15話 ブラックイトコ
「うう、寒っ。」
「緯度が高いからな、うぅ…。」
イトコたちは甲板の中で震え、鼻をすすった。船は北上し、北極圏へと進んでいる。白聖剣クリスタルバスターは、北に広がる大陸にあるらしい。
「俺の炎で皆暖かくしてやるぜ!」
タイキが手から炎を出す。
「おいおい、船に燃え移るだろ。危ないなあ。」
慌ててハルキが水を出して消火した。
「さ、寒っ、何するんだよ!」
ずぶ濡れになったタイキは震えながら叫んだ。
「早く船の中入ろうよ。」
タクヤの言葉に反対する者は誰もいなかった。
○ ○ ○
「着いたぞ。」
メガネくるくる博士が言った。船は静かな晴れた海岸に停泊した。しかし、辺り一面銀世界だ。遠くには針葉樹林の森が見える。
「おい、カツヒロ。新しい斧じゃ。切れ味抜群じゃぞ。」
メガネくるくる博士がカツヒロに斧を渡した。
「よっしゃー、ありがとう、博士。待ってろよ白聖剣、俺が手に入れて見せる!」
カツヒロが鉄砲玉の様に船から飛び出した。
「あいつ、寒いのによく元気でいられるよな。」
ハルキが震えながら言った。
「寒い?何をいっているんだ?こんなのへっちゃらさ!」
船からドシドシと降りて行くのはムッキーだ。その姿を見てタイキやハルキはともかく、カツヒロですら驚愕した。
「ム、ムッキー、お前雪の中をパンイチ…?」
ムッキーはパンツ一丁で雪の中、汗を拭っていた。
「大丈夫だ、鍛えれば強くなる!君たちも一緒に鍛えようぜ!」
「お、俺は遠慮しときます…。」
イトコたちはムッキーから後ずさりをする。
「ワシはここで待っておる。それでは、健闘を祈る。」
メガネくるくる博士に見送られ、五人は雪の中を進んでいった。一人だけパンツ一丁で…。
○ ○ ○
「白聖剣のある場所までは、ゆっくり歩いて約三日かかるらしい。途中に町や村があるから、そこを通って休みながら行こう。」
ハルキがメガネくるくる博士から貰った地図を見て言った。
「そんなにかかるのか。寒いのに…。」
カツヒロは少し不満そうに雪を蹴った。
「見て見て、僕雪だるま作ったよ!」
タクヤが手のひらサイズの小さな雪だるまを見せた。
「お、いいな。可愛いじゃないか。」
ムッキーがそれを掴むと、握力で潰してしまった。ムッキーの太い指の隙間から小さい雪の欠片が零れ落ちる。
「あああ、僕の雪だるま~…。」
「おっと、ごめんごめん、許してくれ。」
イトコ四人がムッキーの筋肉がヤバいことに気付き始めた時だ。突然銀色の平原に女性の声が響き渡った。
「止まれ、イトコどもめ。ここで貴様達を消す!」
イトコたちの前に、四人の若い女が立ち並んでいた。年齢はそれぞれ四人のイトコと同じぐらいだ。
「お前は、ルカ…。」
タイキが険しい表情で睨んだ先には、見覚えのある銀髪の少女が立っていた。
「何で俺達の場所が分かったんだ?」
ハルキが尋ねた。
「そんなこと、教える訳ないでしょ。頭、使いなさいよ。」
ルカの隣にいた長い黒髪をした少女が言った。
「それは、俺の決め台詞…。」
「そうか、君たちは私たちの事知らないのか。じゃあ、自己紹介してあげるね!私はフウカ。よろしく~!」
毛先だけ緑に染まった茶髪の少女が楽しそうに言った。
「アタシはミナリ。覚悟しな、イトコ。聖剣はアタシたちが貰うよ。」
気が強そうな金髪の少女が言った。
「こっちがアタシの姉ちゃん、ルカ。で、そっちの黒髪がフウカの姉ちゃんのナギサ。そんで、アタシたち四人あわせてブラックイトコ。よろしくね!」
ミナリが笑いながら言うと、突然イトコたちの周りに火花が飛び散った。
「あいつ、俺みたいに雷使ってやがる。」
カツヒロがミナリを睨む。
「そうだよ、アタシたちブラックイトコは、あんたとは対になる存在。ダーク・ゴッドから力を貰った最強のイトコだよ!」
「ミナリ、それ以上言うな。あいつらに無駄に情報を与えるのは得策じゃない。」
静かにナギサが言った。
「はいはい、分かったって。とにかく、アンタたちはここで終わりよ。」
バチバチバチっと音が鳴り、一瞬でミナリがカツヒロの傍に現れた。
「クッ、アブねぇ。俺みたいな技使うんじゃねぇよ!」
カツヒロはミナリを攻撃しようとした。
「あ、アタシは闇の力も持ってるからね。アンタより上よ。」
ミナリが手をかざすと、カツヒロは闇に包まれた。視界を失ったカツヒロの背中にミナリは剣を突き刺そうとした。
「危ない!」
ムッキーがミナリを突き飛ばし、カツヒロを助けた。ミナリの周りに他の三人、ルカ、ナギサ、そしてフウカが現れた。雪の中で、イトコとムッキーと、ブラックイトコは睨み合った。
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