第14話 Side - 12 - 10 - わたしのせいだ -

Side - 12 - 10 - わたしのせいだ -


こんにちは、リィンフェルド・フェリス・ローゼリア 13歳です。


この前リゼちゃんに皆様とお話しする機会をもらったので、もう少し私のお話を聞いてください。


・・・これってリゼちゃんに聞かれてるのかな?、恥ずかしいので聞かれていない事を祈りつつ、呪いの刃でリゼちゃんが重傷を負った時のことをお話しします。


まずはヴィンスお兄様の為の夜会で襲撃が起きた時の事を話さないといけませんね。


私はこの夜会には参加していませんでした、ヴィンスお兄様の婚約者を選ぶための夜会だから両親やマナサマーお兄様も最初の挨拶に顔を出すくらい、特に参加しなくていいよって言ってもらったのでその時間はお部屋でお菓子を食べながら本を読んでいたのです。


リゼちゃんは一人で参加かな?、寂しがってないといいけど、みんな怖がって近寄らないだろうから男の子にも絡まれる心配はないでしょう。


私も参加してあげた方が喜ぶのだろうけど、あの子も私以外のお友達を作らなきゃダメだろうし、そこは心を鬼にして(本心は群がって来る貴族令嬢令息を相手にするのが面倒臭いから!)、リゼちゃん一人で頑張ってもらいましょう、そう思っていました。


夜会も後半くらいかなと思っていた頃、廊下の外が騒がしくなりました。


どうしたのだろうと部屋から顔を出すと護衛騎士のトリエラさんがいつものように警備のために廊下で立っています。


「何かあったの?」


「さぁ?、確かに騒がしいですね、ちょっと見てきましょうか」


そう話しているともう一人の私専属護衛騎士、ムッツリーノさんが顔色を変えて廊下の向こうから走ってきます。


「姫様!、夜会で襲撃がありました!、まだ刺客が城内に潜んでいるかもしれません!、部屋から出ないでください!」


夜会で襲撃!、リゼちゃんは?、最初に思ったのはその事でした、ムッツリーノさんに聞くと。


「私も襲撃があって怪我人が大勢出ていると言う報告しか受けておりません、姫様の安全を確保する為、情報が入ってすぐにこちらに参りました」


え、じゃぁリゼちゃんが怪我をしてるかもしれないの?。


そう思い、夜会の会場に向かおうとしたらムッツリーノさんに止められました、顔が怖いです!。


「絶対にダメです!、部屋にお戻りください!」


でもリゼちゃんが、あの怖がりなリゼちゃんが怪我をして泣いているかもしれない!、そう思うと大人しく部屋にいる事ができませんでした、私は生まれて初めて騎士さんに対して「命令」しました。


「私は夜会の会場に行きます!、王女である私の「命令」が聞けないのですか!、危ないのなら貴方達が守ってくれればいいではないですか!」


「命令」したのにまだ2人は私を部屋に押し込もうとします、・・・まぁポンコツな私の命令なんて聞いてくれないのは分かってましたが・・・、私は2人の隙をついて、廊下に駆け出しました。


「姫様!」と言いながら追いかけてくる2人の声を聞きながら。


・・・これが1つ目の私の「過ち」です、私はこの行動を一生後悔するでしょう。


会場は酷い状態でした、血を流して倒れている大勢の子供達、痛みで大声をあげて泣いています、そして大人達、騎士さんも何人か倒れていて動きません、刺客・・・でしょうか、黒い服を着た人達が首を切り落とされて倒れています。


「あ、あぁ・・・・」


初めて人が血を流して倒れているところを見たのです、死んでいる人を見たのです、私は叫び声をあげて夕食や先ほどまで食べていたお菓子を全て戻し、倒れてしまいました。


気がついたらお部屋のベッドに寝かされていました、お母様が側についていてくれたのです。


「・・・ごめんなさい」


私の行動が間違っていたのは分かっていたから謝ります、お母様は何も言わずに頭を撫でてくれました。


その後確認してもらったところ、リゼちゃんは夜会を欠席していて無事だったようです、全部私の思い込みで起きた空回り、騎士さんの言うことを聞いてお部屋で大人しくしていればこんな事にはならなかったのです、私っていつもそう・・・、なんでこんなに馬鹿なんだろうって涙が溢れました。


