第99話 Side - 15 - 43 - ぼくがかんがえたさいきょうのゆびわ -

Side - 15 - 43 - ぼくがかんがえたさいきょうのゆびわ -



「できたのです!」


「むにゃぁ・・・んぅ・・・ご飯できたの・・・」


「いやリィンちゃん今朝も寝ぼけてるなぁ・・・」


リィンちゃんとコルトの街滞在3日目の朝、2つの指輪の加工がようやく終わりました、夢中になって少し仮眠をとっただけの徹夜状態だけど、これは私の自信作、最高傑作になりそうなのです!。


「あ、そうだ、先にリィンちゃんの指輪、個人登録しておこうかな、よく寝てるなぁ・・・可愛いお顔・・・これを・・・こうして・・・こうじゃ!」


指輪が淡い光を放って登録が終わった事を確認、よし、私の設計通り・・・。


「博士に見せて自慢するんだぁ・・・フフッ、驚くだろうな」


昨日の夜、リックさんに連れられて行ったシャルロットさんは結構な時間が経った後、お部屋に戻ってきてすぐベッドに潜り込んで寝てしまったようです、昨日の夜はリィンちゃんが覗きに行くって言うのを止めるの大変だったのです!、告白・・・どうなったのかな・・・。


「・・・ん、リゼちゃぁん、ご飯・・・」


「あ、リィンちゃん起きた?、僕とお揃いの指輪出来たよ、渡す前に博士に見てもらうからもう少し待ってね」


「わぁ・・・出来たんだ、綺麗・・・虹色に光ってる!」


「魔鉄にね、魔力をすっごく浴びせて表面を研磨したの、僕のダサい腕輪を研磨して少しでも見た目を良くしようと思って考えついたんだぁ、こんなに綺麗な表面になるのは予想外だったけどね」


そうなのです、私が付けてる奴隷の首輪と同じ模様が彫られてる超ダサい腕輪・・・、街を歩いてると人々の目が一瞬腕輪に・・・それから微妙な表情、「あれ奴隷の首輪じゃね?」「あんなの腕輪にして悪趣味」そんな声が聞こえて来そうで、・・・でもこれは絶対に外れないし・・・そうだ、表面を研磨してもっとおしゃれに出来ないかな・・・そう考えて加工を始めたのです。


コンコン・・・


「あ、博士かな、さっき指輪の加工できたから見てって連絡入れておいたの」


「連絡?」


「僕の腕輪に魔法陣を追加して、博士の指輪と相互通信機能を持たせたの、大陸の反対側に居ても会話が出来るんだよ」


「・・・わかんないや」


「ちょっと待ってね、博士をお部屋に入れるから」


ガチャ・・・バタン


「おはよう博士」


「あぁ、すげぇのが出来た!って自慢そうに言うから見に来てやったぞ」




私が作った指輪を見て博士が顔色を変えました、・・・これは私の自信作、予想通りの反応なのです。


「・・・こりゃ・・・やばいな、何を食ったらこんな事思い付くんだ」


「ふふん、凄いでしょ、まだ魔道具作りでは博士に敵わないからね、僕は別の視点から攻めてみたのです!」


博士が私の作った指輪の魔法陣を拡大して驚いています、これで驚いてもらえなかったら凹むのです、自信作だからね。


「なになに、私の指輪なんでしょ、教えてよー」


「これを嵌めると、王女殿下は嬢ちゃんと同じように、外部からの物理、魔法、毒、呪いの攻撃が全部無効になるな、それから他にも頭おかしい機能が特盛りだ」


「そうなのです!、これでリィンちゃんも無敵なのです!、あ、でも魔法で燃やされたら服が燃えて全裸になるから注意してね」


「王女様なんだから燃やされないよー、怖いこと言わないでー」


「いや、刺客とか来るんじゃないかなーって」


「まぁ、私の知らないところで影?の人が排除してるってお父様は言ってたけど・・・、でもリゼちゃんの腕輪ってもう作れないんじゃなかったの?」


「そう、古代遺跡から出土した最高品質の魔鋼を博士が全力でかなりの日数徹夜して作った奴だから二度と作れないね」


「あぁ、これ作ってる時魔力切れで何度も諦めそうになったが、奇跡みたいな偶然が重なって出来た奴だ、もう二度と作りたくないな、これのせいで数年は寿命が縮んだ気がする・・・まぁ俺はもう不老になりかけてるが」


