数のゴブリンとホブゴブリン2体ですから先程の戦いはゴールドの冒険者でも1人では相当苦戦すると思いますよ」
え?
「つまりクリード様には少なくともゴールドの上位、下手をしなくてもプラチナくらいの力は間違いなくあるということです」
マジか……
「えーと……ちなみにみんなはどれくらい?」
「私1人ではアイアン上位くらいでしょうか? 直接戦闘はあまり得意ではありませんし……」
まぁサーシャはそうだろうな。
「自分は単体戦闘能力でいえばシルバー上位、防御に限ればゴールドの真ん中くらいだと思うッス」
「私も個人だとゴールドに届くかどうか……というくらいだと思います」
へぇ……だったら俺の方が強いって評価になっちゃうけどいいのかな?
「あたしはプラチナくらいの力はあるんじゃないかな? ランクにあんまり興味が無かったから昇格試験も受けてないから正確にはわからないけど、多分それくらいだと思う」
リンは別格か……確かにレベルも飛び抜けてたしな。
「じゃあこの中ではリンが一番強いってことだね」
「今はそうかもしれないしそうじゃないかもしれないわね。けどクリードは魔法適性もあるし魔法覚えたらあたしなんか相手にならないと思うわよ?」
「そうですよ! クリード様はすごいんですから自信持ってください!」
いやぁ……この世界来たばかりだし俺TUEEEEするような歳でもないし……
『マスターは先の戦闘で大幅にレベルも上がっております。一度確認してみては?』
「マジ? まぁかなりの数切ったしなぁ……」
言われてみればその通りだよな、あれだけ倒したならレベルも上がって当然か。
「気になります!」
サーシャはいつものように右手をピンと伸ばして手を挙げている。
他のメンバーは口には出さないが興味はあるようだ。
確認してみるか。
「ステータスオープン」
◇◆
名前……レオ・クリイド レベル21
職業……トラック運転手
年齢……21
生命力……B 魔力……C 筋力………C 素早さ……C
耐久力……A 魔攻力……D 魔防力……D
スキル
【トラック召喚】【トラック完全支配】【魔法適性(雷、氷、水、風、光、音)】【瞬間加速】【瞬間停止】【自己再生】【魔力吸収】【気配察知】【剣術】【直感強化】【知覚強化】
◇◆
「わーお……」
上がってる、めっちゃ上がってる……
ステータスも上がってるしスキルも4つも増えてる……
「どうでした?」
「めっちゃ上がってる……」
ステータスと新たに得たスキルをみんなに伝えると何故かみんな納得した。
あれ? ここは驚愕の表情を浮かべるところでは?
「あれだけの数のゴブリン、さらにホブゴブリンまで倒していますからね。これだけの成長はあってしかるべきですね」
「そうッスね。スキルもあの動きを見ていれば納得ッス」
ソフィアとアンナはうんうんと頷いている。
「へぇ、魔力も上がったのね……今度魔法教えてあげましょうか?」
「是非!」
魔法! せっかくファンタジーな世界に来たのだから是非!