2人の護衛騎士さんは私を会場に連れてきてしまった事への責任を取るために辞めさせられると言う話を聞いて、私は泣きながら「全部私が悪いのだから!」と2人の罰を無くしてほしいとお父様にお願いしました。


それが聞いてもらえたのか、今でも2人は継続して私の護衛騎士でいてくれます、私が謝罪すると2人は許してくれました、もっと叱って欲しかったのに・・・、トリエラさんは「姫様のおかげでお給料がしばらく半分になっちゃいますよー」って笑いながら言ってましたが・・・・。


それ以来私はお部屋の外に出るのが怖くなりました、夜眠る時目を閉じるとあの光景が浮かんできます、お部屋の隅の暗いところやベッドの下、廊下の向こうが怖いでのす。


部屋に閉じこもって外に出られなくなりました。


・・・これが2つ目の私の「過ち」です・・・。


事件から10日ほど経ち、次の襲撃を警戒して規模は大きくなかったのですが亡くなった方達の追悼慰霊会も行われました、そして部屋に閉じこもっている私を心配してリゼちゃんがお見舞いに来てくれたのです!。


私は嬉しくて、リゼちゃんとお部屋で沢山お話をしました。


ずっとお部屋に閉じ篭っていたけれどリゼちゃんと一緒なら怖くない、たまにはお庭でお茶でもしようかと思ってメイドさんに準備をお願いしました、リゼちゃんはまだ外は騒がしいと思うから今日はお部屋でお話ししよう、って言っくれましたが私は久しぶりにお外の空気が吸いたくなったのです。


・・・これが3つ目の私の「過ち」です、もうこの事は後悔して後悔して、何度時間が戻せるなら・・・と思ったか分かりません・・・。


この日の2日ほど前から騎士さん達の独身寮の一つで食中毒が発生していて、大勢の若い騎士さんがお休みしていたのです、トリエラさんも被害に遭って、昨日は真っ青な顔で「・・・姫様・・・下痢がやばい!」って頻繁に席を外していたのですが今日になって遂に寝込んでしまいました。


リゼちゃんは男の人が苦手なのでこの日は不慣れな女性騎士さんが交代で警護してくれていたのです、運が悪かった・・・と言えばそれまでなのですが、実はこの食中毒事件も犯人側に仕組まれていた可能性が高いのです。


ちょうど時間を告げる鐘が鳴っていた時、女性騎士さんが交代の引き継ぎで、お茶をしているお庭の入り口の鍵を開けて次の担当の人とお話をしていました、普通ならもう一人私の側についていてくれるのですが例の食中毒で人数が少ない事もあり、今日は誰もいませんでした。


私は楽しくお話ししていた事もあって、後ろの気配に全く気付きませんでした、そして突然目の前にいたリゼちゃんが私に近寄り、抱きついてきたのです。


「ぐっ・・・・」


リゼちゃんの声が聞こえて後ろに刃物を持った男の人が居るのにようやく気付きました、私が叫び声をあげた事で交代していた騎士さんが気付いて駆け寄ってきます。


リゼちゃんは私をテーブルの下に押し込み、自分は男の人の前で刃物を防いでくれています、男の人が怖い筈なのにどうして・・・、白いワンピースを着たリゼちゃんの背中が切れて血で真っ赤になっていました、騎士さんの所に走って行きたいのに足が震えて泣く事しかできません。


それでもテーブルの外に出ようとしていると、「ダメ!、リィンちゃん出てこないで!」とリゼちゃんが叫びます。


リゼちゃんが私の方を向き・・・・、リゼちゃんは切られて顔の左半分が血で真っ赤になっていました、そして私に覆い被さるように抱き付いてきます。


ようやく騎士さんが犯人の所に到着し、2人がかりで抵抗する犯人を切り付け首を落としました。


私は、「リゼちゃん?」と声をかけましたが反応がありません、騎士さんが助け起こそうとしていると突然リゼちゃんが苦しみ始めました。


「ぎゃぁぁぁ!、痛ぁい!、背中が!、顔が痛い!、嫌ぁ、痛ぁぁい!」


大声で叫んで転げ回るリゼちゃん、私は恐ろしくなって意識を失いました。


あれから数日が経ち、私はまだ部屋に閉じ篭ってお布団を頭から被り泣いています。


リゼちゃんは衰弱しながら死んでいくと言われている「呪いの刃」で切られたそうです、少し傷付けられただけでも発狂する人がいるくらい痛みが激しいそうで、今もお城の治療室で叫び続けているそうです、私はお見舞いに行きたいと言いましたが、絶対にダメだとお父様に言われました。


