第五十七話 癖の強い人が引っ越してきました!
バレッタさんと支部長のグロンムドさんとの話を終え、金貨三千枚とランクアップした錬金術師ギルドカードをティーニスさんから受け取った後の帰り道。
「ねえ二人とも、お昼なに食べたい?」
「「肉!」」
お祝いと言うことでバレッタさんから頂いた金貨三枚を使うため、少し遅れた昼食をどこかで取ろうとリタとティナに相談したけど、まあ予想通り過ぎて決まっていた結果だったよ。
「金貨三枚か〜。ミノタウロスの肉もいいけど、たらふく食べれるオーク肉も良いわね」
「ん!ナイスアイデア」
「あのー、一応私のお祝いに貰ったものなんですけどー?」
リタもティナも、私が貰ったようなものなのに好き勝手想像膨らませてくれちゃって。
「というか、お金大量に入ったんだから、少しぐらいそこから使って豪勢にするのもアリね!」
「賛成〜」
「ダメに決まってるでしょ!バレッタさんに貰った分で我慢しなさい」
「「えー」」
全くこの二人ときたら、本当こう言う時だけは揃いも揃って欲しがりちゃんになるのよね。
でも結局、こちらに来るの珍しいからって少々予算オーバーして豪華な食事にしちゃったんだよ。甘いよね私・・・いや、料理が美味しかったから仕方ないってことにしとこう、うん。
「ん〜美味しかったわ、満足満足」
「同意、大変美味だった。ん?」
「ミノタウロスの肉をいろんな料理に使ってあったけど、どれも肉の旨みが香辛料との調和が取れた料理ばかりで凄かったね。特にシチューは格別だった。脂はちゃんと丁寧に処理してあり、煮込む時間も適切で肉は丁度良い具合にほろほろになってて、旨みを凝縮してるのに口当たりの良いシチューとして完成されてた。どうにかその塩梅を試してものにしたいよ」
「(お姉ちゃんこんなキャラだったっけ?)」
「(んーシロ姉凝り性だから、自分がやってる事で興味を惹くものがあると色々考えちゃう?)」
「(あーなんか分かるかも。最近は見ないけど昔は特にぬいぐるみを錬成しては、感触や見た目をああでも無いこうでも無いって何度も試行錯誤してたわね)」
メモを取ってたら二人がだんだんと歩くペース落として少し離れたとこで内緒話始めたよ、風向きのおかげで聞こえてるけどさ。
でもうーむ、たしかに少しはこだわる方だとは思ってたけど、周りから見るとそんなに凝り性に見えてるの?客観的にした自分の評価が少しズレてるのかな。
まあいいや、メモも取り終えたことだし二人にワイドレンジ寄りたいって伝えようっと。
「お二人さん、ちょっとワイドレンジ寄っていい?」
「良いわよー」
「んむ」
二人が面倒くさがらずに二つ返事でオーケーしてくれた。食事が満足だったのか機嫌が良いみたいだね。
というわけで、真っ直ぐ家に帰るのではなくワイドレンジへ向かいましょう!
「いらっしゃいませ、ってシロネじゃない。こんな時間に珍しい・・・リタとティナも連れてほんと珍しいわね」
「ちょっと外出した帰りなんですけど、欲しい物あったので寄らせてもらいました。あ、接客中でしたか邪魔をしてすみません」
おっといけないハルナさん接客中だった。
なんか不思議と目が離せない男性と女性の二人組、どちらも隙がなく、特に女性の方は凄く強そうだ。
「良いのよ、この二人は昔馴染みでいま紹介、」
「あなたがシロネちゃんね!会いたかったよ!」
「ええっ⁉︎」
ハルナさんが二人を紹介しようとした時、気が逸れた瞬間に女性の方が消えた。いや、一瞬で背後に回られた!
