第132話 Side - 15 - 70 - ごんどらにのりたいのです! -
Side - 15 - 70 - ごんどらにのりたいのです! -
「わーい!、ベネツィアっぽい街だぁ!」
「そんなに嬉しいか、ここがラングレー王国の港街、カルタスだ、この街のすぐ西に王都がある、それにさすがアメリア嬢ちゃんだ、俺が指定した場所に正確に転移したな」
「お家の屋根が全部茶色!、水路が沢山あって・・・わぁ、ゴンドラだ!」
「気に入ったみたいだな」
「前世でね、こことよく似た街に行きたくて頑張ってお金を貯めてたんだぁ、でも私って引きこもりだから4回行けるくらいのお金が貯まったのに行かなくてね、結局行かないまま死んじゃったの」
「そうか、そりゃ残念だったな、だがこれから向こうにある街・・・ベネ・・・なんとかって街にも行く機会があるだろ、不老不死なんだから」
「理世ちゃん、ベネツィアに行きたいと思ったのって、もしかしてあのアニメの影響?」
「そう!、私はアニメもだけど、お父さんが持ってた原作漫画の方を読んでハマったの、それからDVDで観たアニメも良かったからいつか行きたいなぁって、だから嬉しいな、あ、そうだ、もしかして・・・ARIAカ⚪︎パニーは・・・無いよね、サンマルコ広場も無いっぽいし」
「ふふふ、実は私もあのアニメを1期から観ていたのだ!、あれを見て疲れた身体を癒していた、毎週楽しみにしていたのだ、その時は今とは別の県に住んでいたのだが放送時間が遅くてな、冒頭の10分くらいで寝てしまって翌日録画したものを観ていた、2期からはアニメ専門チャンネルがある衛星放送に加入したぞ」
「わぁ・・・その時私、まだ幼児だよ・・・あれが放送されたのって確か18年前・・・この世界の時間経過も入れたら30年近く前だよね」
「なん・・・だと・・・そうか、うむ・・・私的には「ちょっと前」という感覚だったのだが・・・そうか・・・もうそんなになるのか・・・」
「言ってる意味は全く分からんが、なんとなく2人の趣味が似てるのは分かった、それでどうする?、まだ宿に行くには早いし、その辺を歩いてみるか?」
「はい!、博士ぇ!、私ゴンドラに乗りたいのです!、できれば女の人が漕いでるやつ!、そういうのってある?」
「ゴンドラ漕ぎはほとんど男だが・・・観光客向けに女性がやってるのも観た事があるな、じゃぁそれに乗るか」
「あ・・・理世ちゃん・・・まぁいいか、楽しそうにしてるし、ここで口を挟むのも野暮だ」
「さて乗ろうか、漕ぎ手のお嬢さん、よろしくな」
「・・・うっす」
「どうした嬢ちゃん」
「・・・思ってたのと違うのです・・・いや、何でもないのです・・・」
「じゃぁ行くっすよー、揺れて落とされないように手摺りをしっかり捕むっす!」
ムキーン!
ギギギ・・・ミシッ・・・
「ふん!」
すぃー
一漕ぎで動き出した・・・よく考えてみたらそうなのです、ゴンドラって体力要るから華奢な女の人には漕げないのです。
私の目の前にはお父様くらいの身長があるいかつい女の人、腕の筋肉すごっ、お腹の見える服着てる・・・っていうか普通の人用のシャツをパッツンパッツンに着てるからお腹が見えてるだけだろうけど、腹筋が割れてるのです・・・。
「ちょっと思ってたのと違ったけど楽しかったぁ!、・・・街も綺麗だしお水も綺麗、下の方までよく透き通ってお魚泳いでるのが見えるよ」
「うっす!、ここは30年ほど前までは生活用水が入ってかなり水が汚れていたっす、でも観光客に沢山来て欲しいから王様の命令で下水を整備して水路を徹底的に掃除したっす、だから水路にゴミを捨てたら厳しく取り締まられるから注意するっす、軽くても罰金で金貨3枚取られるっす」
「そうなんだ・・・」
「観光案内ありがとうよ、俺は何度もこの街に来てるが、ゴンドラに乗って水路を観光したのは初めてだ、こんなのんびりした旅も悪くないな、楽しかったよ、お嬢さん名前は?、そのうちまた利用させてもらおう」