毎晩怖い夢を見ます、リゼちゃんが夢の中で、・・・顔半分を真っ赤な血で染めたリゼちゃんが私の前にやって来て「見て、リィンちゃん・・・、私、こんな顔になっちゃった、痛いの・・・リィンちゃんのせいで・・・」って呟くのです。


「全部、全部私のせいだ・・・・、私が馬鹿だから、お部屋にひき篭っていたから・・・、お庭でお茶しようって言ったから・・・」


・・・それから40日が経ちました、お部屋の扉がノックされ、お食事を持ってきてくれたのかな?と思って返事をすると、誰?、足音と、コツン、コツンと床を叩く音、・・・そして私が丸まっているベッドに座ります、ふわりと漂う甘く爽やかな柑橘系の香り・・・。


・・・そして私が入っているお布団に抱きつき。


「だーれだ?」


「・・・リゼちゃん?」


私はお布団から顔を出します。


「リィンちゃん!、ひっさしぶり!、どうしたのお昼なのにお布団で丸まって?」


左目に黒い眼帯をしたリゼちゃんが優しく微笑みながら私の顔を覗き込んでいます、眼帯で隠せない左の頬には赤黒い刀傷・・・・。


「わぁぁぁん!、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


また私はお布団に丸まります、リゼちゃんは。


「あははー、やっぱり私の顔怖いよねー、前から悪人顔だったけど、傷が加わって余計に凄みが出たんだよね、ごめんね、私的には「荒野の流浪人」っぽくてカッコいいかなーって思ったんだけど、怖いなら仕方ないなぁ、次は紙袋を頭から被って来るね!」


私はお布団から飛び出し泣きながらリゼちゃんに抱きつきました、あぁ・・・リゼちゃんの匂いだぁ・・・。


ガン!、ぐぇふっ!。


私が抱きついた事でバランスを崩したリゼちゃんが後ろに倒れ後頭部を強打し、転げ回ります・・・。


「ぎゃぁぁ、痛い!痛いのです!リィンちゃんいきなり何をするのです!、リィンちゃんみたいに馬鹿になったらどうするのですか!」


いつの間に私のお部屋に集まったのか、お父様、お母様、お兄様が揃っていて私達を生暖かい視線で見つめていました。


私が泣き止まず、また明日ねって言いながらリゼちゃんは帰って行きました。


お父様とお母様に話を聞くと、リゼちゃんは本当に死にかけたらしいのです、っていうか普通なら死んでいた・・・と、リゼちゃんは普通の人と比べて魔力量がすごくあるから助かったし、他の被害者の治療に役立つ手がかりになる論文まで発表して高く評価されたそうです、私が引きこもってる間に・・・。


お父様としては以前の「魔導ラディーオ」開発の時にも嫌がって受け取らなかった業績も含めて、もう絶対に爵位を与えないといけないくらいの偉業だそうで、どう思うと聞かれたから、「・・・多分リゼちゃん泣いて嫌がると思う」と答えると、「・・・そうだろうな」ってお父様が頭を抱えていました。


「私のせいで、リゼちゃんがこんな事になって・・・私・・・許してもらえるかな?」


そう聞くとお母様が。


「リゼちゃんは凄く貴女のこと心配していましたよ、今日もここに来る時、「リィンちゃんに元気になってもらってまた遊ぶんだ!」って張り切ってたのに、貴女がそんな態度だから・・・」


・・・まだ自分を許せそうにないけれど、多分一生自分を許せないだろうけど、明日には笑ってリゼちゃんに会えるかな・・・、って思ってると翌日本当に紙袋を被ったリゼちゃんが現れて2人で笑っちゃった・・・。


・・・ちょっと長かったのですが聞いて頂いてありがとうございます、最初の1年くらいはまだ完全に元のように心から笑う事が私にはできなかったのですが、リゼちゃんのおかげてゆっくり時間をかけてまた普通にお話したり、お外に出る事ができるようになりました。


まだ私はずっと考えてるんですよ、「どうやってリゼちゃんにこの恩を返そうかな」って。


・・・ではまた何かの機会がありましたらお話を聞いてくださいね。

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