行きはよいよい、帰りは

 駅から大通りを外れて廃れ切った商店街と目撃者を募る看板がある俺の住むアパートまでの近道は、姉に頼まれてたまに様子を見にくる義理の兄と終電を逃したときに宿代わりに転がり込んでくる会社の先輩に休みの日に虚無のような映画のDVDと酒を持って遊びにくる友人が揃って通りたがらないのだが、理由を尋ねると全員口裏を合わせたように「あの道を通ると決まってその夜柄シャツのどこかも分からない訛りのあるチンピラみたいなやつに延々と問い詰められる夢を見るから」というのだけども、その男が夢の中で何について問うてくるのかを聞いても、やはり皆一様に口を噤んでしまう。

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