第三話 歓迎会

「……………………」




 大きな声で出迎えられた迫力に黙ってしまった僕を見て、してやったりと声をあげる子供達。




「イエーイ!! サプライズ大成功かな!!」




「くくっ、、びっくりしてる顔おもしろーい」




 僕は今そんな変な顔をしてるのだろうか…ふと美穂さんが僕に耳打ちしてきて




「驚いたよね。みんなソラ君の為にサプライズを準備してたんだ。」




 そんな言葉に、嬉しさよりも戸惑いがあった。なんで僕なんかの為に…


 すると、今度は子供達が僕に群がってきた。




「はじめまして!お名前は?」




「好きな食べ物は?ぼくはオムライス!」




「好きな漫画とかゲームはある?」




 急にまわりからの質問攻めに僕は動揺してしまう。




「えっ…その………」




「手に抱えてるのは何これ?」




 ふと、一人の子供が僕の抱えていたグローブに触れようとして




「っ!?ダメッ!!」




 僕はグローブに触れられないように更に強く抱え込む。




「………………?」




 そんな僕に、みんながキョトンとしていると、美穂さんの声がかかり




「ほらっ!急にみんなで詰め寄ったらソラ君びっくりするでしょ。とりあえずまずはお腹すいてるだろし、ご飯にしましょうか!」




「「「はーい!!」」」




 美穂さんの号令に、子供達が元気よく反応しそれぞれが居間の真ん中にある大テーブルに座る。




「ソラ君はこっちね」




 ミホさんに案内された席に座る、左には美穂さんそして右には




「よう………」




 たぶん、すこし年上か同い年くらいの僕より少し背の高い男の子がぶっきらぼうに挨拶した。


 そんな彼に、無言で頭を下げる。




「無愛想な奴………」




 男の子はつまらなそうに、僕から視線を外した。


 そんな僕らのやり取りを苦笑して見守っていた美穂さんは、みんなが座ったのを確認し




「それじぁ、食べようか!いただきます!」




「「「いただきまーす!!」」」




「いただきます………」




 テーブルの上にはカレーと唐揚げが用意されていて、子供達は夢中になりながらおいしそうに食べている。それに反して僕は、ゆっくりとカレーを口に運んでいた。




「ソラ君、どう?おいしい?」




 心配した様子で僕に問いかける、




「はい、おいしいです」




「そっか………」




 確かに、このカレーも唐揚げもおいしいけど、


 僕はこれよりもおいしいカレーと唐揚げを知っている。




 ****** 




 食事が終わり、みんなで片付けをしたあとに美穂さんがみんなを集めた。 




「さて、ご飯も食べたしお待ちかねの自己紹介タイムです!」




 パチパチと拍手があがる。




「それでは、ソラ君!自己紹介お願いします!」




 美穂さんに促され、みんなの前に立つ僕。




「 ……… 上条 空です。これからお世話になります」




 ペコっと頭を下げる僕に、今度は美穂さんから自己紹介が、




「はい、今度はこっちの番ね!まずうちの長男から」




 紹介されたのは、先ほど隣に座っていた背の高い男の子




「この子の名前は、ユウキ(祐樹)みんなの頼れるお兄ちゃんでソラ君と同い年!」




「おいっ」




 睨みつけるように僕を呼ぶ




「お前、何月生まれだ?」




「えっ?6月だけど?」




 すると、ユウキと呼ばれた男の子はフッと顔を緩め




「俺は五月生まれだから、調子に乗るなよ」




 上から目線のユウキにまわりの子供達はヤレヤレ顔、そんな僕もなぜか少しむかついた。


 次に紹介しされたのは、さきほど玄関で話しかけてきた三つ編みの女の子で




「この子の名前は、フミ。「すずらんの家」のしっかり者のお姉さん。ソラ君の一つ下の子」




「よろしくね!ソラお兄ちゃん!」




 先ほどとは違い愛想よく挨拶をしてくれる。




「次はこの子、ハヤト。すずらんの家きってのマイペースで食いしん坊さん」




「よろしくね~」




 ぽっちゃりとした男の子が気だるげに挨拶をする。




「最後にこの二人!アヤとジュンタ。この子達は同じ日にこの家にやってきたの」




「アヤだよ~!!」 「ジュンタ~!!」




 5~6歳ほどの女の子と男の子が元気よく自己紹介をし全員の紹介が終わる。




「この子達がわたしの大切な子供達…そしてキミの新しい家族・・・・・」




「っ………!?」




 家族と言う単語に顔をしかめるソラ。




「もちろん、ソラ君にはまだ新しい環境で難しいと思うけど、わたしが全力で助けになるからこれからゆっくりと家族として支えていくから…」




「……………じゃないです………」




「えっ?」




「家族じゃないです………僕の家族はお父さんとお母さんだけです」




 ギュッとグローブを抱きしめて、拒絶するソラ。




「おいっ、てめぇ………!」




 ユウキがソラの言葉に反応し、空気がピリつく。




「ユウキ!!」




「っ!?でも!………」




 何とかユウキを宥めて、もう一度ソラと向かいあう美穂。




「………確かに、ソラ君は今、受け入れられないかもしれないけども」




 亡き親友たちに誓う。




「わたしが、わたしたちがソラ君の新しい家族だって誇れるようにしてみせるからね。」




「……………………………」




 この子を幸せにしてみせると、わたしが決めたから………………




 梅雨があけ初夏に差し掛かろうとする季節。ソラの新しい生活が始まろうとしていた。

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