「そんな凄い奴だったの、その腕輪、・・・でも二度と作れないって、指輪できてるじゃん」


「あぁ、これはな・・・嬢ちゃん、殿下に言っても良いのか・・・これの本当の仕掛け」


「うん、リィンちゃんには隠し事したく無いからね」


「そうか、じゃぁ言うぞ・・・殿下、この指輪を嵌めて攻撃を受けると、傷や毒、衝撃、痛みは全部嬢ちゃんに行く、つまり、受けた攻撃を別の人間に肩代わりさせる魔導具って訳だ」


「えぇぇぇ!、何それ・・・ダメ!、絶対ダメだよそんなの!、リゼちゃんが死んじゃうの嫌ぁ・・・わーん!」


「リゼルだよ、リィンちゃん・・・、全然問題ないよ、僕はどんな攻撃も腕輪があるから無傷だよ」


「それでも嫌なの、私の傷や痛みをリゼル君が・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」


「これは保険だよ、リィンちゃん、普段はトリエラさん達騎士様や影の人が守ってるでしょ、その護衛をすり抜けて、リィンちゃんを傷つけるのほとんど不可能だよ、それでも万一・・・って時にこの指輪を嵌めてるとすっごく安心、僕もリィンちゃんが怪我しないか心配しなくていいから精神的に楽だし・・・」


「・・・でも・・・リゼル君が・・・傷付くの嫌なの」


「傷付かないって、・・・それにこれからも日本に遊びに行きたいでしょ、この指輪があれば陛下の許可がなくても安心してリィンちゃんを日本に連れて行けるのになぁ・・・、そっかぁ、リィンちゃん毎回日本に行く時に陛下に許可取るのかぁ・・・滅多に許可出ないと思うけど頑張ってね」


「あぅ・・・また日本行きたいの・・・本当の本当に、私が襲われてもリゼル君は無傷なの?」


「まぁ、嬢ちゃんが魔力切れの時に殿下が致命傷食らったら多少はダメージあるかもな、だがそこがこの指輪の凄い所でな、例えば殿下が腹を刺されたとして、嬢ちゃんが肩代わりする場所は腹じゃなくて全身に分散されて受けるようになってる、寝てる時に肩代わりすると叫んで飛び起きるくらいはするだろうが、死ぬ事は無いだろうな、火山の火口に突き落とされて溶かされるくらいしないと・・・だがそんな状況なんてまず無いだろ、嬢ちゃんがたまたま魔力切れの時に殿下が火口に突き落とされるなんて事・・・」


「おそらく1000年生きてても無いと思うのです・・・」


「そうだねー、私、火口なんて行かないし、突き落とされたとしてもその時にたまたまリゼル君が魔力切れって・・・無いだろうなぁ」


「とにかくこの指輪はやばい、俺もこの魔法陣には興味があるし勉強になる、嬢ちゃん、後で詳しく教えろ・・・それから殿下、これの存在は陛下以外には知らせない方がいい、俺の腕輪みたいに二度と作れない物じゃない、魔法陣さえ正確に刻めて高品質な魔鉄があれば俺か魔法騎士団長レベルなら量産できる」


「それからね、この指輪の機能はそれだけじゃないのです!、博士に渡してる指輪みたいに通信機能があるからどこに居ても僕とお話しできるし、指輪に魔力を通して頭の中で僕を呼ぶと、リィンちゃんの・・・正確にはこの指輪を嵌めてる人の目の前に僕が転移することができるの」


「それって、リゼル君が行ったことが無い所でも・・・って事?」


「うん、指輪を嵌めている人の目の前に転移って事にしてるから場所は関係ないよ、ただこれは欠点があってね、そのうち頑張って改良するつもりだけど・・・呼ばれたら無条件で転移するから、僕がお風呂入ってる時に呼ばれると、リィンちゃんの目の前に僕が全裸で登場するの、だから人がいっぱい居る所では呼ばないでね、それからおしっこしてる時に転移したら大惨事になるから、・・・出来れば指輪の通信機能使って僕が全裸じゃないか確認してから呼んで欲しい」


「そんな愉快な事になるのか・・・ハハハ」


「博士ぇ!、笑い事じゃ無いのです、試作転移魔法陣の時の全裸事件みたいな事、もう二度と嫌なのです!」


「いや、馬鹿にして笑ったんじゃないぞ、2つの魔法陣の間を人間が自由に転移か・・・、今まで手紙くらいなら送る事が出来てたが、・・・これを応用すれば面白いものが出来そうだ・・・って思ってな、また爵位か褒美がもらえるかもしれん」