「うっす、ありがとうっす、私の名前はミッフィー・コングって言うっす、仲間からは「フィーちゃん」って呼ばれてるっす、今後ともご贔屓にお願いするっすよ、次は料理が美味しい穴場のお店やあまり知られていない綺麗な場所も紹介するっす!」
「フィーさん、いかついけどいい人だったね、案内も丁寧で分かりやすいし、楽しかった」
「そうだな、強そうだったから最初は驚いたがな」
「私、この街に拠点を作ろうかなぁ」
「・・・拠点は俺も持ってるぞ、元は食堂をやってた店舗の廃墟だ、例によって掃除をしてない汚い店だから嬢ちゃん用に1つ作っておけばいいだろう、この街は何かと便利だ、嬢ちゃんは金持ちだから大抵の物件は買えるだろう」
「実は私はフィーちゃんの観光ゴンドラに何度か乗った事があるのだ、その時は姿を変えていたから今日の私と同一人物とは気付かれなかったが、彼女の紹介してくれるお店はどれも美味しくてね、とても信頼できる人なのだよ」
「だからアメリア様、このゴンドラの乗り場に連れて来てくれたんだね」
「そうだね、じゃぁ次はあそこのカフェで休憩しよう、あのお店のチーズケーキは美味しいのだ」
「立派なお店だねー」
「そうだな」
「わぁ、本当に美味しいのです!」
「そうだろう、私のお気に入りのお店なのだ」
「小説なんかだと知らない国に旅をして、のんびりとカフェでお茶をしていたら事件があるよね、喧嘩が始まったり、孤児の子供が荷物を盗んでそれを捕まえたり・・・私たちが面倒な事に巻き込まれるの」
「何でだ?、アメリア嬢ちゃんも頷いてるが・・・俺は何度も来てるが事件になんて巻き込まれた事がないぞ」
「そりゃ作者的にその方が面白いからだよ、ここでお茶してあぁ楽しかったねー、で終わっちゃうと退屈だって感じた読者が離れるの」
「言ってる意味が全く分からんが・・・そうなのか」
「そうなのです」
「この後宿に行くんでしょ、私はここでお別れだ、明日ローゼリアの王都で仕事なのだ」
「それ前にも言ってたよね、掃除屋のお仕事でしょ」
「あぁ、実は依頼内容は人に言わない事にしてるんだが、理世ちゃんにも関係がある内容だから話しておこうかな」
「え、関係あるのです?」
「人探しの依頼でね、家出した娘を探してくれって言われた、名前はセシル・ミューラー12歳、片方の目を怪我していて眼帯をしている、左足にも酷い怪我、そんなに遠くに行けないから王都の中に隠れてるんじゃないかって言ってたな」
「えぇぇぇ!、私の囮役の子だ、でも何で家族が・・・」
「私はその子の事情を知っている、家族に虐げられてるんだってね、では何故探しているのか・・・心配はしていないと思うよ、怪我させたのは家族なんだから、王家に対して行方不明になったから責任を取れって交渉してるみたいだし、今出て来られたらまずいって考えてるんじゃないかなぁ」
「じゃぁ見つかったら・・・殺されちゃう?」
「うん、それも依頼に入ってる、行方不明の娘を見つけて安否確認、死んでいたら証拠を持ち帰って報告、生きていたら殺して死体をどこかに捨てろってね」
「アメリア様、殺しちゃうの?、ダメだよ!、あの子私たちのせいで・・・」
「依頼者の金払いがしょぼくてね、あの金額じゃ王都を1日探す実費だけで予算オーバーだ、恐らくその両親は裏の世界の事を何も分かっていないし相場も知らない小悪党だろう、依頼の交渉も本人じゃなくて代理人の執事が来た、ひどく上から目線の偉そうな執事がね、気に食わないんだよねぇ、そういうのって・・・、普通なら馬鹿にするなって依頼を断る所だけど、家出娘の名前を聞いて受ける事にしたのだ」
「アメリア様、怖い顔になってるのです・・・」
「ふふふ、ま、死んだ事にしようとは思ってる、探してみて自分の力で頑張って生きてるなら放っておいてもいいだろうし、困ってるか、死にかけてたら、本人の意思を聞いて、ちゃんとした生活ができるところ・・・他の国とかね・・・そこに転移させてあげようかな、その辺はまだ決めてない」
