Part5
サオリとサキとの話を終え、マキはスレイヤーがいる病室に向かっていた。
すると、歩いているマキの方へ、二名の魁平隊員が走って来た。
「隊長!」
「?どうしました?」
「スレイヤー様を見ませんでしたか?」
「え、スレイヤー様なら、病室にいるのでは?」
「それが…」
「?」
「いないのです。病室に」
「!?まさか…」
「隊長!」
マキはホントなのか確認する為、急いで病室に向かった。
「っ!」
病室に着くと、たしかに病室にスレイヤーの姿はなかった。
「一体、どこへ…」
スレイヤーが横になっていたベットに向かうと、そこには一枚の紙が置かれていた。
「これは…」
紙に書かれた内容を読んでみると、そこには、「スレイヤーを返してほしければ、一人でこの場所へ来い」と書かれていた。地図も横に書かれていた。
「…過去との決着。今がその時ですね」
自身が犯してしまった過去との決着をつける為、マキは一人で、指定された場所まで向かうことを決意する。
〈その頃、ミヤは〉
「…」
ミヤは、マキに指定した森の中にある小さな家の残骸の所にいた。
「ミヤ」
「…ベータ殿」
「コイツが、スレイヤーか?」
「はい」
「…こんな小娘の姿に変わっていたとはな」
「ええ、スレイヤーの力が弱まったと言うのは、ホントだったようですね」
「今にでもスレイヤーを殺せるが、殺すのは我が計画の後でもいいだろう。護衛の剣士であるマキという女についてはどうだった」
「直接会って、確信しました。マキも、本来の力を持っていないと。今の魁平隊に、脅威となりうる人物は、誰もいません」
「そうか。なら、この計画も簡単に終わりそうだな。だがここまで上手くいき過ぎると、逆に怖いぐらいだ」
「我々が警戒していた魁平隊は、とっくに終わっていたのですね」
「そのようだな。では、これより計画を開始する。大火だ。街と城を燃やし破壊しつくす。ミヤ、お前はここでマキを殺せ」
「言われなくとも、私は、マキを殺します」
「…それなら良い。では、計画開始だ」
ベータ率いる闇式は、スレイヤーの城付近の街や、スレイヤー城を燃やし、破壊しつくす計画を実行しようとしていた。
一人残ったミヤは、マキの相手をし、街や城から注意を逸らすのが本来の計画だが、ベータはこの計画を少し変え、注意は逸らすが、それだけに留まらず、マキを殺すまで考えていた。
そんな計画を一切知らないマキは、スレイヤーを助ける為、指定された場所まで向かっていた。
「…あそこに、スレイヤー様が(それと、彼女もきっといる)」
マキは、森までは到着していた。後はスレイヤーとミヤがいる場所まで行くだけ。
それと同じ時、闇式は街の入口近くまで瞬間移動し、大火作戦を実行しようとしていた。
「ふふ、これでこの世界の歴史に革命が起こる。これからは、我々の時代だとな」
「そうですね、隊長」
「あぁ、ん?」
「どうしました隊長」
「おい、あの二人は誰だ。それに、何故街の連中がいない」
ベータ達の視線の先には、二人の少女がいた。その二人とは、サオリとサキだ。
二人はマキに、自分がいない間にもしもの事があった時、街や城を守ってくれないかと頼まれていた。
そして、その願いを、二人は断るはずもなく、了承し、街の人を城に逃がし、今に至る。
「ようやく来ましたか」
「そうですね、サオリさん」
「貴様ら、何者だ」
「私達は、通りすがりの剣士です。ですが、この街や城を守る約束をしました。なので」
「ここから先は、行かせません」
サオリとサキは剣を抜き、構えた。
ベータは、計画とズレが生じたが、まあ全て上手くはいかないかと、そう思い、サオリとサキの相手をすることにした。
「にしても、たった二人とはな」
「バカヤロ、よく見ろ。あの構え、隙がない。それに、内にかなりの魔力を秘めている。甘く見てると、死ぬぞ」
「すいません、隊長」