「・・・博士も気付いたのです?、僕も作ってて、あ、これはやばいかも?って思っちゃったのです・・・」


「・・・まだしばらく俺はこの街に滞在するつもりだが、その間に改良できるぞ、それから運用方法も閃いた・・・刺客の件が片付いたら、・・・また一緒にやるか?」


「この魔法陣の欠点については僕じゃまだ知識不足だから博士に相談しようと思って、・・・今日ここに呼んだのもこの件があるからなのです、誰かに聞かれるとまずいから」


「フフフ・・・」


「フハハハハ・・・」


「2人とも怖いんだけど、悪い顔になってるよ!、またお父様が頭抱えそうな事考えついたんじゃないよね」


「大丈夫なのです!、頭は抱えるかもしれないけど・・・、国がすっごく発展するかもしれないから喜ぶと思うよ、それは置いておいて、リィンちゃん、指輪嵌めてみてよ」


「本当にいいの?」


「うん、リィンちゃんのために作ったんだから、あ、それとリィンちゃんの魔導具個人登録は先に済ませておいたからこの指輪はもうリィンちゃんにしか使えないよ」


「え、でも魔道具の個人登録は血液だよね?、どうやって私の血を?」


「フフフ、僕が開発した魔法陣は血じゃなくても良いのです、唾液でも大丈夫なの、だからリィンちゃんが今朝寝てる時に涎いっぱい垂らしてたから・・・」


「わーん!、私が寝てる間になんて事するのー」


「待て待て!、個人登録を血じゃなくて唾液でできるのか!」


「うん、血液の認証魔法陣をもっと細かく設定して、DNA・・・えと、その人固有のパターンを読むようにしたら唾液でも大丈夫にできたよ、他の体液でも一応登録出来たし・・・僕の指輪でちゃんと確認済みだよ」


「嬢ちゃん、帰ったら論文にして魔法陣を発表しろ、それから特許登録も忘れるな、他の魔法陣が相当やばいからこれが霞んじまったが、この認証魔法陣も大概やばいぞ、金はいくらあっても良いだろ、すぐ登録した方がいい」


「・・・分かったのです、一応博士と共同開発って事にしてもらっていい?」


「何でだよ、これは開発した嬢ちゃんのものだ、俺は何もしてないぞ」


「いや、そうじゃなくて、僕はこれ以上目立ちたく無いの!、今でも面倒臭い人たちに絡まれるのに・・・だから博士、盾になって・・・お礼は特許料の半分って事で」


「・・・あぁ・・・俺は虫除けか、・・・嬢ちゃんがいいなら俺は構わんが・・・じゃぁ共同発表という事で俺の方から登録と発表はしておこう」


「うん、博士・・・いつもありがとうね・・・僕は大好きな魔法陣の研究をしていたいだけなの、でも目立つとそれ以外の面倒な事がいっぱい出て来て・・・」


そんな事を博士と話してると後ろでリィンちゃんが泣きながら踊っています、手を振ったり腕を回したり、・・・どうしちゃったんだろ、お腹空き過ぎておかしくなったのかな?。


「・・・リゼちゃぁん・・・うぁぁぁ・・・リゼちゃぁぁぁん!」


「どうしたの、リィンちゃん、・・・そんなに泣いて」


「抜けないの!、指輪、さっきから抜こうとしてるのに・・・これ、もしかして一生抜けないの?・・・やだぁ・・・わぁぁぁん!」


「あっ・・・(ニヤリ)」


「うわぁぁん!、やだぁ・・・外して、お願い!」


「あー、ごめんごめん、リィンちゃんの反応が面白くて調子に乗り過ぎちゃった、泣かないで・・・、これ嵌めたらロックがかかって他の人には抜けなくなるんだよ、魔力を通して、抜けろって念じてみて」


「ぐすっ・・・あ、抜けた・・・わーん、怖かったよぉ・・・」


「ごめんごめん、この指輪の事が誰かにバレて、盗まれても困るでしょ、だから指輪を作った僕と持ち主のリィンちゃん以外には抜けないようにしてるの」


「そういえば護衛の姉さんはどうなった、昨日は確かに使い物にならなかったが・・・」


「あ、忘れてた、シャルロットさん・・・」


「はい!、何っすか!、おはようっすリゼル君、さっきからずっと起きてるっすよ!」


「復活してる・・・」


お布団を被って寝てた筈のシャルロットさんが完全に復活していました、昨日の告白で、何があった・・・。

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