6話 メガネくるくる博士の助け
しかし、ダーク・ゴッドと戦えと言われた所で何をすればいいのかパッと思いつく人はいないだろう。四人は暗闇の中、頭を悩ませていた。
「とにかく、戦い以前に生活できる場所が必要だろ。衣食住が整った場所を探さなきゃ、戦死より先に飢え死にしちまう。」
「そうだな。水は俺に任せてくれ。俺が元気な限り、イトコパワーを使えばいくらでも出せるぜ。」
ハルキがそう言って、手から水を出した。。
「なんか汗みたいで嫌だな。」
カツヒロが渋い顔をした。
「俺は火を出せるから、夜でも暖かいぞ。」
タイキも手から火を出した。
「この島から出なきゃ何も出来ない。でも、船は全部焼け焦げてしまった。どうしたらいいんだ…。」
ハルキは頭を悩ませる。
「簡単な話だろ。泳げばいいんだよ、泳げば。」
脳筋な解決策を思いついたのはカツヒロだ。しかし、全員から即却下された。
「明日になれば貿易の船がここに来るだろ。それに乗ればいいんじゃないか?」
タイキが、カツヒロの百倍いいアイデアを思いついた。全員、即賛成した。
「なあ、あれって船だよな?」
ハルキが遠くを指さした。小さな灯りが段々こっちに近づいてきている。大きな船のような形をしている。
「あれは…。」
みるみるうちに船は、跡形も無く破壊された港に入港して来た。高さは三メートルを超えた大きな船だ。梯子が降ろされ、船の上から一人の白衣を着た老人がゆっくりと降りて来た。白くなった髭と、特徴的な眼鏡。丸いフレームに、まるで牛乳瓶の底のようなレンズ。分厚すぎて、渦を巻いている様に見える。頭のてっぺんが剥げている。その割には背筋はシャキッとしている。なんだ、この怪しいおじいさんは?
「君たちがイトコかね?ライト・ゴッドに聞いたよ。」
おじいさんは言った。どうやらイトコ神の知り合いのようだ。
「あの、あなたは…。」
困惑する四人に、おじいさんは言った。
「ワシはライト・ゴッドの知り合いで、たまたま近くにいたもんで、君たちを助けに来るように頼まれたんじゃ。メガネくるくる博士とでも呼んでくれ。皆そう呼ぶ。」
メガネくるくる博士って、そのままじゃないかと思いながら、四人は尋ねた。
「イトコ神の知り合いなんですか?」
「イトコ神?ライト・ゴッドのことかね?」
「あ、そうです。そっちの方が短くて呼びやすいので…。」
「そいつはいい。ワシもそう呼ぶとしようか。」
人は良さそうだ。イトコ神と知り合いとのことだけはあるな。
「ああ、そうじゃよ。長い付き合いじゃ。かれこれ800年程になるかのう。」
「800年⁉あなたはいったい何歳なんですか?」
「ワシは昔、ライト・ゴッド、そうじゃ、イトコ神か。イトコ神を助けたことがあってな。そのお礼に、不老長寿の薬の作り方を教えてもらったんじゃ。おかげで研究がはかどるわい。知識は貯めれば貯めるほど役に立つからのう。フォッフォッフォ。」
いかにも老人というような笑い方で、メガネくるくる博士は笑った。随分と個性の強い人だ。それにしても、神を助けるなんて、相当凄い人なのだろう。
「あの~、この船は…?」
「今からこの船で、お前さんたちと一緒に行く。イトコ神からサポートをしてほしいと頼まれたからな。さあ、早く船に乗りたまえ。」
どうやら悪い人ではなさそうだ。イトコ神から信頼されているのだから尚更だ。四人は頷き、礼を言った。
「ありがとうございます。本当に、助かります。」
「いやいや、お互い様じゃよ。」
じゃが、感慨深いのう。お前たちが、今の選ばれしイトコか…。メガネくるくる博士はボソッと呟いた。
「博士、出発の前に家に行ってもいいですか?」
タイキが言った。
「ああ、もちろんじゃ。」
○ ○ ○
そこには、瓦礫や灰が散乱し、元の形をとどめている物は何一つ無かった。崩れた瓦礫の下には、家族たちが眠っている。四人は手を合わせ、目を閉じた。
「みんな、俺達、戦ってくるから。必ず、仇を討つ。そして、ダーク・ゴッドを倒して世界を守る。」
四人は決意を固め、島を見渡した。中央にそびえる山が、四人の背中を押した。雲が晴れ、一筋の月光が差し込んだ。
これは、『イトコ神』に選ばれた、超個性的な4人のいとこが世界を救う物語である。
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