「だが、まずはお前らからだ。あの二人を殺せ」
「はっ!」
ベータは部下に命令し、部下達はサオリとサキに向かっていった。
「おらあー!」
「…ふっ!」
サオリとサキは、向かってきた者達の攻撃を刀で防ぎ、斬った。
そして、次から次へと、ベータの部下達が迫ってくるが、サオリとサキは、それでも確実に部下たちを斬っていった。
剣戟は、サオリとサキの圧勝だった。
「どうなっている。これ程の実力、魁平隊でもないのに、どこから来たのだ」
サオリとサキの実力に、少し焦るベータ。
「なあに、少し腕がたつだけだろ。所詮は女剣士だ」
「バカ言え、女だからって侮るな。奴らは強い」
「ベータ、ここは俺ら剣士組に任せてくれ」
「…勝てるか」
「それはやってみないと分からない」
「まあ、ここで奴らを倒さなれば、計画が終わる。任せたぞ」
「あぁ、任された。行くぞお前ら。俺とカムとシキは左の女剣士を、ダンとアカは右の剣士を倒せ」
「了解した」
闇式の剣士組のリーダーであるザン。そしてカムとシキはサオリを、ダンとアカはサキの相手をした。
「ハァー!……ん?」
「…サオリさん」
「えぇ」
サオリとサキは、これまでの敵とは遥かに違う魔力の反応を感じた。
いつ敵が来ても大丈夫なよう、集中するサオリとサキ。
「いくぞー!」
そして、闇式の剣士組はサオリとサキに迫った。
「…ふっ!」
「っ!」
初撃を防ぐサオリ。
「やるな、だが」
「…!」
「こっちは三人だ」
残り二人からの攻撃も、なんとか防いだサオリ。
敵の攻撃に、サオリとサキは離されてしまう。
「…」
「アンタは中々やるな、名は何と言う」
「…私は、サオリです」
「サオリか、俺はザンと言う。剣士として、こうして戦えた事、感謝する。ホントなら、アンタが仲間なら、もっと高め合いたかったが、計画を完遂させるには、倒すしかない」
「…私達は、戦う運命にあるようですね」
「あぁ、そのようだ」
「では、参ります」
「あぁ、来い!」
サオリは、リーダーであるザンを含め、三名の剣士に向かっていった。
もちろんサキの方も。
「お前の名は」
「私はサキです。貴方は」
「俺はダン。こっちは」
「俺はアカと言う」
「そう、アカだ」
「…貴方たちは、なぜ世界を壊すのですか」
「…俺たちは雇われの身、正直壊すことにはそこまで考えはない。だが、雇われた以上、任務を全うするのみだ」
「なるほど、任務ですか」
「逆にお前は、なぜこの世界を、世界を守る」
「私は、世界に暮らす人達の笑顔と平和を守りたい。そして、私自身も平和が好きだからです」
「守る価値が、あると思うのか。中にはお前達の功績を何とも思わず、平和が当たり前だと思う者もいるんじゃないのか?」
「たしかにそうかもしれない。でも、それで良いのです」
「なに、どう言う事だ」
「平和が当たり前、それを創るのが私達の仕事です。そして、平和以外を知らず、笑顔をくれる、それだけで、私は励みになる。もちろん、平和以外を知っている者、体験した者が不幸だと、そう言いたい訳ではありません。ですが、ほとんどの人が望むのは平和です。でも中には、貴方たちを雇い、平和を脅かす存在は、当然いるでしょう。そして、永遠に平和、なんて言うのは恐らく無理でしょう。人はたくさんいます。全ての人が平和を望んでいるとは限らない。戦闘を自ら望む者もきっといる。でも、だとしても、私は、少しでも長い平和を創る為に、戦っているのです」
「なるほど、それがサキ、アンタの原動力か」
「ええ、だからこそ私は、負ける訳には、いきません」
「アンタの決意、受け取ったぜ。だが俺もアカも、負けてやる訳にはいかない」
「では、いきます!」
「おお!来い!」
サキも敵である、ダンとアカに向かっていった。
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