第十六話 That Bird Leaving The Nest Was Black

文化祭が終わり、日曜日。

黒武はカゲロウ特別対策部隊の全隊員をどこかの地下室に集めていた。

「走は?」

「まだ駄目です、昨日からずっと部屋に籠っています」

「そうか」

「どうするんですか?」

「うーん……ノープログレム、今は時間が必要なんだ」

「分かりました」

「よし、じゃあ始めるか」

黒武は台の上に立ち、マイクを持ち、話を始める。

「皆、知ってると思うが、この部隊の中に侵入者がいる」

「「はい!」」

「そこで、俺は秘密裏に全員を調べ尽くした」

「それで、どうだったんですか?」

1人の隊員が聞いてきた。

「居た、だが、この部隊ではない」

黒武の言葉に隊員達はざわつく。

「静かに」

賢衆が場を静める、黒武は話を続ける。

「Αphoneの社長、陰帯携左衛門だ」

「なぜ分かったんですか?」

「そうですよ」

「少し前に会議を行った、その時に社長が来た、その後会議室を調べると、カゲロウの痕跡が見つかった。そして隊長達の無実は証明済み、つまり、社長がカゲロウだ、言質も取った」

「なるほど」

「俺達はこれから、Αphone本社を襲撃する、そして社長を倒す」

「それなら、勇我隊長と泥闘分隊長の復帰を待った方が良いんじゃないですか?」

帝使が挙手しながら、質問する。

「……Αphone本社襲撃後、俺達はカゲロウ特別対策部隊ではなくなる」

「え!?」

「これが最後の任務になる奴もいるだろう」

「カゲロウの問題はまだたくさんあります、どうするんですか?」

「国に任せる、俺は国にコネがあるんだ、まだカゲロウと戦いたい奴は俺が手引きしてやる」

「具体的には?」

「それは言えない、俺に着いてくるなら教えてやる」

「……」

「このΑphone本社襲撃作戦はこれより1週間後に行う、良いな?」

返事が返ってこない、黒武は妥協案を出そうか悩んでいると。

「分かりました」

「最後だから、派手に行こうぜ」

「……分かった、気を引き締めろ!」

「「はい!」」

「それじゃ、1週間後、頑張るぞ!」

「「はい!」」

隊員達はやる気に満ちた表情で解散する。

「次は……」

黒武は一目のつかない路地裏まで行き電話する。

「もしもし?」

「どうしたの? 今忙しいんだけど」

「急に悪いな、今度会議しない?」

「そんな急に言われても、いつ?」

「まだ決めてない、いつ行ける?」

「そうね、再来週の水木金のどれかなら」

「じゃあ、後で連絡するわ、じゃねぇ」

「会議の内容は?」

相手がまだしゃべっているのに気付かず、電話を切ってしまう、そしてまた別の所に電話を掛ける。

「もしもし」

「はい、どうしたんですかぁ?」

「今度、会議がしたいんだが」

「分かりました、内容は……カゲロウですか?」

「ザッツライッ」

「分かりました、私はいつでも良いので、後日教えてください」

「まだ聞いてないけど」

「どうせ、決めてないでしょう?」

「オフコース、もちろんだ」

「じゃ、また今度」

電話が切れて、黒武はまた別の所に電話を掛ける。

「もしもし?」

「おっ、黒武かぁ、どしたん?」

電話の奥で騒ぎ声が聞こえてくる。

「今何やってるんだ」

「この前、大きめの任務を成功させたもんで、皆でバーベキューしとるんです」

「そうか、話題を戻すぞ」

「カゲロウよな?」

「ああ」

「了解です、再来週ならいつでもどうぞ」

「分かった、じゃあな」

黒武は電話を切って、黒武はまた別の所に電話を掛ける。

「もしもし」

「は~い? 今仕事で女の子とお話ししてるんだけど」

「分かった……内容は後で連絡する、いつ空いてる?」

「うーん……この仕事終わったら、しばらくは休みだから、いつでも良いよ!」

「分かった」

「じゃあねぇ~」

黒武は電話を切って、別の所に電話を掛ける。

「もしもし?」

「黙れ、今とてもインスピレーションが湯水のごとく溢れている」

電話の奥でピアノの音色が流れるが、黒武の耳には雑音にしか聞こえなかった。

「どうだ?」

「オー上手い上手い、今度聞かせて~」

「良いだろう、再来週か再々来週ならいつでも聞かせてやる」

「分かった」

黒武は溜め息をつきながら、電話を切る、そしてまた別の所に電話を掛ける。

「もしもし」

「会議の件だろう?」

「知ってんの」

「ちょい前に……宮岡から連絡が来た」

「なるほど、じゃあ、良いや、バイバイ!」

「……ああ」

黒武は電話を切る。

「ふぅ……」

「お疲れ様です」

関崎が黒武の後ろから声を掛ける。

「今度からメールにしよっかなぁ……でもあいつらメール見ねぇしなぁ」

「今度からは俺が電話で連絡しますんで、乗ってください、車を呼びました」

「どうも」

車の窓から運転手が会釈する。

「あ! 速橋駆狂じゃん! ククル~お久ぁ」

「速橋でいいです」

「乗らない」

「え!?」

「まだ用があるし、車なら、織田に用意させてる」

「御曹司になんて事させてるんですか」

「良いじゃん」

「黒武センパ~イ」

「ほら来た、じゃあな」

黒武は織田が用意した車に向かう。

「はぁ、分かりました、速橋」

「はい!」

「安全運転で行け、60キロ以上出した瞬間、俺がブレーキを踏む」

「えっ、でも……」

「良いな」

関崎は威圧的に言葉を放つ。

「……はい」

関崎は車に乗り込み、スマホゲームを始める。

「会議ってことは、金屋も来んのか……はぁ……メンドクセ」

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