第5話 Side - 12 - 5 - まりょくのとっくんでだいさんじ -

Side - 12 - 5 - まりょくのとっくんでだいさんじ -



こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳でございます。


「この前のアリスちゃん・・・じゃなかったアリスティアちゃんは本当にかわいそうだったなぁ・・・」


アリスちゃんのお名前はアリスティア・チッチャイコスキーと言って最近このお屋敷に入った新人メイドさんです、理世のお父さんがやっていたアイドル⚪︎スターシンデレラガールズのありすちゃんによく似ているとても可愛い子なのです!。


そのアリスちゃんが執務室のお掃除をしている時に、私と間違えてお父様が抱きついて・・・頬にキスまでしまったのです!。


あの時は凄い叫び声だったから慌てて弟やお母様を連れてお父様の執務室に行ったら・・・お漏らしをして泣き叫ぶアリスちゃん、狼狽えるお父様、そのお父様をゴミを見るような目で眺めるセバスチャンさん、・・・地獄絵図でした。


彼女のお父様はフレデリック・チッチャイコスキーという魔法騎士団に所属している凄く強い人らしいのでこの事を知られたら怒ってお屋敷に乗り込んでくるかもしれません。


お母様が言うにはアリスちゃんのお家は悪い人に騙されて借金まみれになってしまったそうで、少しでも家の助けになるように、そして弟さんの学費を稼ぐ為に、遠縁で親同士が友人でもある我が家で働いてもらう事になったのです。


アリスちゃんと仲良くなりたかったからこの前彼女のお部屋にプレゼントって書いたカードを付けて私がいつも使っている自作の香水を置いてきたのです。


この香水は私の自信作で、柑橘系のとても爽やかでいい香りがするのです、アリスちゃんにも気に入ってもらえたようで毎日使ってくれていたのですが・・・お父様はその香りで私と間違えたのだとか・・・。


お父様に襲われた!、なんて他言しないように今度は美味しいお菓子をあげようかな、私はとても怖がられてるから他のメイドさんに頼んで持って行ってもらうのです。


さて、アリスちゃんの事はこれくらいにしておいて、今日はこの世界の魔法と魔力についてお話ししましょう。


私がこの世界には魔法があると気付いたのは5歳の頃、メイドさんが魔道具に手をかざしているのを不思議そうに見ていたら「これは魔法ですよお嬢様」と言われました。


それを聞いて「やった!、この世界には魔法がある!私は絶対に魔法使いになるんだ!」って思いました、女の子は魔法少女に憧れるものなのです!、理世だった頃、お父さんが夜中に「僕と契約して魔法少女になってよ!」って言ってるアニメも一緒に観てたくらい好きなのです!。


どうやら神様にチートな能力をもらってないんじゃないかって思い始めていた私は、もしかするとどこかで読んだ小説のように私だけ魔力が無くて魔法が使えないって事はないよね・・・と本気で不安になりました、転生してからこの世界は私の期待を尽く裏切っているのです、だから魔法も・・・そんなの嫌なのです!。


だから私は昔読んだ小説や漫画の内容を思い出し、幼いうちから対策をしておく事にしたのです。


魔法を使えるようにするのなら・・・もちろん人並みな物ではなくチートな魔法が使えるにはどうすればいいか・・・それは「森で妖精に出会って契約して力を得る」か、「ドラゴンか何かに襲われて倒した後その肉を食べて」、或いは「自分の力で魔力量を増やす」かな?と思ったのです、理由は前世で読んでいた小説に書いてあったから!。


最初の2つはお家に引きこもっている私には難しいので最後の「自分の力で魔力量を増やす」をやってみたのです、方法は前世で愛読していた「小説家になるのです!」や「カクノデス!ヨムノデス!」を参考にして・・・「気絶するまで魔力を使って一晩寝たら魔力量が増えている」を実践してみました、これで絶対魔力量が増える筈なのです!。


