秋の夜長に見る恋の夢
Bu-cha
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9月も今日で終わった。
4月の誕生日で30歳も終わった。
桜の花が全て散ったような日だった。
約束の日は、立冬の11月7日まで。
約束の日を迎えたら結婚をする。
好きでもない人と、結婚をする。
本当は去年の11月7日までだった。
“覚悟が足りていない”
父親からそう言われ1年延期になった。
好きでもない人と結婚なんてしない。
10年も前から決まっていた相手。
私は製薬業界トップの会社の社長の娘、加賀製薬の経理部に所属をしている加賀小町(こまち)。
親族で代々受け継いできた会社。
私が二十歳の時、私の婚約者を次の社長に就任させることが決まった。
代々、社長となる親族達は親が決めた相手と結婚をしている。
入籍日は立冬の日の11月8日。
最低最悪なことに、相手は好きでもない相手だった。
好きでもない人と結婚なんてしない・・・。
そんなの、しない・・・。
そんなことを今日も考えながら、実家の大きな屋敷を飛び出して去年の11月から一人暮らしをしている部屋へと帰る。
社長の娘だからと甘やかされていないお給料。
そのお給料の範囲内で借りた小さな小さな古めのアパートの1室。
1年も住めば今はこの部屋が私の屋敷。
私だけの、屋敷。
“美しい”と言われ続けてきた私も31歳。
好きな人と結婚することも出来ない人生に、こんな無駄に美しい顔なんていらなかった。
こんなことに悩んでいるうちに・・・
桜の花が色褪せてしまったように、私の若さや美しさも衰えていく・・・。
今この瞬間にも、衰えていく・・・。
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