第124話 Side - 15 - 65 - なんだそのえろいかっこうは! -
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「おはよー、博士ぇ・・・」
「元気無ぇな、そんなにギャラン大陸に行くのが嫌か・・・」
「うん、だって悪い奴らがヒャッハー!汚物は消毒だー!、ひでぶ!あべし!たわば!でギャランドゥ!なの・・・」
「なるほど分からん」
私はお父様に言われて博士とギャラン大陸に行く事になったのです、修羅の大陸・・・怖いのです!、でも行かないと爵位もらわないといけないから嫌だけど行ってやるのです・・・。
事前の説明だと博士は長距離の転移が今はできないのでローゼリアの領地や他国を経由して行くらしいのです、まずはこの国の南東部に位置し、お隣のフローリアン王国との国境近くにあるシャルマン領。
ここは王国の南に広がるサウスウッド大森林の東端で、大森林の中を通って南の国々に行くのは危険なのでほとんどの人がこのシャルマン領を通過するのです。
「ふわぁ・・・おおきな街・・・」
「ここは交通の要所でな、その領都だからかなり発展してる、フローリアン王国を挟んで東側にはメールセデェェス共和国があるから魔道具や古代文明の遺物なんかもあちこちで売ってるな」
「博士ぇ、あそこから美味しそうな匂いがするのです・・・じゅるり・・・」
「こら、勝手に行こうとするな、あの辺は旅人向けの飯屋が多いエリアだな、不味い上にぼったくり価格だからおすすめできん、食うならこの通りの2つ向こうにここの住民向けの安くて美味い所があるぞ」
「そうなんだ・・・博士詳しいね」
「あぁ、転移できるようになるまでは年に数回、魔導列車か四足歩行魔道具(アイヴォウ)に乗って来てた、魔道具の素材や古代文明の珍しい出土品が売ってるんでな、転移魔法陣が使えるようになってからは更に来る回数が増えた、確か前回来たのは13日前だ」
「古代文明の品ならメールセデェェス共和国の方が多いんじゃないの?」
「あの国は出土品をそのままで売ってない、修理や改造してきちんと動くようにしてから売ってるんだ、だから値段が高いし、改造されると元の構造が研究できない、実用目的ならメールセデェェス共和国で買えばいいが、研究が目的ならここかフローリアン王国が一番だ、今回は陛下から依頼された仕事だからメールセデェェス共和国には寄らないが、そのうち連れて行ってやろう、都市部だとこの大陸の他の国と建物が全然違ってるから驚くぞ」
「うん、あの国はいつか行きたいと思ってたんだぁ」
「飯は食わなくていいか?、当初の予定ではここは素通りするだけだ、次のフローリアン王国で1泊する、嬢ちゃんが一緒に来たから転移で一度家に帰って明日俺を連れて来るってのでもよかったが、他の国に行くのは初めてだろ、泊まって街の様子を見たり、その土地の食い物を食ってみたいんじゃないかと思ってな」
「わぁ、博士分かってるじゃん、私引きこもりだからこんな機会がないと外国に行かないの、博士と一緒なら怖くないし楽しいと思う、・・・それからここではお食事しなくてもいいよ、フローリアン王国で食べたいな」
「そうか、じゃぁ行くか、フローリアンは王都じゃなくて南東寄りの街に転移するぞ」
「了解!」
「博士ぇ!、美味しいのです!」
「ここは俺がよく利用してる所だ、この国はパンより米が好まれてる」
「私が生きていた前世の世界・・・日本はお米が主食だったからね、ローゼリアは大好きだし食べ物も美味しいけど、パンが主食ってところだけがちょっと・・・ね」
「コルトの街で嬢ちゃんが米を美味そうに食ってるのを見て好きなんだろうなって思ったんだ、気に入ったか?」
「うん、ありがとうね博士、大好き!」
あれから博士の転移で今、私達はフローリアン王国の南東にある街、ガゼールに来て食事をしています。
この国・・・というかこの街はお店の看板が赤や青、緑や黄色の小さな魔導灯をたくさん集めて作られていて、ちょうどネオン看板みたいな雰囲気なのです、LEDみたいな強い光じゃなくてネオンの方が近いの。
その看板や照明が積み重なるように設置されていて、街の雰囲気が昔の香港みたい・・・雑多な所もまるで九龍城、あ、九龍城は理世だった時に雰囲気が好きで写真集をたくさん持っていたのです、でもこの世界には漢字が全然ないから海外の人が考えるなんちゃって日本や、なんちゃって中国みたいなのです。
