第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女
第40話 家にやって来た鬼人族のデュークさん
私たちが住む家と獣人族さんたちの村とをレールで結び、私からは作物を。獣人族さんたちからは乳製品や布なんかを交換してもらっている。
毎日新鮮な牛乳やチーズが手に入るので、セマルグルさんに協力してもらい、新たな食べ物に挑戦してみた。
「これ、美味しいね! 冷たいのが良いよ」
「ふむ……これは、不思議な食べ物だな。このような食べ物は初めて食べたぞ。微調整が大変だったが、苦労した甲斐があったというものだ」
「アイスクリームっていう食べ物なんだけど、セマルグルさんの氷魔法のおかげで、上手く出来たわねー」
牛乳と卵だけで作った簡単なアイスクリームだけど、元の材料がよいからかな? とっても美味しい。
太陽の下で、みんなでアイスクリームを食べながら涼んでいると、不意にセマルグルさんさんが顔を上げる。
「セシリア。どうやら、客人のようだぞ」
「お客さん? あ! デュークさん! どうかれたんですか?」
小さな川を挟んだ対岸で、このアイスクリームを作るのに使っている卵や、ベーコンをくれたデュークさんが、馬車から降りて困った表情を浮かべて立ち尽くしていた。
あー、どういう理由かは分からないんだけど、獣人族の人たちも、この川は渡れなかったよね。
アイスも食べ終えた所なので、川を渡ってデュークさんの所へ行くと、深々と頭を下げられる。
「セシリア様。先日はありがとうございました。セシリア様のお力で豊作となった畑の収穫と種撒きが終わりましたので、ご連絡に伺わせていただいた次第です」
あ、そういえば、前に鬼人族さんの村で小麦とコーンの畑を育てた時、収穫が終わったら呼んでね……って言ったっけ。
鬼人族の守り神さんの要求に応える為、一時的に収穫可能な状態にしたけど、私が育てる前の状態まで戻しておかないと、次の収穫が困るもんね。
「わかりました。では、鬼人族さんの村まで参りましょうか」
「ん? セシリア。出掛けるの?」
「えぇ。ヴォーロス、悪いんだけどお願い出来る?」
「勿論。こんなに美味しい食べ物をもらったしね。頑張るよ」
ヴォーロスに雷魔法で電車を動かしてもらうんだけど、頑張られると必要以上に速度が出てしまうので、程々にお願いしたいかな。
という訳で、ヴォーロスとデュークさんと共に電車へ乗り込み、早速動かしてもらう。
「おぉっ!? こ、これは……す、凄まじい早さですね。馬車とは比べ物にならない速さです」
「あ! ごめんなさい。デュークさんの馬車の事をすっかり忘れてた!」
「いえ、大丈夫です。この乗り物の事は、獣人族の村で噂を聞いておりましたので、馬車の御者には村へ戻るように合図致しましたので」
それなら良かった。またここまで戻って来てもらうのは悪いし、待っている御者さんだって大変だもんね。
そんな事を考えている内に、あっという間に獣人族の村の前へ到着した。
鬼人族の村までは、まだレールを敷けていないので、ここからは徒歩だけど、道を平らな石畳に変えてあるので、かなり歩きやすくなっている。
鬼人族の村を目指して歩いていると、突然デュークさんが申し訳なさそうに口を開く。
「あの、セシリア様。ここからはご相談なのですが、実は以前に助けていただいた食糧問題の件で、守り神様がもっとお供え物を出すようにと仰っておりまして……」
「えっ!? かなりの量の穀物を収穫可能にしたはずなのに……まだ要るの!?」
「す、すみません」
守り神様っていうのが、どんな方かしらないけれど、どれだけ食べるのだろうと呆れながら……ひとまず、鬼人族の村へと到着した。
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