第13話 装備を揃えよう

「アテ? なんでウルトにアテがあるんだ?」


 当然の疑問だと思う。なんでウルトにアテがあるのか謎すぎるからね。


『はい。私と同じように世界を渡る際に大量の魔力を浴びて進化した物があります。スマートフォンやタブレットがその最たる例ですが、マスターの洋服の中にも進化したものがございます』

「はぁ……なるほど……」


 もう言葉も出ない。

 ウルトはどれだけ俺を驚かせれば満足なのだろうか?


 サーシャたちに至っては遠い目をしている。驚きすぎたのだろう……


「で……どの服がどんな進化したかわかるのか?」

「はい。どのような効果を持っているかも把握しております」


 本当に有能だわ……俺にはもったいない位だよ。


「どれにどんな能力が?」

『スマートフォンの画像フォルダを開いてください。そこに写真と詳細が書かれています』

「なんで!?」


 マジで勝手に俺のスマホ変なようにしないで!


 まぁすでにやらかした後のようなので大人しく画像フォルダを開くと、着替えが1枚ずつ写真に収められているのが見えた。


「……」


 無言で一番上にある黒い作業用シャツをタップすると画面いっぱいに表示されて下の方に説明文が書かれていた。


【黒い半袖シャツ。とても破れにくい】


 ……そっか。破れにくいのか。それはいいことだ。


 スクロールして次の画素を表示してみる。


【黒い半袖シャツ。匂いが付きにくい】


 ……うん、大切だね。汗臭いの嫌だもんね。


 さらに次の画像は……


【グレーの半袖シャツ。汚れにくい】


「もういいわ!」


 思わずスマホを床に叩きつけそうになるのを何とか堪えて叫ぶ。


『種類ごと、効果の微妙な順に並べておきました』

「なんでだよ! 種類ごとはいいから良さそうな効果順にしてくれよ!」

『かしこまりました。並べ替えました』


 このお茶目さんめ!


 改めてスマホに目をやるとやはりシャツの写真が並んでいる。

 興味が出てきたのかサーシャとリンは俺の後ろから画面を覗き込んでいるようだ。



【白い長袖シャツ。着ると重くなる。魔力を込めるともっと重くなる】


「これって良さそうな効果か!?」

『トレーニングにはとても良いかと』

「ぐぅのねも出ねぇよ……」


 確かにトレーニングには最適かもしれない……


 諦めてスクロールして行くと次からはまた破れにくいや匂いが付きにくいなどの効果の付いたシャツが並んでいた。


「シャツではこの白い長袖シャツくらいか……」

「そうですね。ちなみに下着と靴下は一律で破れにくく匂いが付きにくくなっております」

「一律!?」


 全部それか……なんて微妙……でもないか?

 よく考えたらこの世界に同じような品質の服や下着があるか分からないしそう考えたらめちゃくちゃいい効果なのか?


 そう思いなおしてスクロールして行くと次は作業服の上下が表示された。


【紺色の作業服。上下セット装備……魔力を込めると新品同然となる。対魔法、対衝撃に優れ刃物を通さない。自動サイズ調整機能付き】



「うぇえ!?」


 いきなりすごいのが来て心底驚いた。驚きのあまり体が震え変な声が出た。


「キャア!」

「おい! いきなりどうした!?」


 後ろで見ていた2人は俺の驚きに驚いたようだ。


「あ、ごめん。いきなりすごい効果の付いてる服が出てきて驚いたんだ」


 サーシャは驚きすぎたのか両手を胸に当てている


「ほ、本当に驚きましたぁ……まだドキドキしてます」

「いきなり叫ばないでよね……それでどんな効果なの?」


 対してリンは目をぱちくりさせながらこちらを見ていた。


「えっと……対魔法、対衝撃に優れて尚且つ刃物を通さないって……あと魔力を流せば新品同然に戻るって書いてある」


 俺が説明すると2人……ソフィアとアンナもか、4人は呆れたような表情を浮かべている。


「はぁ……クリード様とウルト様はもうなんでもありですね……」

「待って……俺は違うから……ウルトはなんでもありだけど俺は違うから……」


 俺はウルトにおんぶにだっこだから……


「コホン……それでクリード、他の服はどうなの?」

「あぁ、まだ終わってなかったね」


 それからは特にこれといったものは無かった。

 やはりあの作業服は異常らしい。


 俺の素の耐久力がA、それにあの作業服を着れば……

 相当の防御力じゃない? その辺のタンクとか相手にならない感じじゃない?


