第二十五話 Two Captains And Countless Outsiders
数時間後、車は高速道路に入った。
「あとどんくらいだ?」
関崎は自動運転に切り替えて休もうとしてる寝代に聞く。
「大体、3時間ですかね、サービスエリア行きます?」
「行っといた方が良いと思うよ」
翳究は近くのサービスエリアの情報を見ながら言う。
「腹減ったし、行こう!」
黒武が挙手する。
「賛成です」
続けて走も挙手する。
「じゃあ行きますか」
車は数分後、パーキングエリアに止まる。
走達はサービスエリアで昼食を取る。
「大阪で会う人ってどんな人何ですか?」
走はナポリタンを食べ終えて、おしぼりで口元を拭きながら、質問する。
「そうだな、かなり明るい人だ」
「そうだ関崎、大阪では金屋とも会うからな」
「本当か? めんっどくせぇ」
関崎は誰が見ても嫌だと伝わる表情に変わり、大きいため息をつく。
「近くで演奏会があるらしい、ついでに行くってよ」
「はぁ~」
「その、金屋って人はどんな人ですか?」
「愛想がない、あと美的センスがおかしい」
「ほら、この人」
寝代がスマホで金屋の写真を見せる。
「音楽家、そう言えば先生が話してたような、跳ねるリズムが美しいって」
「その先生も頭おかしいな」
「よし、そろそろ行くか」
「おう」
関崎はズズッとジュースを飲み干し、ゴミ箱に捨てる。
「翳究さんは?」
「いろいろ、買ってくるって言ってたな」
話していると、黒武のスマホが鳴る。
黒武は席を離れ、電話に出る。
「どうした、翳究」
「黒武、さっき言った通り、いろんな物を買ったんだが……ドアが開けられん」
「さっきお前に車の合鍵渡したろ」
「確かにあるのだが、開けられん、とにかく来てくれ」
黒武は電話先の翳究にも聞こえるほど大きなため息をついて、分かったと一言伝えて電話を出る。
「早く行くぞ」
「はい」
走達が駐車場に戻ると車のドアの前に色々な種類のパンと様々な機材が入ったレジ袋が置かれていた。おそらく翳究の物だろう。
「翳究はどこ行った」
黒武は辺りを見渡し、近くの車の中を覗く。
寝代は車内の安全を確認する。
関崎は腰に着けた刀の抦に手を掛ける。
走は黒武が行った向きとは反対の方を見る。
何も手当たりが見つからず、どうしようかと考えていると、黒武のスマホが鳴る。
「全員車に乗れ」
「「はい」」
全員車に乗り込み、車は勢いよく出発する。
「翳究からの連絡だ、ボイスメッセージが届いた」
ボイスメッセージを再生する。
「すまない、拐われた、黒服の奴だ、車はおそらくトラック、そして体が地面にくっついて離れない」
ボイスメッセージが終わる。
「カゲロウ……ですよね」
「ああ」
「それもUVHKだ」
「なんですかそれ」
UVHK(紫外線を持ったカゲロウ)とは先日現れたカゲロウに付けられた名前だ。
寝代は走にその事を説明する。
「なるほど、分かりました」
「寝代、トラックを探して、見つけ次第接近しろ」
黒武は翳究に電話を掛けてながら命令する。
「分かりました!」
「寝代スピードを落とせ」
バックミラーにはトラック2台が写っている。
車のスピードを下げる、関崎はドアを開け、外を確認する。
「運転手はカゲロウだ、目が少しおかしい」
「そうか」
関崎は銃でトラックのタイヤを狙うが、的は動いており、風も強い、この状況で当てるのは無理に等しい……そう判断した関崎は、鞘から雷黒刀を抜く。
「もう少しスピード落とせ」
「ぶつかりますよ」
「いいから落とせ」
「分かりました」
車のスピードをもう一段階下げる。
「完璧だ」
「ぶつかるって」
「3……2……1……」
関崎は車から降りて、トラックの窓の隙間に指を掛け、トラックの荷台の上に乗る。
「よし」
関崎は窓ガラスを壊し、中にいるカゲロウを殺す。
「よいしょ!」
刀で荷台に穴を開けて、無理やり中に入る。
「……いねぇな、それにUVHKの特徴は無い」
関崎はトラックを隣のトラックに近づけて、飛び移る。
「おら!」
先程と同じくカゲロウを殺し、荷台を確認する。
「居ないか、一旦戻るか」
どうするか、関崎は寝代の車に戻ろうとしていると、背後から音がする。
関崎が振り向くと小柄なカゲロウが目の前に迫っていた。
「まさかルーフの中に」
「ギィギャアイ」
カゲロウの黒く鋭い爪が関崎の右手を切り裂いた、関崎は反射的に刀を落としてしまう。
「頭良いな、教育番組でも見たか?」
「ギャイ」
「話そうぜ」
関崎は挑発的な態度を取りながら、荷台の奥に下がる。
「トドメ刺さねぇのか?」
カゲロウは歩みを進める、そして、カゲロウがさっき落とした刀を踏んだ瞬間、関崎は叫ぶ。
「雷黒刀
関崎の声に反応し、雷黒刀に電気が流れる。
カゲロウは体勢を崩し、その隙に関崎は刀を拾い、カゲロウを切る。
「間一髪だな、戻るか」
トラックを運転し、寝代の車に戻る。
「翳究は居なかった、おそらく前の方に居る」
「分かった、そんじゃ、飛ばせ寝代」
「はい!」
寝代の車は速度を上げて、数分後には最高速度に至る。
「見えた!」
走が指差す。
「あれか」
「少し遠いな、銃は届かねぇ」
「寝代、スピード上げろ」
「これ以上は無理ですよ、それに燃料が持つか……」
寝代は車の燃料計に目を落とす。
「チッ」
車は少しずつ速度が落ちていく。
このままでは逃げられる、車内が緊張感で満ちている時、黒武のスマホが鳴る。
「もしもし、すまねぇが今は……」
「黒武さん、今どこおるん? 俺らは高速道路の近くに居るんやけど」
「マジか、じゃあ高速道路に行ってくれ!」
「お、おう、分かった」
電話は切れ、黒武は安堵する。
「寝代、自動運転に切り替えていいぞ」
「え?」
「トラックが前に居る、この状況を維持してれば、勝てる」
黒武は額の汗を拭き、シートにもたれ掛かる。
「寝代さん、前に人が」
高速道路の柵を乗り越える人が居た。
「え、ヤバッって……大丈夫だよ、少し速度を落とそう」
「当たりますよ」
「安心しろ、あれが隊長だ、もう終わるだろう」
「よう分かってるなぁ」
神津が車の屋根から車内の皆に話しかける。
「うわっ!」
「神津、終わったか?」
「お疲れ」
「終わりましたよぉ、黒武総隊長っさん」
「翳究はどこだ」
「金屋が持ってます、とりあえず、高速出ましょ」
寝代の車は高速道路を出て、近くのカフェに酔った。
「翳究!」
翳究を見つけ、黒武は走り寄る。
「すまない、不覚を取られた」
「いいよ」
「
「すいません、駐車場が混んで」
「よぉ、金屋、元気だったか?」
「……お前に会うまではな、関崎」
走達は神津大戸と金屋甲と合流した。
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