第八話 The Sword To The Scabbard, The Bird To The Nest
「きたきた」
「すいません、部活が長引いて、はぁ」
走は息を切らして、約束の時間に来れなかったことを謝る。
「そんな気にしてねぇよ」
「仕事じゃありませんし、気を抜いて」
「はい」
走は息を整え、返事する。
「行くぞ、まずは昼飯だ」
ファミレス。
「ご注文繰り返させていただきます、チーズインハンバーグ、ドリンクバー、ラーメン、ステーキ450グラムですね」
「はい」
「飲み物、取ってきます」
「俺、コーラ」
「僕は、コーヒー」
「分かりました」
走はドリンクコーナーに行く。
「健気だねぇ」
「今日は奢りでしたよね」
「その話は後で。それより、どうだ?」
「仕事の話ですか、結構順調ですよ、走が来るまでに僕たちの前を10匹横切りました」
「やっぱり、増えてるな、人間のフリしたやつが」
「あと、寝代さんが品川、目黒、板橋、江戸川の4区にカゲロウの巣を確認」
「やるなぁ、他には?」
「あと、その巣をカゲロウが常に5、6匹、見張ってる、夜中は全員外に出て、狩りに行く、日が昇るときに食いきれなかった余りを巣に持ち帰る」
後ろの席に居た寝代が説明を付け足す。
「いたのか、宅矢」
黒武達の隣の席に寝代が座っていた。
「少し前にね、鴉馬くんを見かけたから、跡を追ってきた」
「そうか」
「飲み物、どうぞ」
走が飲み物を持ってきて、テーブルの上に並べる。
「誰と話してたんですか?」
「後ろの席の人」
走は黒武の後ろの席を見る。
「え、あ、寝代さん、こんにちは」
「こんにちは~」
寝代は走に柔らかい笑顔で手を振る。
「宅矢、こっち来い、話しづらい」
「分かりました」
寝代は席を移動する、ちょうど、店員が料理を運んで来た。
「どうぞ」
「「いただきます」」
「ピザ頼んでねーけど」
「僕が頼んだ、食う?」
「貰います」
走は麺をすする、トッピングの半熟玉子の黄身と絡まって、とても美味しい。
「チーズインハンバーグのポテト頂戴」
「いやです」
「ちぇ」
「ピザうまい」
寝代はタバスコをかけて赤くなったピザを頬張る。
「ごち!」
黒武はステーキを食べ終え、途中で注文したポテトを食べ始める。
「ごちそうさまでした」
その後に続いて走も食べ終わる。
「ポテト食べる?」
「頂きます」
織田は丁寧に食べる。
――さすが金持ち。
その場の織田以外は思った。
「ごちそうさま、遅くなってすいません」
「美味しかったです」
「皆、この後どこ行くんだ?」
「まぁ、近くのデパートでショッピングとかする予定だけど」
「そうか」
「そろそろ会計しますよ」
「おう」
走と織田は荷物をまとめて、先に店を出る。
「そういえば、黒武さん、近くのデパートにカゲロウの反応がありますけど」
「そうか、うまく殺っとく、今日は親睦会だからな、あまり仕事はさせたくない」
「了解、ちなみにこれが今人間に化けてるカゲロウです」
寝代は監視カメラの映像からスクショした画像を見せる、カゲロウが化けた人間は身体の一部から黒いモヤが出ていて、黒目の割合が多く、スーツ姿の場合が多い。
「デパートから出たカゲロウは僕が始末しますので」
寝代は走達より早く店を出る。
「オーケェイ」
黒武は話を終えて、会計を済ませる。
「じゃ、デパートに行くか」
走達が、店を出てデパートに入る時、カゲロウ4匹もデパートに入った。
「黒武先輩」
「ああ」
織田は黒武に耳打ちした。
「まず……服でも買うか」
走達は服屋に入った。
「走にはこれ似合うと思う」
「そうですか?」
「着てみな」
「はい」
走は試着室に入り、渡された服を着てみる。
「どうですか?」
「おお、似合ってる似合ってる」
「……良かったです」
走は照れて、目をそらす。
「うん、モテるな」
「店員さん、これ買います」
「良いんですか?」
「良いって良いって、俺けっこう金持ってんだから」
「はい……ありがとう、ございます」
その後、織田は弦輝と弧雪の服を買って、走達は服屋をでた。
「次はゲーセンでも」
「「キャーー」」
女性の甲高い声が響く。
「どうした!」
「待ってください、先輩!」
「二人とも!?」
黒武は声のする方に向かった、走と織田は黒武の跡を追って、ゲームセンターに入る。
「「キャーー」」
「大丈夫か……あれ?」
声をよく聞けば、悲鳴ではなく黄色い歓声であった。
「ああっクッソ!」
「また俺の勝ちぃ」
「これで、勇我は10戦10敗ですね」
「クソォ、あ、やりますか?」
勇我は後ろにいる女性達に聞く。
「「いえ、お構い無く」」
「なんだ、勇我か」
「なんでここにいんだよ」
「それよりも、どうしたその女達は!」
「帝使がナンパした」
帝使を見ると、女性達と楽しそうに話している。
「俺、多目的トイレ行ってくる」
「多目的トイレ?」
「ああ、一緒に行こうぜ」
帝使は勇我の肩を持ちながら、多目的トイレに行く。
帝使の目はさっきの女性を見る目とは全く違う。
「分かった」
「行ってらー」
「黒武さん!」
走と織田が黒武を見つけ、駆け寄る。
「来たか、走」
「先輩が急に走り出すから」
「すまんすまん、ところで、音ゲーで勝負しねぇか?」
「はい、分かりました」
黒武は筐体に200円を入れて、ゲームを始める。
その頃、多目的トイレでは勇我と帝使、女性達がいた。
「へへ」
帝使はカギをかける。
「こんなところに来て、なにする気ですかぁ?」
「もしかしてぇ、襲われちゃう?」
「どうかな?」
「キャーやらしいんだから」
勇我は上着を脱ぐ。
「え、まさか本当に」
「ああ、殺る」
勇我は先日翳究からもらった、超熱伝導刃付き短刀M.A13を取り出す。
「え、なにそれ、は、刃物!?」
「オラ!」
勇我は女性達を勢いよく切る。
「ヤメ、テ」
カゲロウの身体は、切られた所から分離していく。
「帝使、2匹逃した」
「了解」
逃げるカゲロウを帝使がナイフで切る。
「これで終わりか?」
「いや、あと何匹かこのデパートに居やがる」
勇我達は多目的トイレを出る。
「スッキリした~」
「声でかいんだよ」
「あ、関崎と網繋、来てたのか」
「はい、2人が女をトイレに連れ込んでいる所を見たので、何かあったのかと思って」
「そうか」
「研究部隊はデパートの監視カメラを確認しています」
「分かった、それと今、走達に会った」
「俺らはこの後、屋上に行く」
「了解」
「行くぞ、帝使」
勇我と帝使は賢衆を呼びにゲームセンターへ向かう。
「俺たちも行くぞ」
「ああ」
関崎と網繋は倉庫へ向かう。
その頃、走達。
「次は、カラオケ行こうぜ」
「はい」
「分かりました」
走達はカラオケに行こうとしていた。
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