19話 外

初めて外を歩いた。

日の光が暖かい。

木々が風に揺られ、心地よい葉音をたてる。


ほんの数分。

木のそばに座り、ただ葉音や鳥の囀り、生き物の鳴き声を聴く。


それが彼女の日課になっていった。


或る日


「ただいま。」


久々の帰宅だ。

彼女は大丈夫だろうか。

きちんと食べて生きているだろうか。


玄関の靴を見た途端。

嫌な予感がした。


……靴が…ない。


何故だ。

誘拐ではない。

誘拐だとしたら靴を持っていく事はしないし、彼女の場合……。


その他の可能性で最も強いのは自主的に出たと云う可能性。

何故。何故出た。何故。


否、今考えても無駄だ。

話はそれからで良い。

何処にいる。

今すぐ探さねば。

しかし見当もつかない。

日が暮れ始めている。

暗くなったらまずい。


「くっ……何処に行ったんだっ…!」


_____________________


「ん……ぁ。」


まずい。いつの間にか寝てた様だ。

日が暮れかけている。

でも今日も帰ってもどうせ1人だし。

誰も心配をしない。

ゆっくり帰ろう。


いつもの帰り道を辿って帰る。

家はすぐそこだ。


家に近づくに連れ、人の音が聞こえてきた。

真逆。福沢さんが帰ってきたの?


「信夫。」


「ひゃいっ…!」


自分でも知らない声を出した。

いつの間にか福沢さんは帰っており、いつの間にか私の後ろに立って居た。


「入れ。」


声が低い。

酷く怒っている証拠だ。

どうしよう……。


「ごめん…なさい…。」


まず開口一言目を制し、謝る。

はぁと溜息が聞こえた。


「何故外に出た。」


「…ずっと、家に居て1人だと…何にもできないから…。外に出て、外の空気と、音を聞いて居たかったんです…。」


予想通りの回答だった。

この家には生憎子供が、しかも視覚障害者が楽しめる様なものはない。

娯楽を与えなかった俺にも責任はある。


「そうか。」


云いたい事は山程ある。

しかし縮こまって叱咤されるのを待つ彼女を見て、何も云えなくなってしまった。


「……外は、好きか。」


「え?」


「外に居るのは、心地良いか。」


「…はい……。」


「…明日、任務がない。共に自然の中に行くか。」


「…良いんですか…⁉︎」


「良くない。」


「えっ…じゃあ、どうして……。」


「良くないが…此処に1人で居るのも辛いだろう。明日、良い所に連れて行く。そこになら行っても良い。」


「!」


源一郎は驚くだろうか。

俺が急に女子を連れて来たと喚くだろうか。


それで良い。

彼女の存在を知られるのは少々厄介だが、またこのまま外に出られるよりずっと良い。


「楽しみっ…!」


彼女の笑顔を見たら、己の心配事など小さな事の様に思えた。

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