「でも何でアメリア様そんな事まで知ってるの?、囮の件や宰相の事も王家が情報を隠してるから知らない筈だよね」
「私を誰だと思ってるのかな、建国の大魔導士で、陰陽師の安倍晴明、主なお仕事は戦争、暗殺、国政、隠密、情報操作、その気になれば理世ちゃんの持ってる下着の色まで調べる事ができるよ、それにその子だって探索用の形代を100体、王都にばら撒くからね、その100体が全て私の目と耳になるのだ、2日もあれば探し出せるだろう」
「やばいな、敵にしたくない人間だ」
「ははは、まぁ理世ちゃんは私の子孫だし博士は命の恩人だ、敵になる事はないよ、じゃぁ私はこれで失礼しようかな、また何かあったら連絡してね・・・博士もまたね、仲良くなれて嬉しいよ、お互い仕事が落ち着いたら魔法や魔道具のお話を沢山しよう」
「あぁ、まだ色々と聞きたい事があるからな」
「アメリア様行っちゃったね、カフェのお金、私達の分まで払ってくれてたし」
「あぁ、俺らが払おうとした時には既に全員分払って出て行った後だったからな・・・経費で落ちるのに」
ざわ・・・
「あれ、向こうのほうが騒がしいね、この国の騎士様がいっぱい・・・誰か偉い人が居るのかな?」
「行ってみるか」
「うん」
「なぁ、この騒ぎは何だ?」
「あら、知らないのかい、今日はこの街にローゼリアの王女様が視察に来るんだよ、元々は明後日、第2王子殿下の結婚式が王都であってね、ローゼリア国王陛下の名代(みょうだい)で出席されるのさ、うちの国王陛下はこの街を観光名所にしようと熱心でね、是非視察をって話になったらしい」
「へー、ローゼリアの王女様が来てるのかぁ・・・ってそれリィンちゃんだよね!」
「そうだな、そういえば王女殿下はしばらく国外の行事で留守って言ってたな・・・陛下が」
「あれ、王女殿下を見た事あるのかい?、大変美しい御方だって噂だからね、街の奴らが一目見ようと詰めかけてるんだよ」
「あぁ、俺たちはローゼリア王国の人間なんだ」
「そうか、なら国の自慢の姫様を見る為にここに来たのかい?」
「まぁ・・・そんなところだ」
「来たぞぉ!、来たぞぉぉぉ!」
「わぁぁぁ・・・」
「きゃぁ・・・かわいい!」
「髪つやつやで綺麗・・・」
「ローゼリア万歳!」
「ひーめ様!、ひーめ様!」
沢山の人が道の両側に集まる中、物々しい警備の奥から馬車(引いてるのは本物の馬)がやって来ました、私たちは屋台で買った肉串を食べながらその様子を見ています。
屋根が付いてない装飾付きの馬車の座席には死んだような目をしたリィンちゃん、作った笑顔を観衆に振り撒き、手を振っています、・・・あ、後ろに護衛のトリエラさんも居る。
「腕、疲れそう」
「そんな事言ってやるな、他国との交流は大事な仕事だ」
「もうすぐ私たちの前を通るね」
「そうだな、もっと前に行こう、あそこが空いてるぞ」
「うん」
「お、よく見えるな、いい場所だ」
「来たぁ!、手を振っちゃえ・・・、リィンちゃーん」
「おっ、王女殿下が俺らに気付いたぞ」
「あ、「何でここにお前らがいるんだよ!」って顔になった、私、付き合いが長いから表情で何を考えてるのか分かるのです!」
「嬢ちゃんの肉串ガン見してるな、腹が減っているのか」
「食いしん坊なだけだと思うよ」
「そうか・・・、通り過ぎたのにまだ後ろを向いて見てるな、肉串を・・・」
「・・・行っちゃったね、後ろ姿に哀愁が漂ってた」
「まぁ、この後3日くらいは晩餐会や式典、謁見があるだろうから当分は忙しいだろうな」
「博士ぇ、予想通りリィンちゃんの指輪から呼び出しが入ったよ」
「あぁ、転移先は多分ラングレー王国の王城だろうから国際問題にだけはならないよう気をつけてな」
「じゃぁ、カフェに売ってた美味しいケーキと、肉串をお土産に持って・・・行って来るね」
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