転生したら王子様だった?!〜推しキャラの悪役令嬢を救いたい〜
入江 涼子
エリック3歳編
1話
俺はかつて現代社会の日本で生きるしがないOLだった。
名前は新堂矢恵(しんどうやえ)といい、28歳くらいまで生きていたのを覚えている。確か享年も28くらいだったはずだ。
俺こと私は科学技術が非常に発達して便利な物で溢れかえった国で生まれ育つ。日本は平和で豊かで自由な所だった。私もその恩恵を受けていた。
そんな私は彼氏もおらず、独身で一人暮らしをしていたが。田舎のとある地方に元々は住んでいて両親と姉が一人、弟が一人の五人家族だ。大学までは地元にいた。就職を機に上京して一人暮らしを始めた。
高校生の頃から私はアニメやラノベが大好きだった。上京してからできた同僚もとい友人の容子(ようこ)に乙女ゲームなるものがある事を教えられた。それをきっかけにどっぷりとはまり始めた。その中でお気に入りだったのが「華やかなる貴公子達~フォルド王国物語~」だった。
容子も気に入っていてよくフォルド王国物語では盛り上がっていたのを今でも覚えている。私は年月が経つにつれてフォルド王国物語を完全コンプリートして第二弾が出てきたので楽しみにしていたが。第二弾が発売される前に不慮の事故によりあの世に逝ってしまう。でも自分がヘビーユーザー、コアなファンだった事は否定できない。そうして気がつけば、フォルド王国物語の中の世界に転生していた……。
しかも嫌な事に男で攻略対象の一人ー王太子のエリックだったのだから神に文句を言いたくなったのは言うまでもない。
私いや俺が正確に前世を思い出したのは3歳の時だった。ちなみにその日は婚約者候補としてフォルド王国物語の悪役令嬢として有名な(元の故郷の日本では)シェリアたん、ややこしいのでシェリア・フィーラと引き合わされていた。彼女の顔を見た途端、俺の頭の中に大量の情報と一人の女性が言う声が響いたり駆け巡ったりする。
女性はこう言った。
<あー、やだやだ。よりにもよって何で私がシェリアたんをフるアホ王子なのよ。むしろ、モブに生まれ変わらせなさいよ。あんのバカ神。今度会った時は覚えてろよ!!>
(……何で俺がアホ王子呼ばわり。それにこの女。見覚えがある?!)
俺がそう思ったらズキンと強い痛みが襲う。頭の中がぐちゃぐちゃになる。それにシェリアたん。そうだ、私はこの子がすごく好きで憧れで。なのにいつも酷い目に遭うから助けたくて。ゲームではシェリアたんを救えずにいつも嫌だった。何でこんないい子が処刑なんだ。幾ら何でも製作陣やり過ぎだろ。
そう文句を言いたくてたまらなかったんだ。俺は3歳児なのにシェリアたんを抱きしめたくなる。けどそうはいかなかった。体と頭がキャパオーバーを起こしたのだ。
そりゃあそうか。3歳児にはこれだけの情報量は負担がとてつもなく大きい。
ふらあと立ちくらみがきた。はたと見ると涙を目一杯に溜めて悲しげにしているシェリアたんがいる。
「……ごめんなさい」
「……でんか?!」
小さな可愛い声でシェリアたんが俺を呼んだ。謝りながら俺は意識を手放したーー。
俺は2時間後くらいに意識を取り戻した。寝室には誰もいない。自分でベッドから起き上がり降りた。そうして異様に低く小さな体で一生懸命にペンと紙を探した。骨が折れたが何とか紙とペンを見つけてまだ大きな机に備え付けられた椅子によじ登る。
そして俺は必死にフォルド王国物語のストーリーや主人公、悪役令嬢たるシェリアたんの事などを思い出した。確か、フォルド王国物語のストーリーが本格的に始まるのは主人公のアリシアーナが王立学園に途中編入する所からだったはず。
「確か、シェリアたんはエリックの婚約者でもう一人の攻略対象のトーマスの妹。見かけはきつい美女だが。性格は穏やかで温厚。なのに何故悪役なのか。シェリアたんはエリックを昔から好きで。最初はアリシアーナに嫌がらせをしないんだよ。けどシェリアたんを王妃にさせたい貴族でスフィア侯爵が画策。侯爵は言葉巧みにシェリアたんに近づき、王妃になりたければアリシアーナを追い詰めろと囁く。シェリアたんは徐々に策に嵌まり苦悩する。アリシアーナがエリックと恋仲になり嫉妬にもかられてついに。アリシアーナを誘拐させ、殺そうとした。それをしたせいで侯爵に裏切られシェリアたんは断罪される。エリックルートとトーマスルートではもれなく処刑だったよな」
俺は処刑とはっきり思い出して血の気が引いた。おいおい、もし俺がアリシアーナと結ばれたらシェリアたんが無事ではないではないか!!
んなエンド、こちとら願い下げだっつーの。よし、俺はシェリアたんのためなら悪役にもなってみせる。何が何でもあの子を処刑と修道院行きエンドから救うんだ!シェリアたんはエリックルートの場合、処刑エンドにまっしぐらでトーマスルートもそうだった。侯爵はいけしゃあしゃあとエリックやアリシアーナに協力しシェリアたんを陥れる。このゲームの真のラスボスといえよう。
そこまで考えて俺はふと閃いた。シェリアたんが俺を嫌いになればいいんじゃないか?そして別の奴を好きになるように仕向ける。自分が辛い思いをするがシェリアたんを救うためなら耐えてみせましょう。俺は一大決心をして紙とペンを用意した。ゲームのストーリーと人物、時系列などを詳しく書き込んでいったのだった。
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