「じゃ、ちょっと失礼して・・・」
「ふぇ?」
私が振り向こうとするよりも素早く、背後から伸びてきた女性の手はそのまま私の胸にまで来ましたね。はい。
「ゲット!」
「ぴゃあーーー!」
もうね、ここまできたら分かってましたけど、まさか初対面の方に揉まれるなんて思ってもみないじゃないですか。つい情けない声を上げちゃいましたよ。
はぁ、これが私達とイリスさんとの出会いです・・・。
「あーはっは!ごめんごめん、紹介の邪魔しちゃったねー。ささ、続きをどうぞどうぞ」
「もうそれは自分でしたらどう?シロネってば、今はあなたしか見てないわよ」
「フー!フー!」
警戒心マックス!この人は危険過ぎる。
いきなり胸揉んできたのもあるけど、この人絶対強い。もしかしたらお父さん並みかもしれないから目が離せない。
私は目の前に現れた強敵?を前に、二人を守るため戦闘態勢を取っていた。
「おら、まずお前が謝れや」
「あいたっ⁉︎」
女性の方ばかり見ていたけど、男性の方も当然視界の端に収めている。二人のうち先に動いた男性は、胸を揉んできた女性の背後まで向かうと、その後頭部へ思い切りチョップをかましました。
「すまねえなお嬢様方。このバカが迷惑を掛けたな。俺はディアス。で、こいつはイリスだ。迷惑掛けちまったお詫びに、こいつを煮るなり焼くなり好きにしちまっていいぞ」
「ちょっとディアス、それは酷いんじゃない?」
「あ?」
「えへへ、ごめんねシロネちゃん。とっても可愛いくて胸が大きな女の子見て、つい手を出しちゃったんだ」
ひえっ⁉︎この人怖いっ!
もしかしてソッチの人かもしれない。別の意味で警戒心が限界を突破して振り切れちゃったよ!
もし戦闘になったら身体能力を押し付けて組み伏せようとしてたけど、これは距離をとりやすいヒットアンドアウェイの戦い方に切り替えなくては・・・。
私は謝罪と取りたくない言い訳付きの言葉を流し、腕を上げて構えステップを踏む。パンチをメインにした動きやすい姿勢へ移し、足は止めないよう心掛ける。
「あ、あれ?本当にごめんなさい。私達は何でも屋をしていて、バレッタに呼ばれてやって来たの」
私が戦闘態勢を取り続けるのを見て焦ったのか、今度はちゃんと謝罪を述べた上で関係者であることを伝えてきた。
私は無言でハルナさんへ視線を向けると、意図を理解したのか証明してもらえるみたい。
「この二人は私やアンディとの昔馴染みで、バレッタとも仲が良いわよ。で、何でも屋ってのもちゃんとやってるわ。あとイリスはどちらもいけるみたいね」
「やっぱり⁉︎」
「ちょ、最後のいらないでしょ!」
やっぱりアブナイ人なんだ!
知人の知人ってことで、構えていた腕は下ろしておくけど、先のこともあるからリタとティナに近づけないよう警戒だけはしておこう。
「では改めまして、私はイリス。大切な人達から貰ったこの名前に懸けて、仕事でもあなた達に危害を加えないと誓うわ」
「胸揉まれました」
「え、あれはスキンシップで・・・あ、ごめんなさいおふざけが過ぎたみたい。大丈夫、次はもっと仲良くなってからするよ」
「何も大丈夫じゃないです」
あんなのを初対面のスキンシップとして許せるのか?勿論ノーである。それに仲良くなったからって関係なくお断りです。
「・・・・・・」
「あーえっと、じゃあシロネちゃん達には特別に何でも屋の相談費、三分で銀貨一枚でやってたんだけど相談だけなら無料にしておくから許して。ね?ね?」
「おいっ」
「・・・・・・まあ良いです。それで、その何でも屋ってのは?」
何でも屋。正直イリスさん達を警戒してる時も気になってはいた。一体何でもとは、どこまでが何でもなのだろうと。
「ふふっ、よくぞ聞いてくれました!私達何でも屋は普通に犯罪は手を貸さないわ。それ以外は出来る限り報酬あるならするよ」
「えーと?」
「護衛、採取、討伐といった冒険者の仕事、掃除や荷物運搬もするし、あとは犯人探しみたいな探偵の真似事や、善意ある人に代わり復讐に手を貸して処理することもあるね」
つまり、冒険者や探偵の真似事までは理解できる。しかし、復讐はどうなんだろう。やり返すとしても結局相手が亡くなれば普通に重犯罪では無いだろうか?
