第127話 Side - 15 - 67 - まるでうめだだんじょんだ -
Side - 15 - 67 - まるでうめだだんじょんだ -
「博士ぇ!、建物や洗濯物で空が見えない、配管もすごいね」
「フローリアンは建築や景観に関する法律が緩いからな、みんな好き勝手に既存の建物を増築してる、だから今2階に居ると思っても気が付くと3階に居たり1階に出たりするから初めて来た奴は街の中で迷う、それに地面を深く掘って地下に潜ってる店もあるぞ、そこが街みたいになっててかなり凄い」
「わぁ・・・まるで梅田ダンジョンだ」
「ウメダダ・・・なんだって?」
「いや気にしないで、日本にある迷宮みたいな地下街の事だよ」
「そんなのが日本にあるのか、ますます行ってみたくなるな、魔物は出るのか?」
「魔物は・・・居ないけど個性的な人は居るよ、派手な服を着てよく喋るおばちゃんとか・・・今回の件が落ち着いたら一緒に行こうね」
「あぁ、まずは陛下からの依頼を片付けなきゃな」
「この街は朝でも魔導看板が光ってるんだね、魔力の供給大変じゃないのかなぁ」
「太陽の光を魔素に変換してるようだ、あまりローゼリアでは見ない技術だな」
「詳しく!」
「えらく食いついたな!、まぁ落ち着け、技術自体はよく知られてるからローゼリアの図書館に資料がある、この国は変換効率の高い魔石が豊富に採れるからそれを贅沢に使ってる、他国産は効率が悪くてな、ローゼリアではそんな面倒な変換をするより魔石をそのまま利用した方が安上がりになる、考え方の違いだろうな」
「ふふふ、閃いたのです、魔素を電気に変える技術、帰ったら早速試作品を作るのです!、リィンちゃん待っててね、お城でタブレットやパソコンが使えるよ」
「よく分からんが嬢ちゃんが閃いたのなら凄いのが出来そうだな、また陛下からもらえる爵位が増えるんじゃないのか」
「爵位はいらないのです!」
「さて、着いたぞ、ここで朝飯にしよう、昼前にはセルボ聖公国に転移するからな」
「ふぁぁ、おっきな看板、・・・鳥の炙り焼き?」
「この街の名物だ、俺もこの国のあちこちで食ったがここが一番美味い、朝早くから夜遅くまでやってるのも良い」
七色に光るド派手な魔導看板、油で汚れた外壁・・・一見さんの入店を拒むような外観なのに店の前には長い行列・・・
「これは期待できそうなのです」
「お、分かるか、地元の隠れた人気店って奴だな、結構並んでるが買ったらすぐに外に出てその辺の道端で食うから待ち時間はそんなにかからない、まず食ってみろ、色んな意味で驚くぞ」
「毎度あり!、お嬢ちゃん可愛いからおまけしちゃうぞ」
「・・・あ、ありがとう・・・わぁ・・・痩せて歳をとったタダーノさんみたい・・・」
「お、嬢ちゃんコルトの街のタダーノ知ってるのか、あれは俺の甥っ子だ、俺が料理教えてやったんだ」
「あぁ、俺も嬢ちゃんに連れて行ってもらって味が気に入ったから何度か通ってる、同じ味だ、なんならここの方が美味い」
「ありがとうよ、タダーノに会ったらイタゾーおじさんは元気でやってるぞって言っておいてくれや」
「うん、伝えておくね」
「驚いたのです・・・こんなところにタダーノおじさんの親戚が・・・」
「俺はタダーノで鳥の炙り焼き食った時真っ先にここが思い浮かんでな、今度ここに来たら聞いてみようと思ってたんだ、あの店のマスターは甥っ子か」
「・・・お、美味しい!、凄い!、タダーノおじさんのはまろやかで繊細だけど、ここのはもっと香辛料が効いててワイルドだ」
「寒いコルトの街より暑いここの方が香辛料を沢山使って効かせてるんだろう、それにしてもいつ食っても美味いな」
「ふっ、嬉しい事言ってくれるじゃねぇか、その通り、オリジナルの味はタダーノの方だがここじゃぁ暑い日が長いからな、香辛料をもっと効かせてくれっていう要望が多くて試行錯誤の結果こうなった」
「あ、・・・店長さん・・・お店はいいの?」
「あぁ、俺一人じゃ回らないからな、今は娘が客の対応してる、俺は少し休憩だ」
「ほう、なるほど、タダーノの常連さんで、近所に住んでるのか、今は旅の途中でラングレー王国の南の端に向かってる・・・か、大変だな、ここからだと魔導列車使ってもまだ5日以上かるんじゃないか」
「・・・うん」
「親父さんはずっとここで店やってるのか?、コルトから相当離れてるが・・・」
「俺は早くに家を出てな、趣味でやってた料理を極めたいって家族と揉めて飛び出した、この大陸中を旅して色んなもん食って勉強した、ここに落ち着いて店を出してたら家が没落したってタダーノが尋ねてきてな、しばらく弟子として鍛えてやったんだ、奴は故郷に帰って店を開いた、ここの店は自慢じゃないが食通がよく尋ねて来るんだ、食った奴がコルトのタダーノだ!って言ってるの聞くと面白くてな、タダーノも食通の間じゃ有名な店だ、叔父としてはやはり嬉しいもんさ」
「そうなんだ・・・」
「この嬢ちゃんはタダーノの甥の・・・なんて言ったか・・・トシって男の子と仲がいいんだ、あいつの親父さんの料理も美味かったな、宿屋の食堂で豪快に火を焚いて肉を焼いてたぞ」
「あぁ、リックの奴か、あいつには直接教えてないがタダーノが教え込んだらしい、俺も娘に店を任せられるようになったら一度故郷に顔を出してみるのもいいかもしれんな、あいつの腕が落ちてないか見てやろう」
