17話 願い。

泣いた。

初めて感情のままに泣いた。

家族や親戚から捨てられ、人間から捨てられ、殺しの道具として使われた次には死神という人形として殺しを続けさせられた。

挙げ句の果てには己の意思で人を殺すようになった。


何の為の人生だったんだ。

何の為に生まれたんだ。


殺す為なら、私は生きたくなんかない。


何をしても殺しの道に入るしかないのならば、


私は生きたくなんかない。


「………。」


なんと声をかければ良いのかわからなかった。

俺自身が知る彼女は宗教の御神体の様に居た時からだけだ。それ以前の記憶を聞いた事がない。

ただ、それだけでも彼女に巣食う闇は余りにも大き過ぎる事はわかる。


「福沢さん…離してくださいっ…。私を…1人に…してくださいっ…。」


「離さない。」


腕に込める力をより一層強める。


「何故っ…?」


「貴女は、生きたいんじゃないのか。」


「!」


「死を望まれてる。死ななけねばならない。異能のせいで、消えるべきだ。そう思っているんじゃないのか。」


「……。」


核心を突かれた様だった。

反論したかったのに、できなかった。


「……俺は、信夫に生きていて欲しい。それでは今1人にさせない理由にならないだろうか…?」


掠れた声。強く抱き締める腕。

知らない福沢さんだった。

あんなしっかりした彼が懇願する気配を感じて、どうして振り払えよう?


生きたい。生きたい、生きたいよ。

私は生きたい。


「私は………生きたい…。」


目隠し代わりに服を割いてつける。

少し緩んだ腕をほどいて福沢さんの顔に触れる。



「私は…福沢さんの喜びの為になら…生きたいと思える。」


「信夫…。」


手を顔に添えられた手に重ねる。


「…ありがとう。」

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