ヒョイラレ!
如月芳美
第一話 俺は推しゲームが買いたいだけなんや
俺は珍しく急いどった。特に部活に入ってるわけちゃうし、塾に通ってるっちゅーわけでもない、「職員室に来い」と言われているんともちゃうし、誰かが喧嘩しとるわけでもない普通の日ぃの普通の放課後やった。
せやけど、今日は最新ゲームソフトが届く日なんや。一刻も早よ拝みたいやん。
昔(言うても親父が若い頃)は最新ゲームソフト買うときは、会社を休んででも前の晩から家電量販店の前で並んどったらしい。アホちゃうかと思うけど、当時はネットが発達してへんやったからしゃーない。
今はネットで注文してカード決済や、モノは家に届く。せやけど、俺は親父のお陰で自分で買わんてもメーカーからプレリリース版ソフトが送られてくる。
今日の獲物は親父の十八番『
猫シュミは今、日本で、いや世界で一番売れてるシミュレーションゲームや。俺はもちろん猫シュミⅠからⅢまで持っとる。今回はⅣや。言うても、持っとるんは俺ちゃうくて親父やけど、そんな細かいことは今は横に置いとこ。
これは
んなこたぁどーでもええわ、早よ帰らな。
俺たち一年生の教室は四階や。二年は三階、三年は二階。だんだん降りてくる構造になっているもんやから、一年はとにかく階段がキツイ。俺は体格だけは高校生並みやし、階段はいつも二段飛ばしや。当然今日も急いどるから二段飛ばしで降りていく。
が!
二階と三階の間の踊り場をくるっと回ったところでちょうど階段を上ってきた人がおったんや。俺は勢いがついているから止まれるわけがあらへん。女子の悲鳴と共にそいつと一緒に階段から転落してもーた。
転落しながら気づいた。コイツ、うちのクラスの委員長やん。頭はいいけどパッとしない陰キャの……あー名前なんやったかな。隣の席やねんけど。
そう思っているうちに俺はどこかに頭を思いっきりぶつけて、そのまま意識がどっかへ行ってしまった。
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