「親父!、休憩まだか!、やばい!」
「おっと、娘が限界らしい、まだ店は任せられんか・・・さて、俺は店に戻る、また帰りにでも寄ってくれ、サービスするぜ」
「・・・うん、またね」
「はぁ、美味しかったぁ、私、転移して何度も通うかも」
「何度でも食いに来ればいい、転移だけはバレないようにな」
私と博士は雑然とした薄暗い路地を進んで一軒のお店の前へ・・・。
「今は廃業してるがここは昔雑貨屋をしてた店でな、俺が買ってこの街の拠点として使ってる、あまり綺麗じゃないが寝泊まりもできるぞ、嬢ちゃんが次に転移して来る時はここを目標にすればいい、合鍵は後で渡そう」
「うん、ありがとう博士、でも拠点があるなら何で最初からこの場所に転移して来なかったの?」
「あぁ、ここに来るはずだったんだがな、シャルマン領からここまで結構距離があるだろ、魔力の出力が不安定で場所がずれたんだ」
「わぁ・・・」
「何だよ」
「そんなにズレるものなの?、陸じゃなくて川なんかに転移したら危なくない?」
「多分大丈夫だと思うぞ、俺は運が良いんだ、それに魔力増量法をやらなくなれば魔力が安定する、俺が不老不死になるまでの辛抱だ」
「・・・帰るのです!、どこに出るか分かんない転移ほど怖い物は無いのです!」
「待て、冗談だ、最低限地面のある場所を指定して転移してるから大丈夫だ、俺を信じろ」
「・・・」
「いやなんか言えよ」
ガチャ・・・
バタン・・・
「汚いお店なのです・・・ほとんど廃墟・・・」
「この街に用がある時に転移して来るだけだからな、店は掃除をしてない・・・最低限の仮眠を取れるようにベッドのある部屋だけは綺麗にしてる、嬢ちゃん、この街が気に入ったのなら自由に掃除して使っていいぞ、俺は時々寝室を使うくらいだからな」
「うん、何かに使えそう・・・でも汚いなぁ」
「さて、俺の魔力も回復したし、セルボ聖公国に転移するか」
「本当に大丈夫なのです?、いかつい男の人の前にいきなり転移したら私漏らすよ」
「・・・」
「・・・」
「そこにトイレがある、先に小便済ませて来い」
「・・・うん」
「ひぅっ!」
「おっと、また目標がずれたか」
「私は疲れているのでしょうか、お嬢ちゃんとそちらの保護者の方、私の目の前にいきなり現れたように見えたのですが・・・」
「いえ、そんなことはありませんよ、私達は礼拝に来たのです、あ、そうだ、これは神様への供物でございます」
「それはご丁寧に・・・あなた達に太陽神の祝福がありますように・・・おや、お嬢ちゃんは目と足がお悪いのでしょうか、その困難に立ち向かう姿、神様はいつもあなたを見守っていますよ・・・では私はこれで失礼・・・あぁ・・・今日で20連勤・・・疲れが取れないな・・・」
大きないかつい男の人・・・教会の神父様かな、法衣を着ている人が私のすぐ目の前に・・・お手洗いに行ってて良かったのです、行ってなかったら確実に漏らしてたのです・・・頭を撫でられたし・・・。
「博士ぇ、ここどこ?、礼拝堂っぽいけど」
「セルボ聖公国の中央大神殿だな・・・すまん、また少しズレたな、目標は神殿から通り2つほど離れた所だった」
「今のおっきな人は?、エイメン!って言いながら襲いかかって来そうな迫力があったの・・・お手洗いに行ってなかったら大惨事だったのです!」
「あぁ、今の男は知ってる、大司教のエイメーン・アンデルセーン神父だ」
「偉い人?」
「偉い人だぞ」
「疲れてたみたいだけど」
「色々あるんだろう・・・」
「神殿が凄い!、なんじゃこりゃぁ!」
「でかいだろ、ローゼリアや他の国にある太陽神殿の総本部だ、信仰心のある連中が大陸中からここにやって来る、もう一回戻って正式に礼拝していくか?・・・嬢ちゃんは神を信じてなさそうだが」
「いや信じてる信じてないの話じゃなくて神様にはもう会ってるからいいのです、お腹いっぱいなのです、シロさんみたいな面倒くさい性格だと厄介だし」
「あぁ・・・コルトの街のアレか・・・あれはやばかったな、絶対に逆らっちゃいけないやつだ」
「それにしてもこの神殿ガウディっぽいなぁ・・・フローリアンはまるで九龍城だし、この世界、地球と何か関係あるのかなぁ・・・」
「この聖都は街全体に神殿や太陽神信仰になる前の古い教会が散らばってる、数は少ないが悪魔崇拝の斎場もあるな」
「悪魔を崇拝してる人も居るの?」
「あぁ、居るぞ、ここは信仰の自由が認められてるからな」
「悪魔って居るのかな」
「分からん、太陽神と同じ感じだろう、信仰の対象としての偶像だ」
「そっかぁ・・・」
「さて、ここはただ通過するだけの予定だ、何か食って行くか」
「何か美味しい物ある?」
「食文化はローゼリアとあまり変わらないな、パンが主食だ、肉料理はあまり種類が無い、焼いてソースをかけるくらいだ、かわりに野菜を使った料理が美味い」
「泊まるのは次のラングレー王国だよね、なら夕飯はそこでいいかな」
「分かった、この国はあまり来ないから拠点を作ってない、路地裏の人目のないところで転移する、嬢ちゃんも次にここに来る時の目標を決めておけ、お勧めは中央公園の裏だ」
「了解!」
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