第129話 Side - 15 - 69 - あれはほんもののろりこんだった -

Side - 15 - 69 - あれはほんもののろりこんだった -



「ふぁぁぁ、一昨日は楽しかったね、博士ぇ」


「昨日だろ・・・あ、そうか嬢ちゃんは日本に戻ってたんだな、弟くんの様子はどうだった?」


「うん、お買い物いっぱいしたの、ショッピングモールでお洋服買って、レストランで美味しい食事、それからゲームセンターで遊んだよ、動画見る?」


「・・・おい、何で弟くんは女装して泣いてるんだ・・・」


「あ、間違えた、こっちだ、ほら、ショッピングモール、田舎だけど賑やかでしょ」


「いや、さっきの映像が衝撃的過ぎて次のが頭に入ってこないんだが」


「コナンザがあまりにも可愛いから女装させたらどうかなって、女性用の可愛いお洋服買って、お家に帰って着せてみたの、本人は黒のフリルがいっぱい付いたゴシックドレスっぽい服が欲しいって言ってたんだけど、あれは教育に悪いからこっちの白とピンクのにしたの、お家に帰ってもお姉ちゃん酷い、黒い方がかっこいいのにって泣いてたけどね、その時の動画だよ」


「・・・」


「いやなんか言ってよ」


「なぁ」


「何?」


「1つくらい弟くんの欲しいもの買ってやれ、流石に不憫になってきたぞ」


「うーん、どうしようかなぁ・・・変な趣味に目覚めたら困るし・・・」


「いや黒のドレスが欲しいって言ってる時点で変な趣味に目覚めてるだろ」


「それでね、これがゲームセンターのやつ、あ、ゲームセンターっていうのは遊技場でね・・・」


「ここでも泣いてるじゃねぇか!」


「あぁ・・・これはUFOキャッチャーで・・・ほら、これで景品を掴んでこの穴に入れたらもらえるの、それでね、この大きなぬいぐるみが取れなくて泣いてるの、日本に居る弟の龍之介が取ってあげたけどなかなか泣き止まなくて」


「・・・」





私と博士は泊まっていたお部屋を出て一階のレストランに朝ごはんを食べに来ました、今日の午前中はこの周辺を散策してお昼過ぎにラングレー王国の港街に転移するのです!


「あれ、アメリア様」


「やぁ、理世ちゃん、博士、おはよう」


レストランでアメリア様がピザをもきゅもきゅ食べていました


「まだ居たのか」


「昨日は遅かったからこの宿に泊まったのだ、それでもし良かったら今日転移する予定の港まで一緒に行こうかなって思ってね、港までなら私が転移で連れて行ってあげるよ、博士は魔力を温存したいでしょ」


「助かるよ、次のギャラン大陸までは距離があるから不安だったんだ」


「ギャラン大陸にも転移させてあげようか?」


「大丈夫だ、一度魔力が不安定な状態で長距離転移を試しておきたいからな、ギャラン大陸へは俺の転移で行こう」


「そうか、私も旅に同行したかったのだが、明日はローゼリアで仕事なのだ」


「お仕事?、こっちでお仕事何されてるのです?」


「色々やってるよ、金貨を稼いでる、宰相の部下はこの前辞めたから今はとある貴族家で諜報活動、それから銀級のハンター、・・・掃除屋もしているね」


「掃除屋?」


「理世ちゃんにはスイーパーって言った方が分かりやすいかな、魔導列車のローゼリア中央駅あるでしょ、西出口の掲示板に依頼者が「サイ」「フェル」「ツェ」って文字と連絡先を書き込むの、そしたら裏世界の掃除屋が現れて、騎士団や衛兵が相手にしてくれないような仕事を引き受ける」


「・・・アメリア様、それどこかで聞いた事があるんだけど」


「やはり知ってたかぁ、ちょっと古い漫画だけど映画も作られてたよね、シティハ⚪︎ター、私はあれを真似てローゼリアで活動してるのだ、もう10年ほどやってるかな、私は少年ジャ⚪︎プに第一話が掲載された時から愛読しているのだよ、男性の姿で活動していて名前はもちろん「リョウ」だ・・・ふふふ」


「待て、裏の世界で結構な噂になってるぞ、人探しから警護、殺人まで何でも請け負う腕の良い掃除屋っていう奴らが居るってな、複数の人間が所属する組織って言われてるが・・・アメリア嬢ちゃんだったのか」