「(・・・普通にアウトよね)」
「(ん、手を出したら一緒)」
背後でコソコソ話す二人も同じ意見なようで良かった。これでもし犯人は血祭りだーって襲うような考え持ってたらショックだったよ。
「うんうん、三人が言いたいこと分かるよ。でもね犯罪者を正しく捌けない場合や捕まえれない場合、被害者やその親族のことを考えると必要悪としてあってもいいと思わない?三人だってその中から一人、誰か怪我させられたら相手をどうする?」
「「「潰す!」」」
「そうよね。私達何でも屋はそれを代行して相手にお返しするの。当然、事前捜査はちゃんと行って、相手に非があるのを確認してから実行するから」
逃げた犯人なんかが村や町の外で盗賊になり、結局合法的に討伐されたりもする。賞金首になると、バウンティハンターみたいな賞金首を執拗に追い回す賞金稼ぎみたいな人もいるから、必要悪と認めて被害者のため、やり返される理由をちゃんと精査して行動に移すイリスさん達はまだマシなのかも?
「納得できなくとも、ある程度理解してくれたみたいだね。でもこの街ではそういった仕事は無さそうだから助かるよ。ね、元黒纏のクルルちゃん」
「「「え?」」」
イリスさんは私達の背後、この大きな建物を支える太い柱、その周囲をぐるりと巻くように商品が並べられている所に視線を向けてクルルちゃんの名前を呼んだ。
すると、そこからひょっこり現れたクルルちゃん。
一体いつから居たんだろう?私達が入って来た時も話してる時も、そこに気配なんて無かったのに。
というか、クルルちゃんが元黒纏?話に聞いていたこの街の憲兵とは別の取り締まる人達だったよね。
「流石、暗部とも関わりある人ですねイリス様。私ご自慢の隠密能力も形無しですか」
え?いつもの可愛くて甘え上手なクルルちゃんどこ?てかイリス様ってなに?
なんかクルルちゃんがスッと鋭い目をしたクールな、それでちょっと怪しい雰囲気を漂わせる女の子になっちゃったよ!でもこれはこれで可愛いのは変わってないんだけどね!えへへへへ。
「シロネ、ショック受けてない?あの子お仕事モードなだけだから、別に今までのは騙してた訳じゃなくて、あの無駄に明るくてあなたに甘えるのが好きな方が本質に近いのよ」
「はい、分かります。どちらも可愛くて捨てがたいですよね!」
「ええそうな、の・・・え?えぇ・・・・・・」
「何なら会うたび交互に接してくれないかなー?甘えん坊モードの時はたくさん撫で回して、クールモードの時はベタベタ触れ合わず、その怪しい雰囲気をじっくりたっぷりお話しながら観察して愛でたいですね」
ん?ハルナさんどうして離れるのですか?
なんで心配して損した、と言い捨てたのですか?
なんだか分からないけど、心配してくれたのですねハルナさん、ありがとうございます。でも私、病気になったり怪我した事ないですから大丈夫ですよ。
「それじゃ、頼んだよ」
「承りました。では・・・」
む、ハルナさんと少し喋ってたらアチラもお話し終わってた。何かイリスさんがクルルちゃんに頼んだそうだけど内容聞き逃しちゃったし、クルルちゃんがすぐどっか行っちゃったよー・・・ぐすん。
「よし、話を戻すけど仕事は殆どなんだって受けるわ。相談費もシロネちゃん達なら無料にしてあげるから、気軽に遊びに来てね」
「相談費無料はまあ良いが、なるべく依頼を頼みたい時だけ頼む。騒がしいのはこいつだけで充分だからなー」
「じゃ、またね〜」
・・・あれ、もう行っちゃった。
嵐のような人達・・・いや、人だったなー。ってあれ、そもそもその何でも屋どこにあるの?んー、ハルナさんなら知ってるかも?
「シロネの拒否反応見てたから、行かないので知らなくても良い、って言うと思ってたわ」
「一応ですよ一応。もしご近所さんでしたら、少し警戒しておきたいので」
「警戒って・・・分からなくも無いけど。それで場所なんだけどね、地図は・・・・・・あったあった、イリス達はここに何でも屋を開いて、そこで暮らしてるそうよ」
ふむふむ、ここって私達の家の近くだ・・・。
正面玄関の門から出た道を挟んだ向かいの家の脇道を通って一本目の路地を曲がってすぐ・・・・・・。
「って、家ひとつ挟んだだけじゃん!すんごいご近所さん⁉︎」
「何これ、狙ったんじゃないの?」
「ん、偶然にしても近すぎ」
やっぱりバレッタさんが仕込んでそうだよね。呼ばれたとか言ってたし。何故近場に腕利きを置いておくのか理由は分からないけど、する事はひとつだよね。
「リタ、ティナ、敷地にトラップの増設を許可します!」
「「え、やったー!」」
とりあえず、リタとティナがあの魔の手が掛からないように備えれるだけ備えておこう。
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