魔力は身体の中を循環している「気」のようなものだと異世界小説に書かれていた記憶があるので、実際にやってみると少しだけ魔力が出ました。


理世のお父さんが持っていた胸に七つの傷がある漢が登場する世紀末アニメのDVDに出てくるカイオウ様?だったかな、そんな感じの人が身体から魔闘気プシューって霧みたいなやつ出してたのをイメージすると同じように魔力が出たのです!、魔界を見なくても出るものなのですね。


小説に書いてあった通り死ぬほどつらいし頭が痛くなるのですが、毎晩欠かさず魔力が切れるまで魔力を出して気絶するように眠っていました。


それを1年程続けたら・・・6歳の終わり頃には一瞬で魔闘気プシュー!コホォォォ!ふはー!ができるようになったのです。


結論から言うとそれは間違った方法で、絶対にやっちゃダメなやつだったのです・・・・。


7歳になる頃だったかな?、成長が遅いらしいのです、2つ年下の弟ちゃん・・・コナンザに身長を追い越されてしまって・・・。


この世界では成長が遅いのは魔力量が多い人の特徴らしくて、心配した親に検査に連れて行かれました、検査と言っても「ステータスオープン!」ですぐに分かるような小説みたいな便利なものなんてこの世界には無いのです!。


ある魔力量以上を照射したら割れる水晶みたいなやつで小さい方から1個ずつ、「これ割れたねーお嬢ちゃん凄いねー」「あ、これも割れたんだ」「これは無理でしょ、え、割れたの!」・・・。


この辺で測量所の所長さんが登場して、「これ割ってみて、あ・・・」「次はこれを・・・、うわー!」・・・。


最終的に一番大きな水晶まで割ってしまって・・・所長さんに「どれだけ魔力量があるのか分からないなー、とりあえず国に報告しなきゃ・・・」「さすがに建国の大魔導士様並みとまでは行かないだろうが相当ある、でもよく分からない、どれだけあるんだろう?」って言われました、私は呆然とする家族の後ろでチベットスナギツネみたいな表情に・・・。


帰り際に所長さんから「お嬢ちゃん、何か心当たりある?」って聞かれましたが・・・「リゼ分かんない」と言ってごまかしました、「あるよ!毎日魔闘気プシュー!コホォォォ!ふはー!ってやってたら増えたの!」なんて言える訳がないのです!。


後になって聞いた話だと魔力切れは命にかかわるから絶対にやっちゃダメらしくて、訓練が厳しいと言われている魔法騎士団の人達も魔力が切れそうになったら他の人に交代するのです、一般の商会でも魔力を減らしていいのは半分まで、魔力切れ直前まで働かせるのは法律違反で罰金になるのです。


それから、魔力量は増やそうと思って増えるものではなくて、でも何かの間違いで魔力量が多い人が生まれる時があって、そんな人は訓練して魔法を覚えると魔法騎士団に入って活躍できるし、一般の商会なら高給で雇ってもらるのです。


所長さんの説明だと魔力量が多い人は成長が遅いかわりに寿命も長く、建国の大魔導士様は活躍した年齢が350歳で亡くなったのが800歳くらいなのですよ。


つまり私が大魔導士様と同じくらい魔力量があるなら1つ歳を取るのに10年かかる・・・って、なにそれこわい!。


私が知ってる小説なら18歳くらいまで普通に成長してそこで成長止まって長生き!みたいな設定だよね!、って心の中で叫びましたがここはそんな都合のいい世界じゃなかったのです・・・。


家に帰ってからは「みんな私を置いて先に死んじゃう!」「一人になるのやだぁ!」と言って両親と弟が居る前で泣いてしまいました。


両親は「リゼたんにはお金いっぱい残すから!」「将来何がしたいのか一緒に考えよう」と言ってくれたのですが結局2日ほどお部屋に引き篭もって泣いたのです。


この後両親に何故魔力量が増えたのか、実は前世の記憶が!っていう事を話したのですが、それについてはまた今度お話しするので期待して待っているのです!。









こんにちは、私の名前はアリスティア・チッチャイコスキー、14歳。


訳あってお家が借金まみれになってしまいまして・・・お父様の友人のお家でメイドとして働かせてもらう事になりました。


私のお父様は魔法騎士団に所属していて、本人が言うには騎士団の主戦力らしいです。


得意な攻撃魔法は・・・拳を握った片腕を高く掲げて、朗々とした魔法詠唱の後に繰り出される雷属性の攻撃魔法「ヴァイシクル」、騎士団員の間でも評判なのだ・・・と、お父様は自慢していました・・・そしてついた異名は「キラー・フレディ」・・・。


