第8話 夜の眠り姫
夜になり何人もの侍女が、オフィーリアの眠る部屋へと入ってきた。侍女達の話し声やら、賑やかな物音でオフィーリアの意識は覚醒した。
と言っても、はたから見たらオフィーリアの瞼は閉じたままであり、眠っているようにしか見えない状態だ。オフィーリアはまた、意識の世界に現れた映像を通して、外の世界を映画やテレビを見る感覚で見ていた。
「オフィーリア様、湯浴みの時間でございます」
(湯浴み……お風呂って事?)
「では、失礼致します」
侍女の一言と共に、掛けられていた布団が剥がされ、上半身が起こされる。
そして手際よくフリルがついた真っ白な寝巻きが脱がされていく。
(いやぁぁぁぁぁぁ!!)
いくら女同士と言えど、肌を晒して恥ずかしくない訳がない。なのに侍女は慣れた手つきテキパキとオフィーリアの寝巻きを脱がし終えてしまった。
「丁寧にお運びしますよ。せーのっ」
掛け声と共に、シーツを持ち上げてそのまま浴室へと運ばれる。
シーツを持ち上げた瞬間の浮遊感に、ちょっとしたアトラクションを体験している気分になった。
(ひええええ!!)
浴室付近まで運ばれると、寝巻きのみならず下着までも、全てひん剥かれてしまった。身体は眠ったままのオフィーリアでは抵抗など出来る訳がなく、まさにされるがままになっていた。
あまりの羞恥にいっそ死にたくなるが、自分以外の人達は何とも思っていないらしく、単なる作業として淡々とこなされていった。
侍女達数人がかりで身体や髪を丁寧に洗われ、色んな手が自分の身体の至る所を洗っていく感覚に、頭でひたすら絶叫をし続けていた。
声が出せるのであれば、間違いなく枯れるまで叫び続けた事だろう。
身体を丁寧に拭かれた後、全身や髪に香りのいい香油が塗られる。髪を櫛で梳かされ、身体はマッサージが施される。
エステを受けている気分と思えば、悪くはなくむしろ贅沢な気さえしてきた。
オフィーリアは、エステの経験はないが想像だとこんな感じなのだろうと思っていた。
寝ているだけの時は、もしかしたら映像を見ているだけで、私は皆が呼ぶ「オフィーリア」では無いのではないか。その可能性も考えていた。だが、実際に着ている物を全てひん剥かれて、運ばれて、洗われるという身体の感覚と映像がリンクしていたのである。
やはり自分がオフィーリアと呼ばれる存在なのは、間違いないようだと確信した。
(そりゃあお風呂にも入れて貰えずにずっと放置されるのも嫌に決まっている。だけど…だけど早く目覚めたい!このままずっと介護されるなんて嫌だ!!お風呂くらい一人でゆっくり入りたい!)
眠り姫はそう強く思ったのだった。
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