第4話 暖かい人間関係
「美味い,,,」
「温かい,,,」
2人は手に持ったスープを感動したように眺めていた。
少し前に遡ると2人は近くで薬草を探し、獲物を狩り、水を汲んだりしていたのだ。
大半はレイがこなしていたがリンも不服そうに手伝っていた。
その後、信頼できると見られたのか料理を振舞って貰える事になり、暫くぶりのマトモな食事にありつける事になったのだ。
「腹に入ればいいと思っていたが、、、やはり格が違うか」
「普通のスープだからな!?」
「やっと……美味しい液体が飲めました……」
「アンタら何食ってたんだよ」
食料は取ってきた分、大量に増えたため喜んで追加を注いでくれた。そしてこちらの素性を隠しつつ食事を取りながら互いに情報交換などをしていた所だ。
「……なるほどなぁ、それは大変だったな」
「まぁな、そちらはこの後どう動くつもりなんだ?」
「まずは何処か大きな街に寄らんとなぁ、馬車も傷が増えたから修理せんと行かんのよ」
「あ、それなら港町を目指しませんか?私達もそちらを目指しているんです」
「港町か,,,良いかもしれねぇ。アンタらも乗ってくかい?護衛してくれるならお駄賃は取らねぇよ」
「あぁ、それ「良いんですか!?ありがとうございます!」
食い気味に飛び付いたリンに押しのけられ、仕方ないと深いため息をついた、よっぽど歩くのに飽きていたのだろう。
目的が決まってからは少し休み、最後の準備などを進めていく。
「護衛は大部分アンタに任せる事になるが…大丈夫か?」
「心配するな、それより彼女を頼んだぞ」
頼りにしてるぜ!その一声をきっかけに旅団は馬を進め始める。
怪我をしている為速度は出ないが、歩いての見張りもしやすく急ぐ旅でも無い為問題は無かった。
「そういやお嬢さんは何でそんな目と牙になっちまったんだい?」
「あー、それはですね,,,」
出発してから数日、ついに聞かれてしまったと目を泳がせる。
確かこういう時は、そう、こう答えるんだった。
「私は魔法使いだったんですけど、新しい魔法を作ろうとして失敗して、その反動でこうなっちゃったんですよね」
「あちゃー、災難だったなぁ。魔法はまだ使えるのかい?」
「は、反動が結構強かったので今は難しいですね,,,」
緊張してぎこちない笑みが浮かんでいるが、寧ろそれが説得力を増したらしい。同情されて飴玉を貰うと何とも言えない罪悪感に苦い顔をしていた。
「中は賑わってるな」
「アンタは行かないでくれよぉ?俺の話し相手が居なくなっちまうからな!」
「お前が一方的に話してるだけだろ」
「ばーろぅ、馬に話しかけてる事がどんなに切ないか分かるか?しかも妻にそれを白い目で見られるんだぜ?」
「何か…悪かったな」
此方も変な気まずさを持ちながら会話をしつつ、ゆったりと歩みを進めていた。
道中も野獣や低位の魔物が襲ってくる位で特に危ないことも無く、段々と整備された道が増えてきた事に気づく。
「あ、何だか塩のような香りがしてきましたね?」
「ん?そんな香りするかい?」
「彼女は鼻がいいんだ、恐らく海が近ずいて来てるんだな」
「お前らー!そろそろ街が近ずいてくる頃だから降りる準備しておけよー!」
それから数刻もしない内に皆が分かるほど潮の匂いがするようになる。
リンが馬車の窓から顔を出して見れば、遠目に広い港町が広がっているのが分かった。
「この後おれらは出店の場所取りと仕入れをするが……アンタらはどうするんだ?」
「まずは宿探しをして色々見て回ろうと考えてる」
「私は美味しいものを沢山食べたいです!」
随分とこの旅団の人達にリンは好かれた様で、名物の料理など色々教えて貰っていた。
「あぁ、あんちゃん、俺はチャットって言うんだ」
「?、改まって自己紹介してどうしたんだ」
「この街にいる間にまた会うかもしれないからな!良かったらうちの店を贔屓にしてくれよ!」
出会った時とは違い、豪快に笑う彼を見て仕方ないなと店の名前などを教えてもらう。
そして街がすぐ此処に迫り、別れと新たな出会いを目指して,,,と言った所でふとリンが呟いた。
「それにしても、本当に海ってあったんですね」
「海の水は好きなだけ飲んでいいんだぞ」
「良いんですか!?」
「あんちゃん、それは鬼畜すぎるぞ」
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