厳しい所もあるのですが私にはとても優しく、大好きなお父様です。


事件が起きたのは2年前、子供好きという噂に付け込まれたらしく、孤児院を建設するため資金集めの協力を依頼されたのだそうです・・・詐欺でしたけど・・・。


信用のあるお父様の名前を利用されて沢山の商人や貴族が被害に遭いました・・・そしてお人好しなお父様はその損害を全額補填、多額の借金を抱える事になりました・・・ぐすっ・・・。


お父様の日頃の行いが良かったからなのか、王家や他の貴族家から資金援助が提案されました、でもお父様は・・・「この件は詐欺を見抜けなかった私の責任である」と言って辞退、コツコツと借金を返済しています。


下級貴族ながら、我がチッチャイコスキー家は代々優秀な魔法騎士を輩出した名家、上級貴族からも信頼され、裕福な家でした。


でもあの事件のせいで一気に困窮してしまったのです。


私が出稼ぎをして、まだ幼い弟にせめて家庭教師だけでも付けたいとお父様に相談しましたが・・・猛反対されてしまいました。


私を溺愛するお父様は私を家から出したくないようで・・・でもお家の借金を少しでも減らさないと・・・口論になり、私は初めてお父様に酷い事を言ってしまいました。


「分かってくれないお父様なんて大嫌い!」


一度口に出してしまった言葉は後悔しても元には戻りません、お父様は初めて私の前で涙を見せました。


「ごめんねアリスちゃん・・・」


それでも私は出稼ぎを強く希望しました、その結果、お父様の友人の上級貴族家でメイドとして雇ってもらえる事になったのです。


初めてお家の外でお仕事が出来る、お金を稼いでお家の役に立てる、家の中の狭い世界しか知らなかった私が外の世界に!、そう思ったら楽しみでワクワクが止まりませんでした。


「どんなお家かなぁ、優しいご主人様だといいな」





そう思っていた時が私にもありました・・・


ここは上級貴族、シェルダン家、・・・旦那様・・・今日から私のご主人様になるアーノルド・シェルダン様にご挨拶をする為に広いお屋敷の廊下を歩いています。


面接の時にお会いした奥様は怖かった・・・私を冷たく見下す眼差し、意地悪そうに弧を描く口元・・・。


とても怖かったです、緊張と恐怖で漏らしそうでした・・・。


耐えた自分を褒めてあげたいです。


奥様は怖そうだったけど、旦那様は優しいかも、渋くてかっこいいおじ様だといいな・・・ふふっ。


コンコン・・・


「入れ」


低く威圧感のある声がしました、この声が旦那様・・・。


「失礼します」


メイド長に連れられて旦那様の執務室に入ります、第一印象が大切だとお父様も言っていました!、淑女らしく綺麗なご挨拶を・・・ひっ!。


ゴゴゴゴゴ・・・


「あ、私死ぬかも」


そこに居たのは見上げるような大きな身体、鋼のように引き締まった肉体・・・仕立ての良さそうなスーツの上からでも分かる躍動する筋肉!、数々の修羅場を潜り抜けてきたであろう事が容易に想像出来る相手を射殺すような鋭い眼光・・・。


無表情で私を見つめて・・・あぅ・・・目が怖いです・・・漏れそう・・・。


フルフル・・・


「おや、新しいメイドさんかな」


「いいえ違います!」って言いたい・・・帰りたい・・・でももう後戻りできない・・・お父様助けて・・・。


「ご挨拶を」


メイド長が私に挨拶するよう促します。


旦那様の威圧感で霞んでたけど、横に居る執事さんも何か怖いです!、・・・血を吸われそう・・・。


「ひ・・・ひゃい!、わ・・・私はぁ・・・ありしゅてぃあ・ちっちゃいこしゅきぃ・・・と言いましゅ」


噛みました・・・。

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