地理的にはローゼリアのお隣なのにまるで違う街並み、とってもワクワクするのです!。
「魔導看板すごいねー、街がキラキラだぁ」
「ここは魔導具が発展しているメールセデェェス共和国に近いからな、この国の王都もこんな感じだぞ、ここよりもっと怪しいし貧民街みたいな所もある、だから治安の面でも比較的安全なこの地方都市ガゼールの街に泊まる事にしたんだ」
「へー、ローゼリアはスチームパンク、フローリアンはサイバーパンクかぁ」
「さいばぁ・・・何だって?、よく分からんが・・・、そういえば嬢ちゃんの弟・・・コナンザって言ったか?、彼を日本に連れて行ってるんだってな」
「うん、例の婚約者が裏切った件でお部屋に閉じ籠ってずっと泣いてたから慰めてあげようと思ってね、・・・まぁそれは表向きの理由で、彼女が処刑されるまでローゼリアから離れて欲しかったって言うのが本音かな」
「優しいな、だが次期当主だろ、そんなに気が弱くて大丈夫か?」
「気が弱い、人見知りっていうのは頑張って治そうとしてもどうしようもないの、実際私がそうだからよく分かるんだよ、前世でも今世でも・・・」
「前世もそんな性格だったのか?」
「うん・・・頑張って社交性を身につけよう、弱い心をなんとかしようって思ってもね、どこかで無理をしてるの、努力して表面上は社交的になれたとしても、本質は変わらないから心が「痛いよ」「辛いよ」「苦しいよ」って泣いてるの、それが積み重なると、いつか心も身体も壊れちゃうんだよ」
「・・・」
「だからコナンザには自分が得意な事を活かして活躍して欲しいの、他の苦手な事は家族がフォローすればいいからね」
「そういうもんか」
「そういうものなのです」
「だが日本に放置して嬢ちゃんがここに居るのはまずくないか?」
「ふふふ、心配ないのです、今日ここで寝て明日になったら日本に転移してコナンザと1日過ごすよ、その翌日は日本に転移した直後に戻るから博士には私がずっとここにいるように見えてるかな、もちろんコナンザにも私がずっと日本に居るように見えてるの」
「そういえば日本とこっちの転移はそんな事ができるんだったな、そのうち俺も日本に連れて行ってくれ」
「いいよ、日本に来たら面白いところいっぱい案内してあげるからね」
「あぁ、楽しみにしておくよ・・・さて、腹も満たした事だし、街を見て回るか」
「わーい、行く!、どこかおすすめのところあるの?」
「そうだな・・・この近くに良質の魔石を売ってるところがあってな・・・」
そして、博士とサイバーパンクな街を堪能したのです、小雨が降っていて霧も出てきたからネオン・・・じゃなくて魔導看板の効果もあって一層幻想的。
その後は博士がよく利用しているという宿に向かいます、この宿も外観が怪しいのです!、ピンクや赤の魔導看板が光ってるし、まるで歓楽街のいかがわしいお店みたいなのです。
「博士ぇ!、同じ部屋でいいのです」
「いや嬢ちゃん、俺と同じ部屋で寝るのは問題だと思うが、一応お前さんは年頃の貴族令嬢だろ」
「別のお部屋だと料金が勿体無いのです、2人部屋だと少しお得」
「いや、それは大金持ちの言うセリフじゃないだろ」
「永遠に生きるんだからお金は大事、無駄遣いは良くないのです!、大丈夫、私、博士には何もしないから」
「俺が何かするとは思わんのか?」
「するのです?」
「いや、しないが・・・」
「なら問題ないのです、一緒に寝るのです!」
「・・・そうだな、まぁいいだろ、明日は昼前にセルボ聖公国に転移するからよく眠っておけ・・・って言っても明日は嬢ちゃん日本か・・・」
「まぁ、博士には迷惑かけないよ、朝になったら気付かれないように転移するから」
「そうか・・・ってなんだそのエロい格好は!、服の下にそんなの着てるのか」
「レギンスなのです!、アメリア様・・・建国の大魔道士様が日本でやってるお仕事は運動着の設計やデザインなのです、それで、アメリア様の着てる服かっこいいねって言ったらいっぱいくれたのです!」
「それが向こうの世界の運動着なのか・・・って、アメリアって誰だ、建国の大魔導士はアベルだろ」
「あぁ、言ってなかったね、アベル様は男のふりをした女性だよ、本名はアメリア様、男だと思われてる方が色々と都合が良いって言ってたね、それで、これはヨガって言って、沢山の愛好家が居る健康のための運動をする時に着る服なの、でも他の運動する時や普段着にしてる人も居るよ、動きやすいから、それでね・・・」