「その通り、良い稼ぎになってるよ、組織だと思われてるのは依頼ごとに姿を変えてるからだろうね」


「それにしても何で宰相の部下なんてやってたんだ?」


「あの宰相はロリコン・・・幼女趣味でね、リーゼロッテにえらく執着してたんだよ、・・・泣かせたい、身体中を舐め回したいって言ってたな、理世ちゃんは当時まだ腕輪を付けてなかったから心配でね、危なくなったら宰相を暗殺しようかと思って近くに居たのだよ、それに金払いも良かったからいい小遣い稼ぎになった」


「そうだったの・・・っていうか宰相さんってそんな人だったのです?」


「あぁ、あれは本物のロリコンだった」







「嬢ちゃん、ワインをえらく沢山買ったんだな」


「うん、すっごく美味しいからね、この土地でしか買えない限定ボトルって書いてあったよ、私が夜に飲むやつと日本のお父さんにお土産」


「日本にでも置いて行くのか?」


「違うよ、それっ!」


シュッ・・・


「お、理世ちゃん、それはストレージかな?」


「なんちゃってストレージだよ、あれを現実に作ろうとしたけどダメだったの、容量無制限ってどうするの!、液体入れるのは無理でしょ!って感じ、コルトにある私のお家・・・寝室に転移させただけだよ、だから沢山転移させるとお部屋が大変な事になってシャルロットさんに怒られる」


「あぁ、私もラノベや異世界小説を読んで出来るかなと思ったから試したが無理だった、大型のコインロッカー程度が限界で、魔力を馬鹿みたいに使うし中の時間経過が止められないポンコツだったのだ、だがマジックバックと共に一度はやってみたい異世界ロマンだね」


「すっごく分かるのです!、憧れるよね、ストレージやマジックバック!」


「何の話してるんだ?」


「あ、博士ぇ、実は日本の小説にね・・・」







「そりゃ無理だろ、物の理(ことわり)を無視するにも程がある」


「そうなのだ、あれは完全に質量保存の法則に喧嘩を売っている、転移系の魔法とは別物なのだ」


「やっぱり無理かぁ・・・私はデータの圧縮と解凍みたいな感じで攻めてみたけど無理だったのです」


「まぁ今は無理でもこの3人が本気で知恵を出し合ったらいけるかもな」


「そうなるといいなぁ・・・」







「昨日到着したお昼過ぎの時間帯も綺麗だったけど、ここって朝もいい雰囲気だね」


「そうだろ、ここまで来るのに不便でな、人里離れた山を越えないと来れない、だから景色が素晴らしいのに観光客もあまり来ないな、このセフィーロの街は主にワインの製造販売で潤ってる、大陸中に出荷してるぞ、俺のレストランは地元の奴らの飲み食いに利用されてるだけだからあまり儲けが無いが、運送業もやってて、俺の転移を密かに使ってワインを各地に送ってる、輸送費が浮いて大儲けだ」


「博士えげつない事するね、お金持ちなんだからそんな事しなくても・・・」


「いやこれは物質転移の検証実験も兼ねてる、いずれは魔法陣同士を繋いで人間を魔導士の力無しで転移させる大規模転移網を構築するつもりだ、嬢ちゃんがコルトの街で見せてくれた魔法陣を見て閃いた、だからもっと規模が大きくなったら嬢ちゃんも実験に協力しろ、共同経営と行こうじゃないか」


「面白そうだね、うん、いいよ」


「私も従業員として参加させて欲しいな、少し興味があるのだ」


「いいぞ、アメリア嬢ちゃんなら大歓迎だ、実はこっちから頼もうと思ってたんだ」


「それにしても静かだね、青い空、緑の葡萄畑、遠くに見える丘には糸杉の並木道・・・私もここに拠点作ろうかな・・・」


「そんな事言ってると次の港街にも拠点が欲しくなるだろうな」


「あぁ、あそこも美しい街なのだ」


「へー、どんなところなのです?」


「理世ちゃんにも分かるように説明すると・・・水の都、ベネツィアに凄く似た街だよ、水路が発達してて、ゴンドラが沢山行き来してるね」


「わぁ、私ベネツィアに一度行ってみたかったんだぁ!、楽しみ!」

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