「アタシの存在意義……アタシの存在意義……」


 ちょっと調子に乗りかけたところでアンナの呟きが聞こえてきた。

 目は虚ろで隅っこで体育座りをしてブツブツ呟いている。


 こえぇ……



 すぐにサーシャが近寄っていってなにか声をかけている。

 しばらく様子を見ているとだんだんアンナの目に生気が戻ってきたので多分大丈夫だろう。



「防具はこれで決まりね。じゃあ剣を買いに行きましょうか」

「店の場所知ってるの? リンも教国の人でしょ?」

「そんなのギルドで聞けば間違いないのよ! 冒険者ギルドでお店の場所を聞いて常設依頼を見てからお店に行きましょう。剣を手に入れたらそのまま王都を出て魔物を狩る予定でいいかしら?」


 サーシャとアンナはまだ隅で話しているため会話に参加していないがソフィアには異論は無さそうなので俺も頷いておく。


「じゃあ行きましょうか、サーシャ、アンナ、もう大丈夫?」


 声をかけられた2人は立ち上がり頷いた。

 まだ若干アンナは本調子じゃなさそうだな。


「もぅ、アンナはアンナ、クリードはクリードよ! 悔しかったらウジウジしてないでしっかり鍛えなさい!」

「はいッス!!」


 リンの叱責にアンナは綺麗な敬礼で応える。

 声のハリも戻ったしもう大丈夫かな?


 それから全員で冒険者ギルドへ移動、俺とリンで武器屋の場所を聞きサーシャたちが依頼の確認をする。


 無事に情報を入手できたので武器屋へ足を運ぶ。


「いらっしゃい、何をお探しで?」

「この人に合う剣が欲しいのだけれど」

「はいよ、予算はどれくらいだい?」

「大銀貨3枚から4枚くらいでと思ってるんですが……」


 さっきリンが言っていたくらいの金額を言ってみる。


「そのくらいなら……この辺りがその値段だな。軽くなら振ってみてもいいぞ」


 店員に案内された売り場には結構な数の剣が立てかけられていた。


「兄さんの身長なら……これなんてどうだ? これなら大銀貨3枚だ」


 店員が示しているのは刃渡り1メートルほどの一般的なロングソード。


「握ってみな」


 剣を両手で握って構えてみる。もちろん経験なんて無いので不格好な構えになってしまう。


「どうだい? 他のも握ってみるかい?」

「お願いします」


 それから何本か握ってみたり軽く振ってみたりするがなーんかしっくり来ない。

 もしかして剣は俺に合う武器では無いのかなと思い始めた時に握った剣になんかピンと来た。

 軽く振ってみるとやけにしっくり来るかんじもする。


「これにする」

「毎度、その剣なら大銀貨3枚と銀貨1枚だな……兄さん剣帯はあるのかい?」


 剣帯? ベルトみたいなやつのこと?


「そういえば持ってないな……」

「だろうな、そんな気がしたよ。一緒に買うなら大銅貨1枚のところ銅貨3枚にしてやるがどうする?」

「買います」


 必要な物だし割引してくれるなら買わないわけないよね。

 お金を払って商品を受け取る。

 整備も安くしてくれるとのことなので有り難く利用させてもらおう。


 店を出て東の大門へ移動、道中露店で売っていた軽食を食べながら進み昼食とした。


 昨日と同じように門兵さんに声をかけて王都から出る。

 さて、俺はちゃんと戦えるのかな?

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