「やっぱりクリード様は素晴らしいです! 私の目に狂いはなかったです!」
俺も結構テンション上がってたけどサーシャはさらに上を行くな……
今にも飛び跳ねて喜びを表現しそうなレベルで喜んでる。
『間もなく到着します。門の死角に停めますのでそこからは徒歩移動お願いします』
「もう着くのか?」
歩いて1時間以上かかった道のりがウルトで移動すれば数分……
やっぱ早いな。
「早いのはいいことよ、急いでギルドに伝えないとね!」
「そうッスね……」
それからすぐにウルトは停車、小さくなってもらいポケットに入れる。
「ここからは走るから、サーシャちゃんは頑張って!」
「はい!」
俺たちはリンを先頭に走り出す。
一応ステータス的に素早さも生命力も高い俺が最後尾に着いて警戒、何かいればすぐに動けるようにしておこう。
そんな心配も杞憂に終わりすぐに門にたどり着いた。
「おぉ? こんな時間にそんな急いでどうしたんだ?」
のんびりした口調で尋ねられるが今は時間が惜しい。
「ギルドに緊急報告よ! ゴブリンキングの出現の可能性があるわ! 私はシルバーランク冒険者のリン、すぐに通らせて!」
「な……本当か!? わかった、リンだな? 手続きはしておくから通っていいぞ!」
門兵は慌てて詰所に駆け込んでいく。
「あたしたちも急ぐわよ!」
門を潜り冒険者ギルドに駆け込む。
中にはたくさんの冒険者がいて思い思いに騒いだり寛いだりしている。
リンは空いている窓口に駆け寄り声をかける。
「緊急事態よ、ゴブリンキング出現の可能性アリ、至急対応願うわ!」
「ゴ、ゴブリンキング!? 本当ですか!?」
受付嬢が驚きのあまり大きな声を出してしまったのでギルド内は一瞬にして静まり返った。
「えぇ、あたしたちは森の近くでゴブリンを狩っていたのだけど、数が異常だったわ。石斧、石槍持ちのゴブリンにホブゴブリンが2体、これはかなりキング出現の可能性が高いと判断して急いで戻ってきたわけ」
リンは俺の方を振り返り続ける。
「クリード、全部回収出来てるでしょ? ここに出せる?」
「ここに? 出せるけどえらいことになると思うよ?」
流石に飲食してる人がこんな近くに居るのに大量の耳出すのはちょっと……
「いいから、ここはそういう場所だから気にしなくていいの!」
俺が周囲に気を遣っているのがもどかしいのかかなり急かしてくる。
「大丈夫です。ですから出して頂けますか?」
受付嬢もそう言うなら……
こっそりポケットに手を入れウルトを握る。
それから反対の手をカウンターに向けると、大量のゴブリンの右耳がカウンター上に出現した。
「こ、こんなに!? この数は確かに……」
「ゴブリンの右耳152とホブゴブリンの右耳が2つだよ」
回収した時にウルトに教えてもらった数を伝える。
ちなみに昨日の37匹分もこれに含まれている。
「152!? すぐにギルドマスターを呼んできます!」
受付嬢はそのまま奥へ駆け込んで行った。
大人しく待っていると後ろからザワザワと話し声が聞こえてくる。
「ゴブリンキングか……今王都にプラチナランクの冒険者って……」
「あぁ、居ないな……確かどこかの遺跡調査に出てるはずだ」
「俺ゴールドだけど……ゴブリンキングは無理だ……」
ふむ? 中々絶望的?
最悪勇者パーティにお呼びがかかるかも? いや昨日今日召喚したばかりの勇者は流石に出せないよな。
そんな感じでしばらく待っていると、細身で眼鏡をかけた真面目そうなおじさんが奥から出てきた。
ギルマスってマッチョでハゲがテンプレだと思ってたけど真逆なのが来たな……
「待たせて申し訳ない、王都支部ギルドマスターのショーンだ。早速だが……」
ギルドマスターショーンはカウンターに積み上げられた耳を見て続ける。
「これを見る限り可能性は高そうだね。」
「えぇ、急いで調査と討伐しないと不味いと思うわ」
「当然だね。そういえば君たちのランクは?」
聞かれてリンがシルバーの冒険者証を、俺たちはアイアンの冒険者証を見せる。
「シルバーにアイアンか……このゴブリンは全員で?」
「いえ、こっちのクリードが1人で倒したわ」
その言葉に再び周囲がザワつく。
「1人でこの数を……君は何者なんだい?」
「何者と聞かれても……昨日登録したばかりの冒険者だけど……」
召喚された勇者です! とは流石に言えない。
「そうか……すこし込み入った話がしたい、奥に来てくれるかな?」
仲間たちに目配せすると全員が頷いた。
「わかりました」
「すまないね、ではこちらへ」
俺たちはギルドマスターの後ろを着いて奥に向かった。
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