選べる状況は四通り

 盆くらいは顔を見せろと実家の兄から電話があったので、一応社会人なのだからとそこそこの値段の茶菓子をお土産に実家のインターフォンを鳴らそうとした途端背後から肩を掴んで引き倒され、玄関先に座り込んだまま痛みを堪えて視線を向ければ「何で帰ってきたんだ」と連絡を寄越したはずの兄が険しい目をしていて、ともかくこの仕打ちに抗議しようとした矢先に玄関が開き「やっと帰ってきたのか」と笑みを浮かべる兄と目が合い、俺は獰猛な夏の日が射す玄関でこちらを見つめる双貌を見上げながら地べたに派手に叩きつけてしまった菓子が無事かどうかをぼんやりと気にしている。

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