「ツッコミどころが多すぎるぞ、それにこれは・・・内側に魔法陣を刻んでるのか・・・、防水の魔法陣に、・・・なんだこりゃ!」
「私の身体に刻まれた呪いをどうにか出来ないかなってずっと考えてたの、色々試してたんだけど、身体にピッタリした服を着て、傷から呪いを吸い出せないかなって、これは試作品なのです!」
「吸い出した呪いはどうするんだ」
「自分の受けた呪いを詳しく調べてみたら魔素の一種みたいなの、特性がとっても似ててね、だから吸い出した呪いを何とか空気中に放出できないかなって考えてやってみたんだけど上手くいかないの」
「そうだろうな、今まで誰もやった事が無いからな、・・・っていうか何を食ったらそんな発想が浮かぶんだよ」
「呪いを吸った服は聖女様の浄化魔法陣を真似たやつで私が魔力切れギリギリまで浄化してなんとか再利用できるかなって感じ、でもそんな面倒な事を毎回出来ないから勿体無いけど使い捨てになるかな」
「それで、効果は・・・効果はどうなんだ!」
「うん、一応成功かな、改善の余地はあるけど魔力切れになっても呪いが暴れないし、これを着てない時より痛くないよ、欠点は着る時には全身に専用の薬液を塗らないと効果が半減、できるだけ上に何も着ない方が良いのと身体を覆う面積が多い方が効果があるね、あと一番の問題点は、こっちの世界でこれを着るのが恥ずかしい事かなぁ、こんな格好してる人いないでしょ」
「まだあの事件で多くの貴族が呪いで苦しんでる、生き残った連中も痛みが激しくてほとんど寝たきりだ、これを公表すればその被害者が助かるぞ、・・・ってなんだよその嫌そうな顔は」
「私はこれ以上注目を集めたくないのです!、これは私の痛みをなんとかできないかなって思って作ったものなの、これを他の人に使うなんて考えてないよ、公表なんてしたら面倒な事になるし、今以上に忙しくなるの」
「だが苦しんでいる被害者が助かるかもしれないんだぞ」
「感謝してくれる人ばかりなら良いけど貴族って自己中心的で強欲なんだよ・・・こんなえっちな服は着れない、もっと痛みを減らせる工夫をしろ、うちの子供の分を先に寄越せ、被害者の数だけすぐに用意しろ、誰でも作れるようにして技術を公開しろ・・・、絶対そんな面倒な事を言われるよ、この魔法陣は私の手書きだし、薬液は精製に膨大な魔力を使うから私にしか作れない、被害者って何百人も居るのに、絶対に無理だよ」
「だがなぁ・・・」
「それに私は自分の身体だから好き勝手に人体実験できるけど、他の人に使ってもし何か害があったら責任取れないよ、安全性の検証もしないとだし、いろんな体格の人が居るからそれに合った服を用意して、症状に合わせた魔法陣を描かなきゃいけない、それをやるのは?、取りまとめるのは誰?、って話」
「・・・」
「あと、誰を先に対応して誰を後回しにするか決める時にも揉めると思う、私個人でそんな事やるのは無理だと思ったから私一人で開発してたの・・・確かに被害者の人達は可哀想だと思うけどね」
「俺も被害者をなんとか助けたいと思って方法を考えてはいたんだ、実は俺の友人の娘も被害者でな、なんとか助けてやりたい、それに開発が進んだら陛下にはいずれ報告しなきゃならんだろう、・・・だからそんな嫌そうな顔するなって!」
「博士にはいつもよくしてもらって感謝してるけど、これは単純に私の労力の限界を越えると思うの、対応できたとしてもそのお友達の娘さんくらいかなぁ、私だってオーニィ商会のお仕事があるし、コルトの街のお店や、自分の研究だってしたい、日本で音楽活動・・・お仕事も始めたし家を建てるからそっちの事も考えなきゃ」
「俺が知らない間にそんな事もやってたのかよ」
「うん、色々と忙しいの、だから呪いの対応になると何十年も・・・それこそ被害者が全員居なくなるまで他のやりたい事を何も出来ないで拘束される、そんなのは絶対に嫌なの、私は周りに居る困ってる人達を全員助けなきゃ!って思えるような聖人じゃないんだよ・・・ごめんね」
「そうかぁ・・・仕方ないな、確かに言ってる事は理解できる、俺だって今言われた事を全部やれって言われたら嫌だし面倒だからって断るぞ、俺の方で他の方法を考えるか・・・難しいなぁ」
※近況ノートに世界地図を掲載しました。
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